婚約破棄したのはそっちよね? 今更泣いて縋っても無駄よ! あとお兄様がクソ。

「エリアナが婚約!? 馬鹿な……取り返さなくては!!」
「え?」
「こうしちゃいられない。ルシア、君との婚約は破棄させてもらう!!」
「ええ?」
「エリアナ~! 目を覚ますんだぁ~っ!! 愛してるぅ~ッ!!」

こうして私ウィッカム伯爵令嬢ルシア・フラトンは婚約破棄された。
マーニー伯爵令息ブランドン・コーンウェルは幼馴染を愛していたのだ。

ブランドンの幼馴染ソマーズ伯爵令嬢エリアナ・パターソン。
そのエリアナに求婚したクレヴァリー伯爵レナード・マッコーコデール。
手を取りあって見つめあうふたりに突っ込んでいく、ブランドン。

「みっともない。お前に魅力がないせいで恥をかいたぞ!!」

兄エドウィンは私を責めた。兄の婚約者イヴェットは私を嗤った。

「大惨事だ。エドウィン、イヴェット。ルシアを頼む」

父は大慌てで事態の収束に務めた。
なんといっても私たちはロイエンタール侯爵家の昼食会に招かれている身。
スキャンダルを起こすなんて言語道断……なのに。

「あなたのせいよ、ルシア」

イヴェットの目が悍ましく煌めく。
私は罰として、衣装室に閉じ込められてしまった。

「大丈夫かい? 恐くないから、出ておいで」

助けてくれたのは、ロイエンタール侯爵令息ドミニク・ハイムその人だった。
でも、私は彼の優しさを信じられなくて……

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『「華がない」と婚約破棄された私が、王家主催の舞踏会で人気です。』のドミニク卿の物語です。
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