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3・あれから

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あれから、数ヶ月たった。
初めは何も分からなかった。
ゼンに付きまとうような感じで色々教えてもらっていた。
「おめぇ本気で何も知らないんっすねー」
毎回呆れ顔だったが根気強く教えてくれた。
ただ後ろを毎回付きまとっていたら周りの人達に笑われてたけど・・。

「「「「ぶわぁははっははー」」」」
食堂に行くと大笑いしてる人々がいたり、他の所に行くと
「カルガモ親子みたいだなぁ!」ってからかわれたり。
ゼンと仲がいい感じの人は空気が読めないらしく。
「お前、毎回何かに巻き込まれてるよなぁ」
くくっ。
「世話係というか完璧に親子みたいだよな!お頭も何でこんな餓鬼をここに置いたのか。お頭は意外に野生な所があるからなぁ・・・。野生の勘が働いたのか?ただの気まぐれ?野生の勘ならすげぇーよな!お前をその餓鬼の子守につかすくらいなんだからよ」
途中から空気がひんやりと冷たくなってきたのは気付かず、笑いながら話していたが。
後ろにいる髪の長い人が急にその人の首根っこを掴み
「何の話をしていたんでしょう?私にも聞かせてくれませんか?」
と言い。どこかに引きずって行ったりとあった。

それでも何とか出来る事を言われた通りに毎日していた。
といっても洗濯や掃除が主だったが、その広さと人数の多さで一日では終わらなかった。
「おう、餓鬼また来たのか。ほらよ今日の仕事だ。」
山積みにされた洗濯物を受け取り黙々と洗う。
「お前いい加減何か話せよ。ここに来出してほとんど喋ったことねぇじゃねぇか。」
隣で洗ってるおじさんが声をかけてくれた。
「黙々とするのもいいが楽しく行こうぜ。洗濯仲間なんだからよ」
変な人そう思いつつ。
「何、喋ってもいいの?」
「は?何言ってんだ、当たり前だろ?それとも喋ったらダメだと思ってたのか?」
意外な答えが返ってきたと思ったのか、洗濯する作業を止めて驚いた顔でこっちを見ていた。
「まぁいい。お前何歳なんだ?見た所そんなに歳は行ってないと思うんだが・・。」
「分かんない。歳って何?」
私がそう聞き直したら今度は呆けた顔でこっちを見ていた。
「お前自分が何歳か知らないのか・・・?」
黙々と洗濯しながら頷いた。
「・・まじかよ・・・。」
信じられない感じで見ていたけど、気を取り直したのか仕事に戻った。
(こりゃー一度お頭と話さねぇといけねーかなぁ)


別の日、掃除の時には。
「おい、おめー。ここに来る前何処にいたんだ?親とかいなかったのか?」
「何処って。暗い所。親って知らない」
「・・・・・・は?」
何言ってんだこいつ...みたいな顔をされた。
窓ふきをしていた時に聞かれたから答えたんだけど・・。
またずれた返答したのかな?
首を傾げながら掃除をしていたが。
「今までご飯とかくれてた人はいたのか?」
「うん」
「その人が、親じゃねーのか?」
「分かんない、知らない人がくれた」
・・・。
(おいおい。何かこいつ深刻な感じじゃねーか?俺も色々あったが、ここまでとは無かったぞ)
「そうか・・・。まあいい、ここの掃除終わらせようぜ!」
そう言われ、頷き黙々とこなしていった。



「お頭、あの餓鬼っていったいどこから来たんですか?自分の年齢も知らなんですよ。」
「お頭、俺も少し聞いたら親も知らないって言ってた。」
何かあれば定期的に報告しろと部下に行っていたんだが、思いも寄らない返答が返って来たらしく。
めったに動揺するはずのない奴等が珍しく動揺していた。
「ここにいる奴等は何かと事情がある奴ばっかです。だけど10歳前後に見えるあいつが歳も分からず、親も分からずなんてどんな生活して来たんでしょうね?」
お頭は何も言わず。黙って聞いていたが。
「何処で何をしていたかも聞いてないか?」
「暗い所にいたと言ってましたよ?」
後ろに控えていたリンゼルもその事を聞き少し深刻な顔をしていた。
「お頭・・・。あいつ喋ったらダメだとも思てたみたいです。喋ったら何かあったって事っすかね?」
「分からん、今は色々慣れさせる事を重点的にしておけ。今後どうするかは決めてないが護身は身に付けさせた方がいいかも知れないな。報告ご苦労、下がっていいぞ」
「「はい!!」」
部下を下がらせたお頭は何かを考えるように目をつむった。
「お頭、やはりここに置いて置くのは無理があります。やはり何処かへ・・・。」
「リンゼル。それは無理だ。俺たちも近々仕事がある。部下もあいつに内緒で用意を始めている頃だ。そんな中ここから放り出してみろ、親みたいになったやつが心配で仕事にならなくなる。あいつがいなくなれば戦力も落ちる。流石に俺もここまでは予測は出来なかったがな・・・。」
そういいつつも自分も気になって遠くから様子を見ているのをリンゼルも知っている。
「この仕事が終われば、一旦船に戻るぞ。」
納得は行ってないが、お頭の命令は絶対。
「分かりました、ただ仕事の時はあの子をどうするか決めておいて下さい。連れて行くわけには行きませんから」
「ああ。」
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