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2・これから

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「んんっ・・・。」
重たい瞼を開き見えたのは、先ほどいた薄暗い所ではなかった。
それに、今まで体験した事の無い柔らかい物・・。
不思議に思い柔らかい物を弄ろうとして体を動かしたら思い出したように走る激痛。
「痛いっ」
柔らかい物に逆戻りして、のたうち回ってる時に人が入ってきた。
「目が覚めたか、ああ?おめぇ何やってんだ?」
声が聞こえた方に振り向いたら知らない男の人が・・。
「あ・・あなた誰?」
思ってたより、掠れた声が出た。
部屋に入ってきた人も声が掠れてるのを気が付いたのか手に持っていた物を差し出してきた。
「これを、飲め」
それを受け取り、喉を潤す。
思ったより喉が渇いていたのか、勢いよく飲んでしまった。体の痛みなど忘れて。
「ありがとう。ここどこ?」
「ガキだがお礼は言えるんだな。ここは何処かは今は言えねぇ・・。ただおめぇはお頭に担がれて来たから俺が少しの間面倒を見てるって感じだ。それより、おめぇ名前は何ていうんだ?俺はゼンて言うんだ」
近くにあった椅子に座りながらそう聞いてきた。
「・・・・ロゼ・・」
名前何て聞かれたのは初めてだった。何時もいた女の人はたまに呼んでくれていたが、他の人には全く聞かれる事も無かった。
変な人。
「ふーん。起きたんならお頭の所に行くぞ。お頭が連れて来たんだからな、これからどうなるかはお頭の判断だ。ここにいても最終は碌な事ねぇからなぁ」
そう言いつつ立ち上がって出て行こうとする。
「この部屋から出ていいの?」
「はぁ?何言ってんだ?」
怪訝そうに振り返り、私に近づき担ぎ上げた。
「ひゃぁっ!」
「行くぞ」



入り組んだ知らない場所を通って、ドアの前にやって来た。
「お頭、いますか?ガキ連れて来ました」
「・・・ああ。入れ」
ギィー。古臭い音が鳴った。
担がれたままだったので、体を捻らせてお頭と呼ばれた人を見てみると。
ゼンより少し年上の男の人が椅子に座っていた。
ゼンには担がれていたのを床に降ろされた。
その後ろには髪の長い男の人が怒っているような顔でこちらを見ていた。
無意識に私はゼンの服を握りしめた。
その事に気付いてるのか、気が付いてないのか私を下した。
「お頭、この子どうするんっすか?」
「どうするもこうするも、ここから出て行ってもらいますよ!ここは孤児院じゃ無いんですから!?」
「・・・・・」
後ろにる髪の長い人がそう言いだしたが、お頭という人は無言でこちらを見つめていた。
「お前何故あんな所に倒れていた?」
「????」
分けが分からなく、つい首を傾げてしまった。
「ここに来る前に路地裏にいただろう。」
「ろじうら?」
何の事かが分からない。
不思議な顔をしていたのだろう。
髪の長い人が怪訝そうに
「あなたが倒れていた場所ですよ」
思いだすのは、空腹と痛みで倒れていただけ。
そこの場所が路地裏ということ?
「お頭、こいつ路地裏って言う意味すら分からないんじゃないんっすか?」
「そんな事無いはずです。たとえ小さい子でも知っていることですよ?それがこんな子が、分からないなんてありえません!」
「でもよー。こいつ・・部屋から出ていいのか聞くぐらいっすよ。もしかしたら・・・・って思ったんっすが」
「・・・・・」
何か話をしているけど・・。お頭って呼ばれた人が気になってゼンの後ろからじっと見てしまう。
何処かで見たような・・・。思い出せない。
「うるさい。」
お頭と呼ばれた人が一言声を出すと2人は直ぐに黙った。
「お前ここにいろ。」
「「!!」」
ゼンと髪の長い人が驚いていた。
「お頭、それはいけません!こんな子供がここにいるなんて、流石に無理です。足手まといになります!」
足手まとい?そう聞こえた。
「こんな子供はそこら中、五万といます。いちいち保護していたら・・・・」
グチグチ。
何か一方的に髪の長い人がお頭に言い始めた。
お頭は目を閉じて聞いてるのか、聞いてないか分からない状態だった。
「ここに置いて置く」
「なりません!」
「うるさい」
「だいたいこんな子供に何が出来るんですか!ここにいること自体邪魔ですよ!」
「これは、決定だ。口を挟むな。面倒はゼンお前に任せる。」
「「・・・・・」」
????
自分の事なのに何の事か分からない。
成り行きを見守っていた。
「おめぇ、ここにいていいんだとよ」
「いてもいいが色んな事をやってもらうぞ。何もしなかったら食べれないと思っておけ」
「色んな事?」
ここに来て初めて声を出した。
「ああ。色々周りに従ってもらう。お前名前は?」
従う。従うって?
色んな事が起きている。
「ロゼ」
「ロゼか。ゼン後は頼んだ。先にその打撲を治せ、それからだ」
ゼンは頷き、また私を担いで部屋から出て行った。



「どういうことですか?あんな子供をここに置くなんて」
お頭は無言で子供が出て行った扉を見ていた。
「お頭!?」
髪の長い人が叫んだと思ったら。
「気が付かなかったか?」
「は?」
「あいつの目。生きている感じがしなかった。」
「・・・・」
「人形の様な、死人の様な、昔の俺に似ていた。」
「それは・・同情ですか?」
今まで一緒に行動して来たからなのか。少し悲しそうに聞いてきた。
「リンゼル。同情ではない、恐らくは。だがあの目を見たとたん、どうにかしてやりたいと思ったのもある」
「分かりました。ですが足手まといになったら、即刻ここから追い出します。私たちがしている事は遊びでは無いんですから」
「分かってる。」
はぁ・・。
リンゼルと呼ばれた者がため息をつき、今までゼンと一緒にいた子供を思い出した。

お頭と似ている子供ですか・・・。
厄介な事にならなければ良いのですが・・・・。
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