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三章 外国にて
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サラさんは俺の髪に櫛を通してから、あれこれと髪を弄り始めた。
前髪を全部上げてオールバックにしてみたり、横の髪を編み込みにしてみたり。忙しなく手を動かしていたが、最終的には前髪を一部分だけかき上げるに落ち着いた。
「……これでいかがですか?」
「うん、とってもいいです!ありがとう、サラさん。」
サラさんに鏡越しに目を合わせてお礼を言う。すごい速度で手を動かしていたのにすごく綺麗に髪の毛が整えられている。
「サラさんって手先が器用なんですね。俺自分で髪の毛をセットしようとするとグシャグシャになっちゃうんですよ。」
「ふふ、ご入用のときは私に申し付けください。いつでもお手伝いいたしますよ。」
「じゃあ、明日も頼んでいいですか?」
「ええ、もちろんです。」
ふふっと微笑むサラさん。嫌がられてないみたいでよかったな……。また明日も頼もうかな。
椅子から立ってサラさんの前でクルリと一周回る。
「サラさん変じゃないですか……?」
サラさんを見ると、どこか呆けた顔をしていた。
「……サラさん?」
「はっ……すみません。とっても素敵です!」
サラさんは慌てた様子で俺をほめてくれたけど、なんだかな~
「本当です?」
目を細めてもう一度聞くと、サラさんはさらに慌てた様子で口を開いた。
「本当です……!信じてください!」
必死な顔をしているサラさんになんだか申し訳なくなってくる。
「嘘ですよ、べつに怒ってないですから。」
腰を折ってサラさんと目を合わせてから謝る。
「ごめんなさい、ちょっとからかっちゃいました。……許してくれますか?」
「もちろんです!本当に、素敵ですから心配しないでください!ファンゼルダ国王陛下もイチコロですよ!」
「はあ?!」
何言ってるんだサラさんは!ラインハルトとの関係が知られてるのはわかってたけど、面と向かって言われるとなんかもうそのあれだ、むず痒くなる!!
顔を赤くしてワタワタしていると、サラさんがまるで微笑ましいとでもいうような顔でこちらを見ていた。
「……何ですか、サラさん。」
熱い頬をおさえながら、少しムッとして口を開く。
「いえ、かわいらしいなと思って……。」
「か、かわいらしい!?」
「ええ、まさに恋する乙女って感じです。」
乙女ってまさかこんな小柄な女性にまで言われるなんて、なんか恥ずかしい……。
手袋を嵌めて、ふと時計に目をやると、パーティー会場に向かわなければいけない時間になっていた。
「じゃあ、サラさんいってきます。」
「はい、いってらっしゃいませ。……あの、ハロイド様、会場の場所はわかりますでしょうか?」
あ、忘れてた……。さっきちゃんと案内はされたはずだけれど、俺何回か歩かないと建物の構造とか覚えられないんだよなぁ。
「……サラさん、案内お願いしていいですか?」
「はい。こちらもそのつもりでお声がけしたので。」
そのつもりって……俺、そんなに方向音痴に見えるかなぁ……。
落ち込んでいると、サラさんが慌てた様子で口を開いた。
「あの、そ、そうではなくて!この館は構造が複雑なので、道に迷われる方も多いんです。」
「そうなんですね……。よかった、俺方向音痴だと思われてるのかと思っちゃいました。」
頬を掻きながら言うと、サラさんはホッと息を吐きだしていた。
「じゃあ、案内お願いします。」
「はい、かしこまりました。」
もう一度サラさんに目をやると、既に道具を片付け終わり綺麗な姿勢で立っていた。
行動がテキパキしてて流石メイドさんって感じだ。仕事ができる人っていいよな……。俺もサラさん並みに気が配れて仕事ができる人になりたいな……仕事の分野は違うけれど。
ドアを開けて出ると、ラインハルトがいた。……え?
「……ユーファ!」
ラインハルトは壁に寄りかかってボーっとしていたが、俺が出てきたことに気づいたのかパッと顔を明るくして俺の名前を呼んだ。……可愛いな。
ラインハルトの服に目をやると、ものすごく豪奢なジャケットを着ていた。……なのに顔が全然負けてない!
こんなにたくさんの宝石や勲章が付いてるジャケットなんて着たら、普通の人はジャケットに負けて存在感がなくなってしまうのに……。さすがラインハルトだな!
「そういえば、ラインハルトはなんでいるんだ?」
ラインハルトは王族だからまだ会場に向かうには早いはずだけれど……。
「なんでってひどくないか……?」
「あ、ああ……ごめん。そういうつもりじゃなかったんだけど」
「わかってる、謝らなくてもいい。」
シュンとしていると、ラインハルトが微笑みながら頬を軽く触って耳をつまんできた。
「んぅ……。で、何か用事でもあった?」
ラインハルトの指が小さく動いてくすぐってきた。少し声が漏れてしまったのが恥ずかしかったけれど、ラインハルトの手を剥がして何事もなかったかのように質問をした。
「用事……ただユーファをエスコートしようと思っただけだが。」
俺をエスコートをすることがさも当然だという顔で口にするラインハルト。でも、婚約者でもないやつを正式な、しかも他国のパーティでエスコートするなんて流石にダメだろ……。
「ダメだ。」
「……なんで。」
俺の言葉を聞いて、ラインハルトはムッと頬を膨らませた。可愛い……けどダメなものはダメだ。
「だって俺婚約者じゃないだろ。妻でもないし。」
「……恋人じゃないか。」
「恋人でもダメだって!ラインハルトは王様なんだから、そういうところはもうちょっと慎重になれよ……。」
むくれるラインハルトを知らんぷりしていると、後ろから声がした。
「……では、会場に入る直前まで一緒に行かれるのはいかがですか?」
驚いてばっと振り向くと、サラさんがドアの隙間から顔を覗かせていた。
「……だれだ。」
すごく低い声でラインハルトが言葉を発した。……めっちゃ怒ってるな。
前髪を全部上げてオールバックにしてみたり、横の髪を編み込みにしてみたり。忙しなく手を動かしていたが、最終的には前髪を一部分だけかき上げるに落ち着いた。
「……これでいかがですか?」
「うん、とってもいいです!ありがとう、サラさん。」
サラさんに鏡越しに目を合わせてお礼を言う。すごい速度で手を動かしていたのにすごく綺麗に髪の毛が整えられている。
「サラさんって手先が器用なんですね。俺自分で髪の毛をセットしようとするとグシャグシャになっちゃうんですよ。」
「ふふ、ご入用のときは私に申し付けください。いつでもお手伝いいたしますよ。」
「じゃあ、明日も頼んでいいですか?」
「ええ、もちろんです。」
ふふっと微笑むサラさん。嫌がられてないみたいでよかったな……。また明日も頼もうかな。
椅子から立ってサラさんの前でクルリと一周回る。
「サラさん変じゃないですか……?」
サラさんを見ると、どこか呆けた顔をしていた。
「……サラさん?」
「はっ……すみません。とっても素敵です!」
サラさんは慌てた様子で俺をほめてくれたけど、なんだかな~
「本当です?」
目を細めてもう一度聞くと、サラさんはさらに慌てた様子で口を開いた。
「本当です……!信じてください!」
必死な顔をしているサラさんになんだか申し訳なくなってくる。
「嘘ですよ、べつに怒ってないですから。」
腰を折ってサラさんと目を合わせてから謝る。
「ごめんなさい、ちょっとからかっちゃいました。……許してくれますか?」
「もちろんです!本当に、素敵ですから心配しないでください!ファンゼルダ国王陛下もイチコロですよ!」
「はあ?!」
何言ってるんだサラさんは!ラインハルトとの関係が知られてるのはわかってたけど、面と向かって言われるとなんかもうそのあれだ、むず痒くなる!!
顔を赤くしてワタワタしていると、サラさんがまるで微笑ましいとでもいうような顔でこちらを見ていた。
「……何ですか、サラさん。」
熱い頬をおさえながら、少しムッとして口を開く。
「いえ、かわいらしいなと思って……。」
「か、かわいらしい!?」
「ええ、まさに恋する乙女って感じです。」
乙女ってまさかこんな小柄な女性にまで言われるなんて、なんか恥ずかしい……。
手袋を嵌めて、ふと時計に目をやると、パーティー会場に向かわなければいけない時間になっていた。
「じゃあ、サラさんいってきます。」
「はい、いってらっしゃいませ。……あの、ハロイド様、会場の場所はわかりますでしょうか?」
あ、忘れてた……。さっきちゃんと案内はされたはずだけれど、俺何回か歩かないと建物の構造とか覚えられないんだよなぁ。
「……サラさん、案内お願いしていいですか?」
「はい。こちらもそのつもりでお声がけしたので。」
そのつもりって……俺、そんなに方向音痴に見えるかなぁ……。
落ち込んでいると、サラさんが慌てた様子で口を開いた。
「あの、そ、そうではなくて!この館は構造が複雑なので、道に迷われる方も多いんです。」
「そうなんですね……。よかった、俺方向音痴だと思われてるのかと思っちゃいました。」
頬を掻きながら言うと、サラさんはホッと息を吐きだしていた。
「じゃあ、案内お願いします。」
「はい、かしこまりました。」
もう一度サラさんに目をやると、既に道具を片付け終わり綺麗な姿勢で立っていた。
行動がテキパキしてて流石メイドさんって感じだ。仕事ができる人っていいよな……。俺もサラさん並みに気が配れて仕事ができる人になりたいな……仕事の分野は違うけれど。
ドアを開けて出ると、ラインハルトがいた。……え?
「……ユーファ!」
ラインハルトは壁に寄りかかってボーっとしていたが、俺が出てきたことに気づいたのかパッと顔を明るくして俺の名前を呼んだ。……可愛いな。
ラインハルトの服に目をやると、ものすごく豪奢なジャケットを着ていた。……なのに顔が全然負けてない!
こんなにたくさんの宝石や勲章が付いてるジャケットなんて着たら、普通の人はジャケットに負けて存在感がなくなってしまうのに……。さすがラインハルトだな!
「そういえば、ラインハルトはなんでいるんだ?」
ラインハルトは王族だからまだ会場に向かうには早いはずだけれど……。
「なんでってひどくないか……?」
「あ、ああ……ごめん。そういうつもりじゃなかったんだけど」
「わかってる、謝らなくてもいい。」
シュンとしていると、ラインハルトが微笑みながら頬を軽く触って耳をつまんできた。
「んぅ……。で、何か用事でもあった?」
ラインハルトの指が小さく動いてくすぐってきた。少し声が漏れてしまったのが恥ずかしかったけれど、ラインハルトの手を剥がして何事もなかったかのように質問をした。
「用事……ただユーファをエスコートしようと思っただけだが。」
俺をエスコートをすることがさも当然だという顔で口にするラインハルト。でも、婚約者でもないやつを正式な、しかも他国のパーティでエスコートするなんて流石にダメだろ……。
「ダメだ。」
「……なんで。」
俺の言葉を聞いて、ラインハルトはムッと頬を膨らませた。可愛い……けどダメなものはダメだ。
「だって俺婚約者じゃないだろ。妻でもないし。」
「……恋人じゃないか。」
「恋人でもダメだって!ラインハルトは王様なんだから、そういうところはもうちょっと慎重になれよ……。」
むくれるラインハルトを知らんぷりしていると、後ろから声がした。
「……では、会場に入る直前まで一緒に行かれるのはいかがですか?」
驚いてばっと振り向くと、サラさんがドアの隙間から顔を覗かせていた。
「……だれだ。」
すごく低い声でラインハルトが言葉を発した。……めっちゃ怒ってるな。
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