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三章 外国にて
到着したんだけど……降りれない
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何日か船に揺られていると、インドールの港が見えてきた。
「おお……!」
賑やかな国だと聞いていたが、まさかここまでとは……。王族が訪れるからか、ガーランドがいくつも飾られ、さらには横断幕を持った町人が歓迎に出迎えてくれている。
多くの建物が砂岩で出来ており、町の色が統一されているため、なおさら飾りが映える。
民衆の歓迎する声に応えるために、ラインハルトと殿下がデッキに出てきた。そしてそのまま、手すりのそばに立って手を振る。
その瞬間、大きな歓声が上がる。圧倒的に女性の声が多い……。確かに2人とも顔がいいからな……。でもなんか、俺のラインハルトなのに他の人に色目を使われるのは嫌だ。
それでも、仕事だし仕方がないから俺がとやかく言えることじゃない。
少し離れたところでしゃがんでいじけていると、ラインハルトと目が合った。
まだこちらを見ないと思っていたのに、いきなり振り向くものだから思わず体をビクッと震わせてしまう。下からは残念そうな声が聞こえてくる。
「ラインハルト、みんな待ってるぞ?早く前向けよ。」
変な顔を見られてしまったことに恥ずかしさを感じながら、足の間に顔を埋めて口を開く。
すると、ラインハルトはこっちに完全に体を向けて近寄ってくる。
「え……何してるんだよ、早く戻れって。」
思わず立ち上がってラインハルトを手すりのほうへ押す。……押しているのだけれど、全く動かない。それどころか、殿下がいる反対側の手すりに追いやられている。
「なぁ、ユーファ。みんなの前で恋人だって言ってもいいか?」
「は?何言ってr……んっぅ」
何を言っているのか、そんなことしていいわけないだろ?反論しようとしたところで、ラインハルトに口を塞がれる。
突然のことに驚いて、ラインハルトの胸を押して退いてもらおうとするけれど、全く動かない。身長はラインハルトの方がちょっと高いけれど、そこまで変わらないはずだろ?なんで動かないんだ。
俺が意味のない抵抗をしている間にも、ラインハルトは俺の唇を貪ってくる。ふと唇をなぞるように舐められて小さく声が漏れる。
「ふぁっ……。」
その間にラインハルトの熱い舌が入り込んでくる。そのまま歯の間を割って入ってきてスリスリと上顎を擦られる。なんか、変な感じがする……!
「んんぅ……ん!」
流石に息が苦しくなってきて、バシバシとラインハルトの胸を叩く。そこでやっとラインハルトは口を離してくれた。唾液が糸を引いているのが俺たちのさっきの行為を思い出されてきて恥ずかしくなった。
慌てて袖で拭き取ると、キッとラインハルトをにらむ。
「いきなり何するんだよ!」
「だってユーファが可愛かったから……。」
何言ってるんだ、怒ってただけだろ?可愛い要素が見当たらない。頭を捻っていると、ラインハルトがしょぼんとした顔で口を開いた。
「さっきユーファ拗ねていただろう?俺が民衆のほうを向いていたから、嫉妬してくれたのかと思ったのだが……違ったか?」
図星だ……。なんでラインハルトは顔見ただけで俺の気持ちまでわかるんだ。
「そ、うだけど!なんでみんなに言う必要があるんだ?」
「周知していたら、堂々と一緒に居られると思って……。」
嫌か?と覗き込むように聞かれる。嫌、ではないけれど公表なんてしてしまっていいのだろうか。俺たちは結婚なんてできないのに。
「やめておこう?恥ずかしいから。」
こんな時にあまりネガティブな発言をするのも嫌だし、適当に理由をつけて断る。
「……ユーファが言うなら。」
ラインハルトの気落ちした顔を見て、申し訳なくなるけれどそのまま元の場所に戻るように促す。
俺の変な態度に気が付いたのか、俺の顔色をうかがいながらもラインハルトは戻っていった。
自室に戻ってベットに倒れ込む。民衆が立ち去るまでは船から降りられないから、しばらく暇だ。暇だけど……何かをする気分にもならない。
「嫌なこと考えちゃったな……。」
ラインハルトは王族だから結婚できないって初めからわかってて、それでいいと思ってたはずだけど。今は、別れる事とか考えたくもない。
きっと将来、ラインハルトの横に立っているのは俺じゃないから……。ちゃんとした正妃を迎えて、子供ができて……すごい理想的な家庭を築いてるんだろう。
でも俺は、ラインハルトに別れを告げられたとき、ちゃんと別れられるんだろうか。
未練がましく縋ってしまわないだろうか。
ラインハルトはあんなにも俺のことを好きでいてくれているというのに、それを素直に信じれない俺が嫌だ。
きっと今のままだったら別れることなんてないだろうけど、俺なんかよりよほど魅力的な女性に出会ってしまったら、ラインハルトはそっちのほうと結婚したいと思ってしまうだろう。
だって俺は男だ。身長も高いし、体格も結構いい。女性と比べてしまったら、俺には勝ちようがない。
ラインハルト……俺のことなんて好きにならないでいてくれたら、こんなに悩むことも無かったのに。
「おお……!」
賑やかな国だと聞いていたが、まさかここまでとは……。王族が訪れるからか、ガーランドがいくつも飾られ、さらには横断幕を持った町人が歓迎に出迎えてくれている。
多くの建物が砂岩で出来ており、町の色が統一されているため、なおさら飾りが映える。
民衆の歓迎する声に応えるために、ラインハルトと殿下がデッキに出てきた。そしてそのまま、手すりのそばに立って手を振る。
その瞬間、大きな歓声が上がる。圧倒的に女性の声が多い……。確かに2人とも顔がいいからな……。でもなんか、俺のラインハルトなのに他の人に色目を使われるのは嫌だ。
それでも、仕事だし仕方がないから俺がとやかく言えることじゃない。
少し離れたところでしゃがんでいじけていると、ラインハルトと目が合った。
まだこちらを見ないと思っていたのに、いきなり振り向くものだから思わず体をビクッと震わせてしまう。下からは残念そうな声が聞こえてくる。
「ラインハルト、みんな待ってるぞ?早く前向けよ。」
変な顔を見られてしまったことに恥ずかしさを感じながら、足の間に顔を埋めて口を開く。
すると、ラインハルトはこっちに完全に体を向けて近寄ってくる。
「え……何してるんだよ、早く戻れって。」
思わず立ち上がってラインハルトを手すりのほうへ押す。……押しているのだけれど、全く動かない。それどころか、殿下がいる反対側の手すりに追いやられている。
「なぁ、ユーファ。みんなの前で恋人だって言ってもいいか?」
「は?何言ってr……んっぅ」
何を言っているのか、そんなことしていいわけないだろ?反論しようとしたところで、ラインハルトに口を塞がれる。
突然のことに驚いて、ラインハルトの胸を押して退いてもらおうとするけれど、全く動かない。身長はラインハルトの方がちょっと高いけれど、そこまで変わらないはずだろ?なんで動かないんだ。
俺が意味のない抵抗をしている間にも、ラインハルトは俺の唇を貪ってくる。ふと唇をなぞるように舐められて小さく声が漏れる。
「ふぁっ……。」
その間にラインハルトの熱い舌が入り込んでくる。そのまま歯の間を割って入ってきてスリスリと上顎を擦られる。なんか、変な感じがする……!
「んんぅ……ん!」
流石に息が苦しくなってきて、バシバシとラインハルトの胸を叩く。そこでやっとラインハルトは口を離してくれた。唾液が糸を引いているのが俺たちのさっきの行為を思い出されてきて恥ずかしくなった。
慌てて袖で拭き取ると、キッとラインハルトをにらむ。
「いきなり何するんだよ!」
「だってユーファが可愛かったから……。」
何言ってるんだ、怒ってただけだろ?可愛い要素が見当たらない。頭を捻っていると、ラインハルトがしょぼんとした顔で口を開いた。
「さっきユーファ拗ねていただろう?俺が民衆のほうを向いていたから、嫉妬してくれたのかと思ったのだが……違ったか?」
図星だ……。なんでラインハルトは顔見ただけで俺の気持ちまでわかるんだ。
「そ、うだけど!なんでみんなに言う必要があるんだ?」
「周知していたら、堂々と一緒に居られると思って……。」
嫌か?と覗き込むように聞かれる。嫌、ではないけれど公表なんてしてしまっていいのだろうか。俺たちは結婚なんてできないのに。
「やめておこう?恥ずかしいから。」
こんな時にあまりネガティブな発言をするのも嫌だし、適当に理由をつけて断る。
「……ユーファが言うなら。」
ラインハルトの気落ちした顔を見て、申し訳なくなるけれどそのまま元の場所に戻るように促す。
俺の変な態度に気が付いたのか、俺の顔色をうかがいながらもラインハルトは戻っていった。
自室に戻ってベットに倒れ込む。民衆が立ち去るまでは船から降りられないから、しばらく暇だ。暇だけど……何かをする気分にもならない。
「嫌なこと考えちゃったな……。」
ラインハルトは王族だから結婚できないって初めからわかってて、それでいいと思ってたはずだけど。今は、別れる事とか考えたくもない。
きっと将来、ラインハルトの横に立っているのは俺じゃないから……。ちゃんとした正妃を迎えて、子供ができて……すごい理想的な家庭を築いてるんだろう。
でも俺は、ラインハルトに別れを告げられたとき、ちゃんと別れられるんだろうか。
未練がましく縋ってしまわないだろうか。
ラインハルトはあんなにも俺のことを好きでいてくれているというのに、それを素直に信じれない俺が嫌だ。
きっと今のままだったら別れることなんてないだろうけど、俺なんかよりよほど魅力的な女性に出会ってしまったら、ラインハルトはそっちのほうと結婚したいと思ってしまうだろう。
だって俺は男だ。身長も高いし、体格も結構いい。女性と比べてしまったら、俺には勝ちようがない。
ラインハルト……俺のことなんて好きにならないでいてくれたら、こんなに悩むことも無かったのに。
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