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二章 王弟殿下の襲来
王弟殿下
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領地で少し楽になった兄上の手伝いをしながら、俺は有意義に過ごしていた。
一週間ほどして、王都に着いてから荷物の片づけもあるからと、早めに出発することになった。
流石にたくさんの荷物もある中護衛をつけずに行くのは危険だということで、数人の護衛と共に家を出た。本当は帰ってくるときも、護衛をつけなければいけなかったのだが、無理を言って一人で帰らせてもらったのだ。
今回ついてくる護衛は我が家に昔からいる信用できるものばかりなので、安心して過ごせる。侯爵家に生まれであるから、身代金や荷物の強奪など、否が応でも狙われてしまう。
馬車に乗り込むと、周りを数頭の馬とそれに乗った護衛に囲まれて出発した。
前回のように試験勉強する必要もないので、寝転びながらボーッとする。最初は気分よく窓の外を眺めていたもののすぐに退屈になってしまった。
家に帰って衝撃的なことを伝えられて、好感度はダダ下がりだが、どう思ってるか真面目に考えると言ってしまった手前、何も考えてませんはダメだろう。
領地に帰るまでは、まあまあいい雰囲気だったはずだけど。……過去のことは一旦忘れて、思い返してみるか。
門の前で会ったことから順に思い出してみる。月が綺麗な夜に陛下と出会って……すごいキラキラしてたな。そのあと王城の庭園でお茶して。無理やりだったけどな。
なんか陛下の顔がいいせいか妙に鮮明に覚えている。無駄に陛下の顔ばかり頭に浮かぶし、まるで恋する乙女だな……。
昔ご令嬢に借りた恋愛小説の主人公も同じようなことを言っていた気がする。身分違いの恋、みたいな話だったな……。その令嬢が言うには王道もの、らしい。
どう考えても普通ではないけどな。平民上がりと王族が結婚するなんてありえない。血筋とかじゃなくて、礼儀作法とか貴族は幼いころから教え込まれている。それと同じように元平民がふるまえるかというところが問題なのだ。
しかも、王族と結婚するとなれば国民を従えることのできる女性でなければならない。大きな後ろ盾がない状態で人脈づくりから、というのは不可能に等しい。
とりあえず、性別のことは置いておいて身分だけで言えば、俺と陛下は身分違いというほどではない。でも結婚するとなったら……夜伽というか子作りというかアレが待っているわけで。
陛下と子作り……って何考えてるんだ俺!
男同士でそんなことできるわけないだろ!それに俺は今陛下に怒ってるし、陛下のことなんて別に好きじゃないし……。
ガバッと体を起こして首を振る。早くこの考えをどこかにやってしまいたいけれど、一度浮かんでしまったことはなかなかどこかに行ってくれない。
頬を触ると、少し熱くなっていた。…陛下のことをどう思ってるか、考えるまでが長い気がする。
移動の4日間、少し想像しては悶えてを繰り返した。
邸について、自室のドアを開けるとデジャヴを感じた。テーブルの上に、花とメッセージカードが置かれていたから。まあ、花の種類は違ったけれど……。
今回は、ブーゲンビリアの鉢植えだ。花言葉を思い出して、思わず顔を覆った。また陛下は……。
ブーゲンビリアの花言葉は、「あなたは魅力に満ちている」「あなたしか見えない」だ。本当に、恥ずかしい。別に嬉しくなくもないけど……。
俺の部屋に置かれてるってことはもうセバスチャンが見てるってことで、しかもセバスチャンが俺に花言葉を教えていたのだからブーゲンビリアの花言葉を知らないはずがない。
陛下に惚れられてたなんて言ってないけど!またあの女性が持ってきていたのかもしれないけれど!生暖かい目で見られてしまうことは確かだ。
メッセージカードを手に取ると、『就職おめでとう』と書いてあった。お祝いに贈る花じゃないだろコレ!
花の淵をスーッとなぞる。ブーゲンビリアは扱いは難しいけれど、香りはなく強い匂いが苦手な俺でも楽しめそうだ。……もしかして、俺があんまり得意じゃないことまで知っていたのか?
陛下だし、有り得ないことではない。けど、まあ……嬉しい、かな。
気遣いをしてくれるのは普通に嬉しい。ストーカーみたいなことされてたのにそんなことを思ってしまう俺は陛下に毒されてしまったかもしれない。
王都についてしばらくは、王都の観光をしたり領地から持ってきた仕事をしたりしていた。何度か観光したことはあるけれど、王都の流行の移り変わりは早い。ショーウィンドウに並ぶ服や雑貨、飲食店の入れ替わりは驚くほどに忙しない。
だから、毎日来ても飽きないのだ。学園は王都の近くにあったから、休日はよく友人やその時の恋人とよく遊びに来ていた。
……なんだか遠くに人だかりが。集まっているのは女性ばかりなので後ろからでも中心に立っている人が見えた。
赤い髪に緑の目。陛下に似た顔。どう考えても最近聞いたあの人しか思いつかない。
「本当に王弟殿下は綺麗ね!玉の輿に乗れないかしら…。」
近くにいた女性の言葉で確信した。やっぱり王弟殿下だ。もう少しで帰ってくると聞いていたけれど、もう帰国していたとは。それにもう城下に?
随分とフットワークの軽い方なんだな。
「みんな今日もかわいいね。また順番にお茶でもしに行こうか。」
殿下が声をかけると、キャアー‼︎と周りが沸き立つ。
陛下とは違うタイプで随分と個性的な人かもしれない。
一週間ほどして、王都に着いてから荷物の片づけもあるからと、早めに出発することになった。
流石にたくさんの荷物もある中護衛をつけずに行くのは危険だということで、数人の護衛と共に家を出た。本当は帰ってくるときも、護衛をつけなければいけなかったのだが、無理を言って一人で帰らせてもらったのだ。
今回ついてくる護衛は我が家に昔からいる信用できるものばかりなので、安心して過ごせる。侯爵家に生まれであるから、身代金や荷物の強奪など、否が応でも狙われてしまう。
馬車に乗り込むと、周りを数頭の馬とそれに乗った護衛に囲まれて出発した。
前回のように試験勉強する必要もないので、寝転びながらボーッとする。最初は気分よく窓の外を眺めていたもののすぐに退屈になってしまった。
家に帰って衝撃的なことを伝えられて、好感度はダダ下がりだが、どう思ってるか真面目に考えると言ってしまった手前、何も考えてませんはダメだろう。
領地に帰るまでは、まあまあいい雰囲気だったはずだけど。……過去のことは一旦忘れて、思い返してみるか。
門の前で会ったことから順に思い出してみる。月が綺麗な夜に陛下と出会って……すごいキラキラしてたな。そのあと王城の庭園でお茶して。無理やりだったけどな。
なんか陛下の顔がいいせいか妙に鮮明に覚えている。無駄に陛下の顔ばかり頭に浮かぶし、まるで恋する乙女だな……。
昔ご令嬢に借りた恋愛小説の主人公も同じようなことを言っていた気がする。身分違いの恋、みたいな話だったな……。その令嬢が言うには王道もの、らしい。
どう考えても普通ではないけどな。平民上がりと王族が結婚するなんてありえない。血筋とかじゃなくて、礼儀作法とか貴族は幼いころから教え込まれている。それと同じように元平民がふるまえるかというところが問題なのだ。
しかも、王族と結婚するとなれば国民を従えることのできる女性でなければならない。大きな後ろ盾がない状態で人脈づくりから、というのは不可能に等しい。
とりあえず、性別のことは置いておいて身分だけで言えば、俺と陛下は身分違いというほどではない。でも結婚するとなったら……夜伽というか子作りというかアレが待っているわけで。
陛下と子作り……って何考えてるんだ俺!
男同士でそんなことできるわけないだろ!それに俺は今陛下に怒ってるし、陛下のことなんて別に好きじゃないし……。
ガバッと体を起こして首を振る。早くこの考えをどこかにやってしまいたいけれど、一度浮かんでしまったことはなかなかどこかに行ってくれない。
頬を触ると、少し熱くなっていた。…陛下のことをどう思ってるか、考えるまでが長い気がする。
移動の4日間、少し想像しては悶えてを繰り返した。
邸について、自室のドアを開けるとデジャヴを感じた。テーブルの上に、花とメッセージカードが置かれていたから。まあ、花の種類は違ったけれど……。
今回は、ブーゲンビリアの鉢植えだ。花言葉を思い出して、思わず顔を覆った。また陛下は……。
ブーゲンビリアの花言葉は、「あなたは魅力に満ちている」「あなたしか見えない」だ。本当に、恥ずかしい。別に嬉しくなくもないけど……。
俺の部屋に置かれてるってことはもうセバスチャンが見てるってことで、しかもセバスチャンが俺に花言葉を教えていたのだからブーゲンビリアの花言葉を知らないはずがない。
陛下に惚れられてたなんて言ってないけど!またあの女性が持ってきていたのかもしれないけれど!生暖かい目で見られてしまうことは確かだ。
メッセージカードを手に取ると、『就職おめでとう』と書いてあった。お祝いに贈る花じゃないだろコレ!
花の淵をスーッとなぞる。ブーゲンビリアは扱いは難しいけれど、香りはなく強い匂いが苦手な俺でも楽しめそうだ。……もしかして、俺があんまり得意じゃないことまで知っていたのか?
陛下だし、有り得ないことではない。けど、まあ……嬉しい、かな。
気遣いをしてくれるのは普通に嬉しい。ストーカーみたいなことされてたのにそんなことを思ってしまう俺は陛下に毒されてしまったかもしれない。
王都についてしばらくは、王都の観光をしたり領地から持ってきた仕事をしたりしていた。何度か観光したことはあるけれど、王都の流行の移り変わりは早い。ショーウィンドウに並ぶ服や雑貨、飲食店の入れ替わりは驚くほどに忙しない。
だから、毎日来ても飽きないのだ。学園は王都の近くにあったから、休日はよく友人やその時の恋人とよく遊びに来ていた。
……なんだか遠くに人だかりが。集まっているのは女性ばかりなので後ろからでも中心に立っている人が見えた。
赤い髪に緑の目。陛下に似た顔。どう考えても最近聞いたあの人しか思いつかない。
「本当に王弟殿下は綺麗ね!玉の輿に乗れないかしら…。」
近くにいた女性の言葉で確信した。やっぱり王弟殿下だ。もう少しで帰ってくると聞いていたけれど、もう帰国していたとは。それにもう城下に?
随分とフットワークの軽い方なんだな。
「みんな今日もかわいいね。また順番にお茶でもしに行こうか。」
殿下が声をかけると、キャアー‼︎と周りが沸き立つ。
陛下とは違うタイプで随分と個性的な人かもしれない。
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