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一章 空回りな王様
帰宅
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王城で働き始めるのは一月後だが、今のうちに荷物を家から持って来ておかなければならない。また4日もかけて戻るのは面倒なので帰りは馬に乗って帰ることにした。
宿代や食事代などの小銭と護身用の短剣を鞄に入れ、馬へ飛び乗った。最近は考え事ばかりしていたから、少しでも気分が晴れるといいが…。
貴族街の門を出て、ゆっくり進む。兄上は…すごく心配しているだろうな。王都に来る前からある程度、予想はしていたみたいだし…。
しばらく進むと綺麗なガラス細工を売っている露天商を見かけた。兄上やキリル嬢にお土産として買って行くか。兄上とキリル嬢は揃いのものがいいよな。
馬を降りて露天商に声をかけた。
「そこのガラス細工をもらえないか?」
俺が目をつけたのは、ウサギのガラスの置物何色か並んでいたし、縁結びの象徴だからちょうどいいと思った。縁結びは恋愛だけではなく、友達などの縁も繋いでくれるから2人がいい人たちに囲まれて過ごせたらいい。
青と紫のウサギを選び、馬に乗っても割れないようにしっかり包んでもらう。
…俺も買おうかな。ガラスが太陽の光に反射して綺麗だし、窓際に飾るのもいいだろう。
あともう一つ、と露天商に指差したのは赤色の亀。亀はあらゆる吉兆を呼び寄せてくれるそうだ。
露天商が手厚く包んでくれている途中、ふと陛下の顔が浮かんだ。そういえば、陛下の瞳の色も赤だったな…。
なんだかこれでは、俺が陛下のことが恋しくてたまらないやつみたいじゃないか!
でも、綺麗だし、陛下の目に入るものでもないし。少し恋しいと思ってしまっているのも本当だし。まあ、いいか。
露天商に3つの代金を払うと、頬に手を当ててみる。じんわり熱くなっているのがわかって慌てて踵をかえした。
露天商には俺の顔が赤くなってるの丸見えだったんだろうな…。恥ずかしい。
馬に乗ってさっきよりも少しスピードを上げて走り出した。
王都は出るときには入る時ほど厳しい審査はない。審査は入ったときの記録と見比べるだけで終わり、すぐに通り抜けることができた。
街道へ出るとスピードを出すことができる。だから、人が周りにいないかを確認して、グンっとスピードを上げた。馬車に乗っていた時はゆっくり眺められた光景が、流れるように過ぎていく。
さわやかな草原の香りが、肺を満たす。赤い頬の熱もグルグルと頭を巡る悩みも風が全部持ち去ってくれた。
夢中で走り続けていると、だんだんと空が赤くなって来た。
「次の街で泊まるか…。」
すぐ目の前に見えできた街で今夜は宿をとることにした。
俺は一応侯爵令息だし、寝ている間に誘拐なんてされてはたまらない。俺はこの街で1番セキュリティがしっかりしていると評判の宿に向かった。
馬を降り、歩いていると目的の宿が見えて来た。馬を厩舎に預けてチェックインをする。1番高い部屋を取ったけれど、高級宿というわけではないから、そこまでお金はかからなかった。
部屋に入ってすぐにベットに飛び込む。流石に一日中馬に乗るのはキツい…。休憩もロクにとっていなかったし。明日起きたらすぐにご飯を食べよう。腹が減った…な…。
目が覚めたら既に昼になっていた。
「寝過ぎたな…。」
宿にある食堂で食事を済ませ、すぐに厩舎へと向かう。
「昨日は、たくさん走らせて悪かったな。」
鼻を撫でると、フンッと鼻を鳴らした。
「今日は休み休み行くから許してくれ。」
苦笑しながら手綱を引いて街の外に出る。
忘れ物はないかと、鞄の中をあさって確認をする。今日の昼飯…昼飯というには遅いが、宿の食堂で買ってきたものがある。あと馬の餌も厩舎の人が持たせてくれた。道中に川もあるから水は必要ないし、昨日買ったガラス細工もある。
忘れ物は無いようだ。
もう、半日ほどで領地につくため、それほど急ぐ必要もない。俺は馬に乗ってゆっくりと走り出した。
少しして、俺は昼の暖かい日差しと心地の良い振動で睡魔に襲われていた。落馬なんてことはないだろうが、ちょうど小川も近くにあることだし、一度休憩しよう。
木の陰で馬に人参を差し出す。するとモシャモシャと食べ始めた。正面からものを食べている馬を見るのはちょっと面白い。クスクスと笑うと、プイッと顔を逸らされてしまった。
「怒るなよ、貶してないんだから。」
背中を撫でてやると、馬はまたこちらを向いた。結構単純なやつだな。
ご飯を食べたり、水を飲んだりしっかり休憩してからまた出発した。
しばらく走ると、領地の門が見えて来た。今日帰ると文を出していたから、すぐに領地に入ることができた。
屋敷の入り口に着くと、兄上が出迎えてくれた。
「ユニ!無事だったか?」
「ただいま帰りました、兄上。…無事と言えば無事ですが、無事ではないと言えば無事ではないです。」
「…どういうことだ?」
「兄上、この話は後でします。とりあえずこれを受け取ってください。」
そう言ってキリル嬢と揃いのガラス細工を渡す。流石に外で陛下の話はできないし、話を逸らすのに役立ってくれた。
「…これは、綺麗だな。お土産に買って来てくれたのかい?」
「ええ、まあ。キリル嬢にも色違いのものを買って来たのですが…兄上から渡してもらえますか?」
「ユニから渡さなくていいのか?」
「最近は忙しそうですし、そこまで時間をとってもらうことでもないので…。」
そうか、というと兄上は寂しそうな顔をしていた。キリル嬢とは俺も親しいから直接渡したいのはやまやまだが、キリル嬢は結婚を控えた身だし、噂好きな方もいるから余計な不安要素は消しておきたい。
あとは他愛もない話をしながら、屋敷に入った。
宿代や食事代などの小銭と護身用の短剣を鞄に入れ、馬へ飛び乗った。最近は考え事ばかりしていたから、少しでも気分が晴れるといいが…。
貴族街の門を出て、ゆっくり進む。兄上は…すごく心配しているだろうな。王都に来る前からある程度、予想はしていたみたいだし…。
しばらく進むと綺麗なガラス細工を売っている露天商を見かけた。兄上やキリル嬢にお土産として買って行くか。兄上とキリル嬢は揃いのものがいいよな。
馬を降りて露天商に声をかけた。
「そこのガラス細工をもらえないか?」
俺が目をつけたのは、ウサギのガラスの置物何色か並んでいたし、縁結びの象徴だからちょうどいいと思った。縁結びは恋愛だけではなく、友達などの縁も繋いでくれるから2人がいい人たちに囲まれて過ごせたらいい。
青と紫のウサギを選び、馬に乗っても割れないようにしっかり包んでもらう。
…俺も買おうかな。ガラスが太陽の光に反射して綺麗だし、窓際に飾るのもいいだろう。
あともう一つ、と露天商に指差したのは赤色の亀。亀はあらゆる吉兆を呼び寄せてくれるそうだ。
露天商が手厚く包んでくれている途中、ふと陛下の顔が浮かんだ。そういえば、陛下の瞳の色も赤だったな…。
なんだかこれでは、俺が陛下のことが恋しくてたまらないやつみたいじゃないか!
でも、綺麗だし、陛下の目に入るものでもないし。少し恋しいと思ってしまっているのも本当だし。まあ、いいか。
露天商に3つの代金を払うと、頬に手を当ててみる。じんわり熱くなっているのがわかって慌てて踵をかえした。
露天商には俺の顔が赤くなってるの丸見えだったんだろうな…。恥ずかしい。
馬に乗ってさっきよりも少しスピードを上げて走り出した。
王都は出るときには入る時ほど厳しい審査はない。審査は入ったときの記録と見比べるだけで終わり、すぐに通り抜けることができた。
街道へ出るとスピードを出すことができる。だから、人が周りにいないかを確認して、グンっとスピードを上げた。馬車に乗っていた時はゆっくり眺められた光景が、流れるように過ぎていく。
さわやかな草原の香りが、肺を満たす。赤い頬の熱もグルグルと頭を巡る悩みも風が全部持ち去ってくれた。
夢中で走り続けていると、だんだんと空が赤くなって来た。
「次の街で泊まるか…。」
すぐ目の前に見えできた街で今夜は宿をとることにした。
俺は一応侯爵令息だし、寝ている間に誘拐なんてされてはたまらない。俺はこの街で1番セキュリティがしっかりしていると評判の宿に向かった。
馬を降り、歩いていると目的の宿が見えて来た。馬を厩舎に預けてチェックインをする。1番高い部屋を取ったけれど、高級宿というわけではないから、そこまでお金はかからなかった。
部屋に入ってすぐにベットに飛び込む。流石に一日中馬に乗るのはキツい…。休憩もロクにとっていなかったし。明日起きたらすぐにご飯を食べよう。腹が減った…な…。
目が覚めたら既に昼になっていた。
「寝過ぎたな…。」
宿にある食堂で食事を済ませ、すぐに厩舎へと向かう。
「昨日は、たくさん走らせて悪かったな。」
鼻を撫でると、フンッと鼻を鳴らした。
「今日は休み休み行くから許してくれ。」
苦笑しながら手綱を引いて街の外に出る。
忘れ物はないかと、鞄の中をあさって確認をする。今日の昼飯…昼飯というには遅いが、宿の食堂で買ってきたものがある。あと馬の餌も厩舎の人が持たせてくれた。道中に川もあるから水は必要ないし、昨日買ったガラス細工もある。
忘れ物は無いようだ。
もう、半日ほどで領地につくため、それほど急ぐ必要もない。俺は馬に乗ってゆっくりと走り出した。
少しして、俺は昼の暖かい日差しと心地の良い振動で睡魔に襲われていた。落馬なんてことはないだろうが、ちょうど小川も近くにあることだし、一度休憩しよう。
木の陰で馬に人参を差し出す。するとモシャモシャと食べ始めた。正面からものを食べている馬を見るのはちょっと面白い。クスクスと笑うと、プイッと顔を逸らされてしまった。
「怒るなよ、貶してないんだから。」
背中を撫でてやると、馬はまたこちらを向いた。結構単純なやつだな。
ご飯を食べたり、水を飲んだりしっかり休憩してからまた出発した。
しばらく走ると、領地の門が見えて来た。今日帰ると文を出していたから、すぐに領地に入ることができた。
屋敷の入り口に着くと、兄上が出迎えてくれた。
「ユニ!無事だったか?」
「ただいま帰りました、兄上。…無事と言えば無事ですが、無事ではないと言えば無事ではないです。」
「…どういうことだ?」
「兄上、この話は後でします。とりあえずこれを受け取ってください。」
そう言ってキリル嬢と揃いのガラス細工を渡す。流石に外で陛下の話はできないし、話を逸らすのに役立ってくれた。
「…これは、綺麗だな。お土産に買って来てくれたのかい?」
「ええ、まあ。キリル嬢にも色違いのものを買って来たのですが…兄上から渡してもらえますか?」
「ユニから渡さなくていいのか?」
「最近は忙しそうですし、そこまで時間をとってもらうことでもないので…。」
そうか、というと兄上は寂しそうな顔をしていた。キリル嬢とは俺も親しいから直接渡したいのはやまやまだが、キリル嬢は結婚を控えた身だし、噂好きな方もいるから余計な不安要素は消しておきたい。
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