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6 璃子・悠真両視点

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璃子視点

…別れを告げようとして失敗してから、少しした頃。
私達は沢山の人に見守られながら、誓いのキスを交わそうとしていた。
少し恥ずかしいけど、とっても幸せ。これからきっと甘くて幸せな日々が始まるんだろう。
そんな事を思いながら、悠くんと唇を重ねる。


結婚式の少し前の話…

結局別れる事なく話は終わったがその後が問題だった。

「じゃ、早速結婚の準備をしよう」

「え!早くない?」

「璃子は一年以内に結婚したいんですよね?」

「え、いやそれは、別れるための口実で…」

「はい。知ってます」

「じゃ、じゃあ「でも僕は…今すぐにでも璃子と結婚したいんだ。ダメかな…」
少し落ち込んだような声色と顔で私を見つめてくる。
確か出会った時もこんな顔されて断り切れなかったんだよね…
でも、こんな顔されて断ったりなんてしたら私の良心が痛む。

「…最高のプロポーズ…してくれたら許してあげる」
ちょっと上から目線になっちゃったけど、結婚するならちゃんとしたプロポーズを受けてからが良い。
悠くんが嫌なら我慢するけど、ちょっとだけ私の我儘きいて欲しいなとも思う。

「うん。頑張る」
と悠くんはそれを笑顔で了承してくれた。最高のなんて言ったけれど、少しロマンチックなプロポーズを悠くんがしてくれたら、それで満足だ。あまり難しく考えてないといいけど…





悠真視点

どうしよう…思わず「うん。頑張る」なんて言ってしまったけど、最高のプロポーズにする自信なんてあるわけがない。璃子は恋愛ドラマが好きで、ロマンチックな事に憧れてるのは知っている。でも問題なのは僕にそれができるかということだ。
璃子を早く僕だけのものにしたいし、ゆっくりなんてしていられない。でも璃子がどんなプロポーズをしてほしいか考えるために、璃子が見てたドラマ見返してみようかな…


…ダメだ。ドラマの中の男たちのプロポーズの方法が多彩すぎて一つにまとまらない…
もういっそ、シンプルにデートの最後にレストランとかで指輪を渡してしまおうか…でもそんな単純なプロポーズに面白みも何もないだろう。…そういえば来週は僕たちの交際記念日だよね?それを使えば…


それから一週間ほどして、交際記念日になった。
今日はお祝いということでデートをすることになっていたのだ。
そして僕はこの機会を使って璃子にプロポーズをする。
 でも今日は生憎璃子は仕事。だから璃子の仕事終わりに迎えに行ってそのままデートに連れていこうと思う。
璃子から仕事が終わったというメッセージが届いた。僕はそれに今から迎えに行くから待っててと返し、車に乗り込んだ。しばらく車を走らせると会社の前で待つ璃子が見えた。
段々と近づいていくと璃子が僕に気づき、手を振ってくれた。僕も軽く手を振り返し車を路肩に近づけ璃子が乗り込むのを待つ。

「少し疲れてるみたいだけど、大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ」
その答えを聞き安堵すると同時に、車を発進させる。

「ねぇ悠くん今日はどこに行くの?」
璃子が後部座席から聞いてくる。いつもなら嬉々として答えるところだけど、今日は少し驚かせたいから…

「…秘密…です」

「もー教えてくれたっていいのにー」
璃子の少し拗ねたような声が聞こえた。そんなところまで可愛いのは少しずるいと思う。璃子と他愛ない会話を交わしながら運転していると、目的の店が見えてきた。

「璃子。そろそろ降りる準備してね」

「え…悠くん降りる準備ってここら辺高級店しか並んでないよ?」

「そうだねーまあ、行こっか」

「えっちょっ、ちょっと悠くん⁉」

動揺している璃子を車から降ろし、店へと向かう。
今日は少し高めのレストランに行くから、ちゃんとした服装じゃないと入れないんだよね…
僕そんな服持ってないし、璃子には僕の選んだ服着てほしかったから…
店に入ると、店員さんが現れたので璃子に着替えを頼み僕も着替えに行く。
璃子がカッコいいと思ってくれるといいけど…

僕も着替え終わり、髪の毛のセットまで終わったところで璃子が出てきたと知らせられ、振り返った僕は思わず声を失った。

「…へん…かな?」
僕が全く反応しないからか少し不安そうに璃子が聞いてきた。

「ううん、綺麗だよ?…璃子が綺麗すぎてすぐ反応できなくて…ごめんね」

「そんなことないよ、悠くんも…かっこいい…」

モスグリーンのパンプス、ストッキングに包まれたほっそりとした足。白い膝丈のワンピースに編み上げられた璃子の美しい黒髪。そして首元を飾るパールのネックレス。そのすべてが美しい…
あ。璃子をもっと見ていたいけどそろそろレストランの予約の時間になっちゃいそう…
やばい。ちゃんと成功させられるかな…少し緊張しながらも璃子と車に乗り、レストランへと向かった。
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