彼と彼女のお話

アクエリア

文字の大きさ
上 下
2 / 4

図書館での出会い

しおりを挟む
毎週日曜日の午後3時。私は今日も図書館にいる。毎週私がここにくるのは本が好きだからだけではなく、いつも決まった席に座っている彼がいるからだ。名前も知らない人を見るために毎週通っているなんてストーカーみたいじゃないだろうか...でも家まで付け回しているわけではないから多分...大丈夫なはずだ。

いつも窓辺の席で静かに本を読んでいる彼は、私の理想の男性と言っても過言はないだろう。私は昔からあまり大人数で過ごしたり騒いだりすることがあまり好きではなくて、本が好きな仲間とたまにあって話をするぐらいがちょうどよかった。私は彼のことを詳しく知っているわけではないが、もしも彼と親しくなることが出来たなら二人で静かな時間を共有できるんじゃないかと思えたのだ。今まで私の周りにそんな男性はおらず、ここまでいないのも珍しいんじゃないかと言えるほどだった。

今日も本を探しながら、彼を見つめているとバチッと目があってしまった。じっと見すぎただろうか...とりあえず会釈をして目線をそらす。いきなり目線を外すのは失礼だろうからな...あーでもやっぱり素敵だな...何故私はこんなにも素敵な男性に今まで出会えなかったのか...もう少し見ていたかったが、今日は彼と目があってしまったからコンビニにでもよって帰ろう。

カウンターで手続きを済ませて、図書館の自動ドアをくぐる。外に出た瞬間に感じるこの熱気はいつになっても慣れない。外と中の温度差で風邪を引いて仕舞いそうだ...何故私は今日自転車で来ているのか...悲しいことに私は車を持っておらず、この地域はマトモに電車も通っていない。バスにも乗りなれておらず、のったら最後どこにつくか分からない。社会人として壊滅的な気がするが仕方がないのだ。あの難しさは異常だ。と、まあ必然的に自転車移動になってしまうわけだ。さっさと帰ろう体が溶ける。私は急いで自転車を走らせた。


それから数週間たった頃。日差しも弱まり肌を少し涼しい風が撫でていってくれるような季節に変化は起きた。
いつものように図書館に向かうと自動ドアの前に彼がたっていた。ドアの前は人が少なく立ち止まるわけにも行かなかったので素通りして図書館に入ろうとしたとき後ろから声が聞こえた。

「...あの」
もしかして私のことだろうかと振り返ると彼が私の方を向いていた。
「そうそこの貴女です。」
やっぱり声を掛けているのは私で合っているんだろう。

「あのなにか?」

「えっと...話があって着いてきてくれますか?」
毎週彼を見ているからやっぱり不快に思われてるんだろうか...少し緊急しながらも返事を返す。
「...はい」
あー嫌われてたらどうしよう...でもまあ仕方ないよな...

図書館のすぐ隣にあるカフェに連れてこられた。ここは人は多いけど、雰囲気が好きでよく私が通っている場所だ。ここに誰かと来ることになるなんて思いもしなかった...

「それで話って何ですか?」
と私が質問をすると「まあ座ってからにしましょうよ」と微笑まれてしまった。少し強引なんだな、さっきまで少しオドオドしていたのに...やっぱり人は話してみると印象は変わるものなんだな。
そんなことを思いながらも窓際の席につきブラックのコーヒーを頼む。

コーヒーが私達のテーブルに届いて一息ついたところで彼が口を開いた。

「まず話を始める前に自己紹介をしておきましょうか。僕の名前は秋原夏樹です。」

「秋と夏どっちも名前に入ってるんですね」

「そうなんですよ、変な名前でしょう?」

「私は嫌いじゃないですけど...」

「少し女みたいな名前ですよね。僕は気に入ってるんですけど、小さい頃はよくからかわれてました。」
自分の名前をからかわれるのは嫌じゃなかったのだろうか?笑顔で話していたけどあまりいい思い出ではないだろう。まあこちらも自己紹介をするとしようか。
「そうなんですね...私は冬木遥です。」

「はるかって言うのはどういう字を書くんですか?」

「遥か向こうとかの遥かですかね...」

「残念ですね。春夏秋冬全部揃うと思ったんですけど...」

「すみません」
秋原さんが本当に残念そうに言うので思わず謝ってしまった。

「いや、謝らないでください!僕が勝手に思ってただけですから。それより話があるって言いましたよね?その事なんですけど...」

秋原さんは私が秋原さんをずっと見ていたことを知っていたそうだ。流石にバレていない等とは思っていないが最初の方からとなるとその恥ずかしさで顔から火が出そうだ...

私が顔を手で覆い隠していると彼はさらに言葉を続けた。
「それで本題何ですけど...僕と付き合ってくれませんか?」

「えっ...」

「えっと驚きますよね...こんな地味な僕に興味を持ってくれる人なんて今までいなくて、暫くしてもずっと見ていてくれるので今日話しかけてみたんです。嫌だったら全然断ってくれていいんですけど...どうですか?」

今までずっと見ててどう思われてるかが怖くて全然話しかけるなんて出来なかったのにまさか相手の方から告白してもらえるとは...断る理由なんてひとつもない。私は即座に了承した。

「でもいいんですか?よく知りもしない私で...」

「それはこれから知っていこうと思います。だから沢山教えてくださいね?」
蠱惑的な笑みを浮かべた秋原さんに私の心は撃ち抜かれてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

ご褒美

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
彼にいじわるして。 いつも口から出る言葉を待つ。 「お仕置きだね」 毎回、されるお仕置きにわくわくして。 悪戯をするのだけれど、今日は……。

放課後の生徒会室

志月さら
恋愛
春日知佳はある日の放課後、生徒会室で必死におしっこを我慢していた。幼馴染の三好司が書類の存在を忘れていて、生徒会長の楠木旭は殺気立っている。そんな状況でトイレに行きたいと言い出すことができない知佳は、ついに彼らの前でおもらしをしてしまい――。 ※この作品はpixiv、カクヨムにも掲載しています。

飲みに誘った後輩は、今僕のベッドの上にいる

ヘロディア
恋愛
会社の後輩の女子と飲みに行った主人公。しかし、彼女は泥酔してしまう。 頼まれて仕方なく家に連れていったのだが、後輩はベッドの上に…

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

処理中です...