テラへ愛を捧ぐ

大江山 悠真

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第2章 ダンジョン

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     ☆☆☆☆☆

「ねぇ、何故集落で休憩しなかったの?」と聞いてみる。

倉橋さんの返事はおかしなところがあるからなだって。
剛君もあそこには大人の男(ヒト)たちしかいませんでした。女子供がいない集落ってあるのでしょうかね。
幸田君は幸田君で綺麗すぎたよなと苦虫を潰したような顔をしている。
囲まれたら囲まれたらで・・・なんて考えるのは危ないよね。
自分たちよりはるかに強いものがいたら全滅になるのだし、倉橋さんは俺やアキラはいいんだが由紀や剛は待ってくれてる人がいるだろう。なんとしても連れて帰らないとな。
倉橋さん、全員で無事に祖父ちゃんたちの元に帰ること考えてるんだ。だから血気にはやらないのか。

駆け足で気配を探りながら進んでいくと、前方に不思議な気配。
白狼がストップするように前に出る。
道路の横に女の人が立っている?
いやでも透けてない?後の木立が薄っすら見えてない?
女の人なぜか呆然としている様子だよ。
幽霊がでるにしちゃ早いような・・・アンテッド?ですか?
ゾンビやキョンシーではないみたい、あれは透けないものね。
でも、倉橋さん何故白狼が突然止まったかわからないみたい。
え?!何でかな。
幸田君もアンナさんも不思議そうに立ち止まった。

「白狼、どうして止まったの?なにかあるの~」
剛君が白狼に訊ねてる、あれどうして?

「白狼はあの透けた女の人みて止まったのではないのかな。ねえアンナさん、そう思わない?」

「「「「????」」」」

「由紀ちゃん、女の人って何処に?」

「え、そこの木の前に・・・
 ・・・お姉さん?ですか?どうしました?」

返答はなし。声をかけた私に気づいたくれたのか女の人がこちらに来る。

「ねぇ。貴女、私がわかる?」

『おい、なにかヒヤとしないか?』
『由紀は誰に話しかけてるんだ?』
『独り言なの、でも由紀姉ちゃんは誰かに話しかけてるよ。』
『・・なにかか誰かかいる感じしない?』
『とにかく、白狼も由紀を見てるみたいだから暫く様子見しよう。』


「わかるけど・・・でも貴女誰?」

「私・・・私は・・・誰だろう?あれ?名前・・思い出せない?・・・・・・
思い出した、私死んだのよ!あちらの木の根元を見て頂戴。死体がない?あるでしょう。
そう、それが私なのよ。」

「ちょっと待って・・・木の根元?・・・みんな、ごめん。あちらの木の根元に女の人の遺骸ないか見てもらえる?」

「あちらを調べるんだな・・・遺骸?遺骸なのか。骨はあるな、長い髪の毛があるから女の人のか・・・」

「・・・あるんだ。その遺骸は貴女のなのね?」

「・・・そう、私のみたい。私が殺されたときね、何もしてこなかった自分がすごく嫌でこのまま死ねるか~そう考えたみたい。それで自分の能力を誰かに私を見つけてくれた人にあげようと思ったの・・・でもね、誰も私を見つけてくれなかったの。一生懸命、お話しようとしたのに誰も私に気づかなかったの・・・でも貴女が気づいてくれたのね、嬉しい。私の能力を貰ってね・・・」

「えーえ!能力を貰うことできるの!!うそ~」

「「「「話が全然分からない。一人で百面相せずに話せ(して頂戴)」」」」

皆の声が聞こえたら、あら不思議。女の人が消えて妖精みたいなのが飛んでいた。
その妖精みたいなものはすぐにどこかに飛んで行っちゃった。
その後、皆に説明したよ。
遺骸の女の人から能力を分けてもらえたこと。
もらえた能力は”鑑定”
その夜全員を鑑定してみました、皆が了解してくれたもんね。

鑑定結果
倉橋誠(30):人族・HP276・MP173・生活魔法・火魔法・風魔法

幸田晃(23):人族・HP287・MP143・生活魔法・火魔法・土魔法

田中アンナ(38):人族・HP208・MP213・生活魔法・火魔法・風魔法・回復魔法

神崎由紀(22):人族・HP181・MP206・生活魔法・水魔法・土魔法・鑑定

剛(16):人族・HP233・MP307・生活魔法・水魔法・回復魔法・聖魔法・使い魔(1)

鑑定結果に皆がワイワイガヤガヤしているところに夜分のお客さん。
無粋なお客よね。

「自分の得意なものを理解したな。それを使ってもてなすぞ!」

イチバ~ンと嬉しそうに放ったのはアンナさん。大きな炎弾を一発。
炎弾がロケットランチャーとすれば、火弾は弾丸よね。まだ機関銃のようには出来ないみたいだけど、それに近いもので連射してるのは幸田君と倉橋さん。
撃ち漏らしたのを剛君がナイフを飛ばして目を潰してる。
私はストーンバレットの乱れ撃ち。一撃で倒すことはできないけれど数で対応。
それに白狼も手伝ってくれるものね。
襲撃者全員を倒した後は、生き残った人にお話を聞かなくてはね。



     ◇◇◇◇◇


お前たちを襲撃した理由?
簡単だ、お前たちが人族だからさ。個人的な恨みなんてあるわけないだろう。
俺たちも元は人族だったのさ。
津波があっただろう。津波のあと生存してた俺たちは各地思い思いに避難した。避難するまでに亡くなったものも多くいたんだ。
体力がなくなり倒れたり、飢えで死んだり魔物たちに襲撃されたりといろいろだった。
俺は仲間から除外され襲ってくる動物たちに殺されたんだ。
死んだはずなのに気が付けば生きていた。俺は仲間を探した。彷徨ったさ、彷徨ううちに自分の顔が変化してるのに気づいた。
俺の顔をみて叫びながら石や棒を投げてくるんだ。俺は話を聞いてくれって頼んだんだぜ。
何もしないから仲間に入れてくれってな。
ただ、俺の顔が豚のようになっているから物を投げないといけないか?殺されないといけないのかよ。
俺は彷徨う中で俺と同じような奴らに出会った。そいつらも元は人間だ、だがいつの間にか獣のような顔になっていたんだ。ただ依然と違ったのは俺たちは人間だった時と比べてはるかに力が強かった。
おかげで俺たちは魔物からも身を護れた。
俺たちが集落を作って生活してたら、人間が来て一緒に暮らそうと言うのさ。
俺たちは喜んだ、一緒に暮らせるとな。俺たちの外見はどうであれ人間としての気持ちが強かったからな。
ところが暮らした奴らは亜人として差別したのさ。人間じゃない2流の人間としてな。
そのくせ、農業や狩りで得たものは配分しろと要求するんだ。
俺たちは奴隷じゃないぞ。奴らは奴隷としか俺たちを考えてなかったが・・・だから俺たちは人族を殺した。
弱いくせに文句はつけるし、自分たちが一番偉いと思いあがるし差別はするしな。
人族は俺たちがいないと生活できないが俺たちは人族がいなくても生活できる。
俺たちは近くに人族が来たら殺すことにしたのだ。
今回は俺たちよりお前たちの方が強かった。負けたのだから殺されても文句は言えない、好きにしろ。





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