5 / 11
case 5
しおりを挟む
急な通り雨。アスファルトは滲み、雨の臭いが染み込んでいく。地面に滲む水玉模様は広がり、やがて辺りを一色に染め上げる。
本当は本屋にでも寄って帰るつもりだったのだが、本屋よりずっとバス停の方が近かったことでそちらに向かうことに決めた。
今日は土曜日。
本来学校は休みだが自主勉強のために教室は解放してもらえる。校内に他の生徒はほとんどいなかった。
なんだかお腹がすいてきたのでお昼には早かったが家に帰ることにした。そして今、俺は雨に打たれている。
「ついてねぇ…」
ぼやきながら走ってバス停に向かう。
到着したときにはずぶ濡れだった。鞄からタオルを取り出して拭いていると近くの女子校の生徒がバス停に入ってきた。
「あーもーずぶ濡れじゃん…」
そう言った彼女は下着が少し透けるほどに雨に打たれていた。
どうしても目が吸い込まれてしまうんです。それはもうまるでS極とN極が如く…マジすんません。と、心の中で謝罪しつつチラチラと盗み見ていると彼女と目があってしまう。
「あれれー?何見てるのかなぁ?」
彼女は不敵な笑みを浮かべる。
「別に見てないです。ちょっと自意識過剰なんじゃないですか?」
真面目が専売特許でこのかた15年やらせてもらってるんです。今さら認めれないんです。目があったからバレバレなんですけどね。
「目。合ったよね?」
ホラ、バレてんじゃん!
「合ってません。」
もう無理だろ!
「嘘つけーホラ、この透けてるブラを見たんだろー?何色だったか言ってみな?怒らないから。」
青です!
「ちょっと何言ってるかわからないです。」
お前が何言ってるかわかんねえよバカ!もう逃げようがねえだろ!
「なかなか意地っ張りだな君。なんかちょっかいかけたくなるよねー。」
悪い顔で笑う彼女にこの先どう対応するのが正解か必死に頭を回転させたが答えがでない。
「君さぁ、年上に興味ある?」
あるに決まってんだろッ!
「いえ、別に。そもそも女性に興味がないので。」
むしろ女性にしか興味がないだろバカ!
「そーなの?あたしは君に興味津々だけどなー。」
(チラッ)再び視線が交わる。
「やっぱ興味あんじゃーん。ムッツリだームッツリスケベだー。」
「違うし!別に興味とか全然ないし!」
言い訳すらも並べられずどんどん彼女のペースになっていく。
「ホントかなー?彼女はいるの?」
「別にいてもいなくても関係ないでしょ。」
彼女なんてできたことねえよ…そもそも女子とこんなに長くやり取りしたことねえよ!
「あ、これいない人の反応だわー。一度もできたことない反応だわー。」
「うっさいなぁ。ほっといてよぉ!」
そう言い捨てそっぽを向く。
コツコツとローファーが地面を打つ音がする。そして、彼女はピッタリと俺の横にくっつきベンチに座る。そして耳元で囁く。
「これでもあたしに興味わかない?」
思考が、停止した。
え?なに?どうすればいいの?誰か今すぐに教えて!
「す、少しだけなら。」
答えて振り返ると彼女は声を押し殺し笑いを堪えていた。
「なんなんだよお前!」
俺は顔を真っ赤にして叫ぶ。その赤みは怒りからなのか恥ずかしさからなのかは自分でも判断しかねる具合だ。完全にこの女の掌の上で転がされてしまっている。それでも何故か悪い気分ではなかった。
「怒った?」
更に煽ってくる彼女に、これ以上取り合うとこてんぱんにやられてしまいそうなので突っぱねることにした。
「もういい。話しかけないでください。」
「嫌だ。」
「は?」
振り返ると彼女との距離は近く、ぶつけようとした言葉は驚きで飲み込んでしまった。数秒の沈黙。そして、彼女は微笑む。
その笑顔に不意をつかれる。更に見とれること数秒。
肩が触れる距離にいたせいか甘い香りが鼻孔をくすぐる。なんだこの気持ち。
「なんか言ってみ?」
また不敵な笑みを送る彼女に俺は次の一手を考えるが、どうやっても敵う気がせず出した結論は、
「まいりました。」
再び彼女の笑みが返ってくる。その笑顔が今までのモノとは違い、優しく、温かく…
俺は、その笑顔に再び見とれることとなった。
本当は本屋にでも寄って帰るつもりだったのだが、本屋よりずっとバス停の方が近かったことでそちらに向かうことに決めた。
今日は土曜日。
本来学校は休みだが自主勉強のために教室は解放してもらえる。校内に他の生徒はほとんどいなかった。
なんだかお腹がすいてきたのでお昼には早かったが家に帰ることにした。そして今、俺は雨に打たれている。
「ついてねぇ…」
ぼやきながら走ってバス停に向かう。
到着したときにはずぶ濡れだった。鞄からタオルを取り出して拭いていると近くの女子校の生徒がバス停に入ってきた。
「あーもーずぶ濡れじゃん…」
そう言った彼女は下着が少し透けるほどに雨に打たれていた。
どうしても目が吸い込まれてしまうんです。それはもうまるでS極とN極が如く…マジすんません。と、心の中で謝罪しつつチラチラと盗み見ていると彼女と目があってしまう。
「あれれー?何見てるのかなぁ?」
彼女は不敵な笑みを浮かべる。
「別に見てないです。ちょっと自意識過剰なんじゃないですか?」
真面目が専売特許でこのかた15年やらせてもらってるんです。今さら認めれないんです。目があったからバレバレなんですけどね。
「目。合ったよね?」
ホラ、バレてんじゃん!
「合ってません。」
もう無理だろ!
「嘘つけーホラ、この透けてるブラを見たんだろー?何色だったか言ってみな?怒らないから。」
青です!
「ちょっと何言ってるかわからないです。」
お前が何言ってるかわかんねえよバカ!もう逃げようがねえだろ!
「なかなか意地っ張りだな君。なんかちょっかいかけたくなるよねー。」
悪い顔で笑う彼女にこの先どう対応するのが正解か必死に頭を回転させたが答えがでない。
「君さぁ、年上に興味ある?」
あるに決まってんだろッ!
「いえ、別に。そもそも女性に興味がないので。」
むしろ女性にしか興味がないだろバカ!
「そーなの?あたしは君に興味津々だけどなー。」
(チラッ)再び視線が交わる。
「やっぱ興味あんじゃーん。ムッツリだームッツリスケベだー。」
「違うし!別に興味とか全然ないし!」
言い訳すらも並べられずどんどん彼女のペースになっていく。
「ホントかなー?彼女はいるの?」
「別にいてもいなくても関係ないでしょ。」
彼女なんてできたことねえよ…そもそも女子とこんなに長くやり取りしたことねえよ!
「あ、これいない人の反応だわー。一度もできたことない反応だわー。」
「うっさいなぁ。ほっといてよぉ!」
そう言い捨てそっぽを向く。
コツコツとローファーが地面を打つ音がする。そして、彼女はピッタリと俺の横にくっつきベンチに座る。そして耳元で囁く。
「これでもあたしに興味わかない?」
思考が、停止した。
え?なに?どうすればいいの?誰か今すぐに教えて!
「す、少しだけなら。」
答えて振り返ると彼女は声を押し殺し笑いを堪えていた。
「なんなんだよお前!」
俺は顔を真っ赤にして叫ぶ。その赤みは怒りからなのか恥ずかしさからなのかは自分でも判断しかねる具合だ。完全にこの女の掌の上で転がされてしまっている。それでも何故か悪い気分ではなかった。
「怒った?」
更に煽ってくる彼女に、これ以上取り合うとこてんぱんにやられてしまいそうなので突っぱねることにした。
「もういい。話しかけないでください。」
「嫌だ。」
「は?」
振り返ると彼女との距離は近く、ぶつけようとした言葉は驚きで飲み込んでしまった。数秒の沈黙。そして、彼女は微笑む。
その笑顔に不意をつかれる。更に見とれること数秒。
肩が触れる距離にいたせいか甘い香りが鼻孔をくすぐる。なんだこの気持ち。
「なんか言ってみ?」
また不敵な笑みを送る彼女に俺は次の一手を考えるが、どうやっても敵う気がせず出した結論は、
「まいりました。」
再び彼女の笑みが返ってくる。その笑顔が今までのモノとは違い、優しく、温かく…
俺は、その笑顔に再び見とれることとなった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
古屋さんバイト辞めるって
四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。
読んでくださりありがとうございました。
「古屋さんバイト辞めるって」
おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。
学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。
バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……
こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか?
表紙の画像はフリー素材サイトの
https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【本編完結】繚乱ロンド
由宇ノ木
ライト文芸
番外編更新日 12/25日
*『とわずがたり~思い出を辿れば~1 』
本編は完結。番外編を不定期で更新。
11/11,11/15,11/19
*『夫の疑問、妻の確信1~3』
10/12
*『いつもあなたの幸せを。』
9/14
*『伝統行事』
8/24
*『ひとりがたり~人生を振り返る~』
お盆期間限定番外編 8月11日~8月16日まで
*『日常のひとこま』は公開終了しました。
7月31日
*『恋心』・・・本編の171、180、188話にチラッと出てきた京司朗の自室に礼夏が現れたときの話です。
6/18
*『ある時代の出来事』
6/8
*女の子は『かわいい』を見せびらかしたい。全1頁。
*光と影 全1頁。
-本編大まかなあらすじ-
*青木みふゆは23歳。両親も妹も失ってしまったみふゆは一人暮らしで、花屋の堀内花壇の支店と本店に勤めている。花の仕事は好きで楽しいが、本店勤務時は事務を任されている二つ年上の林香苗に妬まれ嫌がらせを受けている。嫌がらせは徐々に増え、辟易しているみふゆは転職も思案中。
林香苗は堀内花壇社長の愛人でありながら、店のお得意様の、裏社会組織も持つといわれる惣領家の当主・惣領貴之がみふゆを気に入ってかわいがっているのを妬んでいるのだ。
そして、惣領貴之の懐刀とされる若頭・仙道京司朗も海外から帰国。みふゆが貴之に取り入ろうとしているのではないかと、京司朗から疑いをかけられる。
みふゆは自分の微妙な立場に悩みつつも、惣領貴之との親交を深め養女となるが、ある日予知をきっかけに高熱を出し年齢を退行させてゆくことになる。みふゆの心は子供に戻っていってしまう。
令和5年11/11更新内容(最終回)
*199. (2)
*200. ロンド~踊る命~ -17- (1)~(6)
*エピローグ ロンド~廻る命~
本編最終回です。200話の一部を199.(2)にしたため、199.(2)から最終話シリーズになりました。
※この物語はフィクションです。実在する団体・企業・人物とはなんら関係ありません。架空の町が舞台です。
現在の関連作品
『邪眼の娘』更新 令和6年1/7
『月光に咲く花』(ショートショート)
以上2作品はみふゆの母親・水無瀬礼夏(青木礼夏)の物語。
『恋人はメリーさん』(主人公は京司朗の後輩・東雲結)
『繚乱ロンド』の元になった2作品
『花物語』に入っている『カサブランカ・ダディ(全五話)』『花冠はタンポポで(ショートショート)』
神様のボートの上で
shiori
ライト文芸
”私の身体をあなたに託しました。あなたの思うように好きに生きてください”
(紹介文)
男子生徒から女生徒に入れ替わった男と、女生徒から猫に入れ替わった二人が中心に繰り広げるちょっと刺激的なサスペンス&ラブロマンス!
(あらすじ)
ごく平凡な男子学生である新島俊貴はとある昼休みに女子生徒とぶつかって身体が入れ替わってしまう
ぶつかった女子生徒、進藤ちづるに入れ替わってしまった新島俊貴は夢にまで見た女性の身体になり替わりつつも、次々と事件に巻き込まれていく
進藤ちづるの親友である”佐伯裕子”
クラス委員長の”山口未明”
クラスメイトであり新聞部に所属する”秋葉士郎”
自分の正体を隠しながら進藤ちづるに成り代わって彼らと慌ただしい日々を過ごしていく新島俊貴は本当の自分の机に進藤ちづるからと思われるメッセージを発見する。
そこには”私の身体をあなたに託しました。どうかあなたの思うように好きに生きてください”と書かれていた
”この入れ替わりは彼女が自発的に行ったこと?”
”だとすればその目的とは一体何なのか?”
多くの謎に頭を悩ませる新島俊貴の元に一匹の猫がやってくる、言葉をしゃべる摩訶不思議な猫、その正体はなんと自分と入れ替わったはずの進藤ちづるだった
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
独り日和 ―春夏秋冬―
八雲翔
ライト文芸
主人公は櫻野冬という老女。
彼を取り巻く人と犬と猫の日常を書いたストーリーです。
仕事を探す四十代女性。
子供を一人で育てている未亡人。
元ヤクザ。
冬とひょんなことでの出会いから、
繋がる物語です。
春夏秋冬。
数ヶ月の出会いが一生の家族になる。
そんな冬と彼女を取り巻く人たちを見守ってください。
*この物語はフィクションです。
実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。
八雲翔
三度目の庄司
西原衣都
ライト文芸
庄司有希の家族は複雑だ。
小学校に入学する前、両親が離婚した。
中学校に入学する前、両親が再婚した。
両親は別れたりくっついたりしている。同じ相手と再婚したのだ。
名字が大西から庄司に変わるのは二回目だ。
有希が高校三年生時、両親の関係が再びあやしくなってきた。もしかしたら、また大西になって、また庄司になるかもしれない。うんざりした有希はそんな両親に抗議すべく家出を決行した。
健全な家出だ。そこでよく知ってるのに、知らない男の子と一夏を過ごすことになった。有希はその子と話すうち、この境遇をどうでもよくなってしまった。彼も同じ境遇を引き受けた子供だったから。
伊緒さんの食べものがたり
三條すずしろ
ライト文芸
いっしょだと、なんだっておいしいーー。
伊緒さんだって、たまにはインスタントで済ませたり、旅先の名物に舌鼓を打ったりもするのです……。
そんな「手作らず」な料理の数々も、今度のご飯の大事なヒント。
いっしょに食べると、なんだっておいしい!
『伊緒さんのお嫁ご飯』からほんの少し未来の、異なる時間軸のお話です。
「エブリスタ」「カクヨム」「すずしろブログ」にても公開中です。
『伊緒さんのお嫁ご飯〜番外・手作らず編〜』改題。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる