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第21話
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すっかり日課となった早朝ランニングも今では少し物足りなさを感じてきた。
相棒である斎藤弘樹は律儀な男だ。休むことなく毎朝オレよりも先にうちの玄関先でストレッチを始めている。
「うぃーす」
玄関ドアを開けると見えた彼の背中に声をかけた。
「おはよん」
振り返り俺をとらえると適当な挨拶を返してきた。
「今日からちょっとだけ距離伸ばさない?なんか物足りなくなってきてさ」
「いんじゃない?ハルちゃんもペース早くなってきたし遅刻することもないだろうしね」
意地悪そうな笑顔を見せて俺をおちょくる。それをサラッと流して目的地を提案する。
「川の方行こうぜ。その方が気持ちいいだろうし」
「いいねー。あそこ結構人多いらしいからねー知り合いに会うかもねー」
そうなのか。まぁそれはそれで楽しそうだ。
朝日に照らされて煌(きら)めく水面(みなも)が気分を高揚させる。もう少し早ければ日の出が見れたのになぁ。
川幅は狭いが少し深いのか流れは緩やかだ。中央は底が見えず、近づいてみると水はあまりキレイではなかった。それでも立ち並ぶ住宅を見て走るよりは何倍もマシだ。
日の出が見れるように少し時間を早めるか。
川の流れに逆らうように上流の方へと向かう。
進行方向から一人の男が走ってきているのが見えた。おそらく同い年くらいだろうか。近づいてくる男の表情がわかるようになるまで近づいたとき男が会釈してきた。
俺は脳内データライブラリーを検索してみたが一致するデータは無かった。誰だっけ…
考え込んでいると弘樹から声がかかる。
「知り合い?」
「いや、わかんなくてさ…誰だっけな…」
「サッカー関係なんじゃないの?」
「それならたぶんわかるんだよなぁ。まぁ考えても出てこねえよたぶん。今日はそろそろ戻るか」
ちょっとモヤモヤするなぁ。
「そうしよっか。ならあの橋のところで折り返そうか。」
こうして暫定ランニングコースが決まった。
帰宅してシャワーを浴びると、思ったより時計の進みが早くそのまま朝食を済ませ急いで家を出た。遅刻ギリギリだなこりゃ。
自転車で急いでいると走っている男子生徒がいた。追い越す時にチラリと盗み見ると今朝の彼だった。
「アンタ、今朝の!」
「ども…」
俺を見ると俯(うつむ)きがちになる。会釈をしたのでさらに顔が下を向きその顔が見えなくなる。
「乗りなよ。あっ!もしかして先輩ですか?」
「いや、同じ1年、です。ありがと」
ホントはいけないんだけど二人乗りで学校の近くまで行くことにした。
「名前は?俺は橘遥(たちばなはるか)」
「三浦洋介(みうらようすけ)です」
「別に敬語じゃなくていいよ。洋介って呼んでいい?」
「うん」
「洋介は毎朝走ってるの?」
「うん」
こいつあんましゃべんないな。
「どれくらい?」
「10キロくらいかな…」
意外だ。俺よりも走ってやがる…
「俺と同じだね。陸上部?」
「いや…帰宅部…」
「え!?なんで走ってんの?」
衝撃だ。目標もなく10キロも走れるか?いや無理だわ。なんか理由があるんだろ。
「走ってる時…何も考えなくていいから」
「そうなんだ…」
どゆこと?よくわかんねえや。
「あ、そろそろ学校近いからあとは歩きで頼むわ。」
「うん。ありがとう」
「んじゃまたなぁ」
返事はなかった。
まぁよくわかんないけどなんかいいやつそうだな。
教室についてホームルームまで暇なので前の席の上田さんに洋介のことを聞いてみた。
「おい上田。」
「お、なんだいハル君。」
こいつなれなれしいな。
「三浦洋介って知ってる?」
「知ってるよぉ。隣のクラスのいじめられっ子でしょ?接点あったんだ?」
え…いじめられっ子?
「それマジか?」
「アタシが今まで嘘ついたことある?」
「ねえけどまだお前の存在を認識して1週間くらいしか経ってねえよ。てかマジか…そうかあ…」
「彼がどうしたの?」
「えーと、いや…なんでもない」
まさかの展開だ。頭がついていってないなこれ。
でもなんで洋介はいじめられてるんだろうか…
踏み込んでいいのか悪いのか…ちょっと難しいなこりゃ…
相棒である斎藤弘樹は律儀な男だ。休むことなく毎朝オレよりも先にうちの玄関先でストレッチを始めている。
「うぃーす」
玄関ドアを開けると見えた彼の背中に声をかけた。
「おはよん」
振り返り俺をとらえると適当な挨拶を返してきた。
「今日からちょっとだけ距離伸ばさない?なんか物足りなくなってきてさ」
「いんじゃない?ハルちゃんもペース早くなってきたし遅刻することもないだろうしね」
意地悪そうな笑顔を見せて俺をおちょくる。それをサラッと流して目的地を提案する。
「川の方行こうぜ。その方が気持ちいいだろうし」
「いいねー。あそこ結構人多いらしいからねー知り合いに会うかもねー」
そうなのか。まぁそれはそれで楽しそうだ。
朝日に照らされて煌(きら)めく水面(みなも)が気分を高揚させる。もう少し早ければ日の出が見れたのになぁ。
川幅は狭いが少し深いのか流れは緩やかだ。中央は底が見えず、近づいてみると水はあまりキレイではなかった。それでも立ち並ぶ住宅を見て走るよりは何倍もマシだ。
日の出が見れるように少し時間を早めるか。
川の流れに逆らうように上流の方へと向かう。
進行方向から一人の男が走ってきているのが見えた。おそらく同い年くらいだろうか。近づいてくる男の表情がわかるようになるまで近づいたとき男が会釈してきた。
俺は脳内データライブラリーを検索してみたが一致するデータは無かった。誰だっけ…
考え込んでいると弘樹から声がかかる。
「知り合い?」
「いや、わかんなくてさ…誰だっけな…」
「サッカー関係なんじゃないの?」
「それならたぶんわかるんだよなぁ。まぁ考えても出てこねえよたぶん。今日はそろそろ戻るか」
ちょっとモヤモヤするなぁ。
「そうしよっか。ならあの橋のところで折り返そうか。」
こうして暫定ランニングコースが決まった。
帰宅してシャワーを浴びると、思ったより時計の進みが早くそのまま朝食を済ませ急いで家を出た。遅刻ギリギリだなこりゃ。
自転車で急いでいると走っている男子生徒がいた。追い越す時にチラリと盗み見ると今朝の彼だった。
「アンタ、今朝の!」
「ども…」
俺を見ると俯(うつむ)きがちになる。会釈をしたのでさらに顔が下を向きその顔が見えなくなる。
「乗りなよ。あっ!もしかして先輩ですか?」
「いや、同じ1年、です。ありがと」
ホントはいけないんだけど二人乗りで学校の近くまで行くことにした。
「名前は?俺は橘遥(たちばなはるか)」
「三浦洋介(みうらようすけ)です」
「別に敬語じゃなくていいよ。洋介って呼んでいい?」
「うん」
「洋介は毎朝走ってるの?」
「うん」
こいつあんましゃべんないな。
「どれくらい?」
「10キロくらいかな…」
意外だ。俺よりも走ってやがる…
「俺と同じだね。陸上部?」
「いや…帰宅部…」
「え!?なんで走ってんの?」
衝撃だ。目標もなく10キロも走れるか?いや無理だわ。なんか理由があるんだろ。
「走ってる時…何も考えなくていいから」
「そうなんだ…」
どゆこと?よくわかんねえや。
「あ、そろそろ学校近いからあとは歩きで頼むわ。」
「うん。ありがとう」
「んじゃまたなぁ」
返事はなかった。
まぁよくわかんないけどなんかいいやつそうだな。
教室についてホームルームまで暇なので前の席の上田さんに洋介のことを聞いてみた。
「おい上田。」
「お、なんだいハル君。」
こいつなれなれしいな。
「三浦洋介って知ってる?」
「知ってるよぉ。隣のクラスのいじめられっ子でしょ?接点あったんだ?」
え…いじめられっ子?
「それマジか?」
「アタシが今まで嘘ついたことある?」
「ねえけどまだお前の存在を認識して1週間くらいしか経ってねえよ。てかマジか…そうかあ…」
「彼がどうしたの?」
「えーと、いや…なんでもない」
まさかの展開だ。頭がついていってないなこれ。
でもなんで洋介はいじめられてるんだろうか…
踏み込んでいいのか悪いのか…ちょっと難しいなこりゃ…
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