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2話

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 運命はこれ以上ないほどに恨んでいるが、真実をありのままに話してくれた両親には感謝している。
 僕は嘘が嫌いだ。その事をよく知っているからこそ正直に話してくれたのかも知れない。

 うちはそこまで裕福な家庭でなはなかったはずだ。だからこそこんな大きな病院の個室に入院することが申し訳なかった。
 どれ程の効果があるかもわからないのに、大金をかけて僕の命を伸ばしてくれている。
 入院するのにだってお金はかかる。

 僕は、両親になにも返せないまま短い生涯を終えようとしている。
 とても悔しかった。

 それと同時に僕は確かな愛情を感じ、初めて両親に心からの感謝を直接伝えた。その際、無意識にこぼれた謝罪が母を泣かせた。
 それは伝播し枯れたはずの涙が沸き上がり、僕の頬を伝った。


 涙は枯れない。

 僕はまたひとつ賢くなった。
 賢くなっても、僕にはもう受けるテストも試験もないのだが。

 あっ…

 それが意味のないことだと理解したとき、とても悲しい気持ちになった。

 ある問いが脳裏をよぎる。

 【この先、僕がやることになんの意味があるのだろうか?】

 だとすればなんのために生かされているのか?
 なにもわからなくなった。


 考えることをやめ、売店へ向かった。

 ロビーはとても広い。一角に小さな本の貸出コーナーがあった。
 本はあまり読んだことがない。だからこそ興味が湧いた。

 適当な1冊を手に取りソファーに腰を掛け流し読みを始めた。
 なかなかに面白かった。ページを捲っていると小さなメモ用紙のような紙切れがヒラヒラと床に落ちた。
 僕はそれを拾い上げる。



Q.貴方は誰?
A._______



 質問がひとつだけ書かれていた。 
 丸くて小さな文字が僕に問いかける。

 受付でボールペンを借りて直ぐにその問に解を添える。ついでに僕も問いかけてみた。



A.悲劇の主人公

Q.君は誰?
A._______


 同じページに挟み込んで僕は借りようと思っていたその本を本棚に戻した。

 返事がかえってくるのかどうか、小さな楽しみができた。


 僕は病室に戻り母に今日の出来事を話すと、母の表情が少しだけ柔らかくなった気がした。
 心のモヤモヤが少しだけ晴れた。

 残り少ない人生。後悔が少しでも減るように、できるだけ両親と話をしようと思った。
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