怖い話集 ホラー

日曜日

日曜日の朝、田村はいつも通りに目を覚ました。静かな家の中、普段と変わらない日曜日の始まりに安心を感じていた。しかし、何かが違った。リビングの窓から見える風景は、いつも見慣れたものであるはずなのに、どこか不気味な雰囲気が漂っていた。

朝食を終えた後、彼は掃除を始めた。すると、ふと、物置から聞こえる微かな声に気づいた。「助けて…」というかすれた声だった。心臓がドキリとした。物置には普段使わないものが詰まっているため、恐る恐るドアを開けた。

その瞬間、声は止んだ。物置の奥には、古びた玩具や本が散らばっていた。田村は気のせいだったのかと思い、再び掃除を続けた。しかし、気持ちは晴れなかった。

午後になり、近所の子供たちが外で遊んでいる声が聞こえてきた。田村は一瞬外に出たくなったが、物置の声が頭から離れず、結局家にこもった。夜が近づくにつれ、不安が募り、彼は再び物置の前に立った。

再度ドアを開けると、そこには一つの古い人形が目に入った。その人形はまるで彼を見つめているかのようだった。突然、背後から声が聞こえた。「私を忘れないで…」。驚いて振り返ると、誰もいない。恐怖に駆られた田村は、ドアを閉めてしまった。

その夜、寝室に入ると、夢の中で再びあの声が聞こえてきた。「助けて…私を助けて…」。目が覚めると、夜中の2時を指していた。薄暗い部屋の中、何かが彼の周りを包み込むように感じた。

気づくと、寝室のドアが微かに開いていた。そこには、人形が立っていた。田村は目を疑った。心臓が高鳴り、彼は逃げようとしたが、体が動かない。人形がゆっくりと近づいてきて、「約束を守って…」と繰り返した。

翌朝、田村の姿は誰にも見えなかった。彼の家には、ただ一枚のメモが残されていた。「日曜日の約束を忘れないで」。それ以来、彼の名前を呼ぶ声が、近所の子供たちの遊び声に混ざって響くようになった。人々はその声を耳にしながらも、誰も振り返ることはなかった。