怖い話集 ホラー

金曜日

金曜日の夜、山田は友人たちと飲みに出かけた。今週も仕事が忙しく、待ちに待った週末だった。楽しいひとときを過ごし、気がつけば夜は深まり、酔った勢いで彼は友人たちと別れ、ひとりで帰ることにした。

暗い街を歩きながら、ふと不気味な気配を感じた。背後から視線を感じ、振り返るが誰もいない。自分の気のせいだろうと自分を納得させた。しかし、帰り道の途中、急に寒気がして、身震いがした。

その時、電話が鳴った。見ると見知らぬ番号だったが、好奇心から受け取る。「金曜日の約束を果たしに来い」と、低い声が響いた。驚いた山田はすぐに電話を切り、急いで帰ろうとした。

家に着くと、何かが違うことに気づいた。部屋の中は薄暗く、何かが待っているような気配がした。無理に明かりをつけ、リビングを見渡すと、何も変わった様子はない。しかし、心の底から不安が湧き上がる。

その晩、山田は眠れずに過ごした。夢の中で再びあの声が響く。「約束を果たす時間だ」。目が覚めた時、時計は午前三時を指していた。胸騒ぎを感じながらも再び眠ろうとしたが、再び電話が鳴る。

受話器を取ると、無言の静寂の後、同じ声が再び聞こえた。「金曜日はお前のものだ」。その瞬間、彼の周囲が暗くなり、部屋の温度が急に下がった。

恐怖に駆られた山田は、ドアを開けて外に逃げ出した。しかし、外には誰もいない。静まり返った街並みの中、彼は自分が置かれた状況に気づく。すべてが夢のような現実感のない状況だった。

そのまま逃げ続けると、視界の隅に何かが動くのを見た。振り返ると、あの影が再び彼の前に現れた。「お前は逃げられない」。その声が彼の心に響くと、山田は全身に冷たい汗をかいた。

その後、彼はその影に捕まった。周囲が暗闇に包まれ、彼の意識は次第に薄れていく。周りの空気が重く、最後には全てが闇に飲み込まれた。

翌朝、山田の姿は誰にも見つからなかった。彼の家には、ただ一枚のメモが残されていた。「金曜日の約束を果たす者」。それ以降、金曜日の夜になると、彼の名前を呼ぶ声が街中に響くという噂が広がった。