怖い話集 ホラー

月曜日

月曜日の朝、晴れた空とは裏腹に、田中は重い気持ちで目を覚ました。月曜日はいつも憂鬱で、仕事に行くのが億劫だった。だが、この月曜日は特別だった。夢の中で、彼は不気味な声に「月曜日の午前九時、約束を果たしに来てくれ」と囁かれたのだ。

不安を抱えつつも、田中はいつも通りの通勤路を歩き始めた。道すがら、彼の周りではいつも通りの人々が行き交っていたが、彼の視界の隅に映る影が気になった。誰もいないはずの路地から、白い服を着た少女がじっと見つめていた。

仕事を終えた田中は、夢のことが頭から離れなかった。「九時に約束を果たす」とは一体何のことか。帰宅途中、あの少女が再び彼の前に現れた。今度は彼に向かって手を振り、無言で彼を誘うように歩き出した。

その少女についていくと、見覚えのない古い神社にたどり着いた。薄暗い境内で彼女は立ち止まり、振り返った。目が合った瞬間、彼の心臓が凍りつく。「ここで待っている」と、少女はささやいた。その声は先ほどの夢と同じだった。

恐怖に駆られ、田中は逃げ出そうとしたが、足がすくんで動けなかった。すると、少女は突然、目の前に現れ、指を差した。その先には、古びたお札が貼られた大木があった。「これが、あなたの月曜日の罰」と告げると、少女の姿は消えた。

その瞬間、周囲の空気が変わり、周りの景色が揺れた。田中は自分の身に何が起こっているのかわからず、ただ立ち尽くすしかなかった。月曜日は彼にとって、永遠に終わらない苦痛の始まりとなったのだった。

翌朝、誰も田中の姿を見かけなかった。彼の職場では、月曜日の朝に彼が消えたことを誰も疑問に思わなかった。ただ、彼のデスクの上には一枚の古い名刺が残されていた。「約束を果たす者」とだけ書かれていた。