怖い話集 ホラー

化粧

ある日、美容にこだわる若い女性が、町外れの古びた化粧品店に足を踏み入れた。店内は薄暗く、埃まみれの棚には見慣れない化粧品が並んでいた。その中で、特に目を引いたのが「永遠の美」を謳う古い口紅だった。好奇心に駆られた彼女は、それを手に取った。

店主は不気味な微笑みを浮かべ、「この口紅を使えば、誰もがあなたの美しさに魅了される。しかし、代償がある」と警告した。彼女はそれを無視し、口紅を購入した。

その夜、彼女は鏡の前で口紅を塗った。驚くほど鮮やかな色合いが唇を彩り、まるで自分が別人になったかのような感覚を覚えた。しかし、次の日から周囲の反応が変わった。人々は彼女に夢中になり、振り返り、視線を向ける。しかし、次第に彼女の周りで異常な出来事が起こり始めた。

夜になると、化粧をしたままの自分の顔が鏡から覗くことに気づく。鏡の中の彼女は、自分とはまったく違う、どこか冷たく、邪悪な笑みを浮かべた顔だった。彼女は恐怖に襲われ、口紅を捨てることを決意するが、どうしても手が伸びなかった。

数日後、彼女はついに意を決して口紅を捨てた。その瞬間、彼女の身体が異常な感覚に包まれた。鏡の中の彼女は、ますます美しくなり、しかし、その美しさはどんどん生気を失っていった。彼女は次第に顔色が悪くなり、周囲の人々も彼女から離れていく。

最後には、彼女の姿はどんどん消えていき、化粧を施した鏡の中の顔だけが残った。彼女は永遠の美を手に入れたが、その代償として、自分自身を失ってしまったのだった。