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カビ
しおりを挟む村の外れにある古びた屋敷には、誰も近寄ろうとしなかった。そこには、カビが広がる壁と朽ちた家具が不気味に佇んでいる。数十年前、この屋敷に住んでいた家族が謎の失踪を遂げて以来、村人たちは恐れを抱いていた。
ある晩、好奇心旺盛な青年、健太は、友人たちと共に屋敷に忍び込むことに決めた。「ただのカビだろう」と、仲間たちは笑って言ったが、健太の心には不安が広がっていた。
屋敷の中は薄暗く、湿気が漂っていた。壁に生えた黒いカビは、まるで生きているかのようにうねり、ささやく声が聞こえるような気がした。友人たちは冗談を言い合いながら、奥へと進んでいく。
しかし、次第に異変が起こり始めた。一人が足を滑らせて倒れ、カビの生えた床に手をついた瞬間、彼の腕が黒く染まっていく。「助けて!なんだこれ!」彼の叫び声は、周囲の静けさを破った。
恐怖に駆られた健太たちは、逃げ出そうとするが、扉は固く閉ざされていた。カビが彼らを包み込み、意識を徐々に奪っていく。彼らの目の前に、かつて失踪した家族の姿が現れた。彼らの体は、カビに覆われ、目は虚ろだった。
「私たちもここから出られない…」失踪した母親の声が響く。彼女は、永遠にこの屋敷に閉じ込められていることを悟っていた。カビは、彼らの恐怖を糧に成長し、次の犠牲者を求めていたのだ。
健太は最後の力を振り絞り、仲間を助けようとしたが、カビは彼の意識を覆い尽くし、次第に彼もまた、影の一部になってしまった。村に戻ることはできず、彼らの姿は屋敷の中に永遠に残された。
屋敷の周囲には再び静寂が訪れ、カビはさらに繁殖し、次の犠牲者を待ち続けるのだった。村人たちは、また一人、勇敢な者が近づいてくる日を恐れ、今もその話を語り継ぐのだ。
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