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鏡の向こう
しおりを挟むある日の夜、カオリは友人たちと集まり、怖い話をすることにしました。部屋は暗く、小さなろうそくだけが灯りを提供していました。
友人たちは次々に怖い話を披露していきます。カオリは自分も怖い話を考えなければと焦りを感じながら、思いついた話を話し始めました。
「昔、この町に住んでいた女性がいたんです。彼女は美しかったけれど、内気で人とあまり交流しない存在でした。ある日、彼女が鏡を手に入れたんです。それはとても美しい鏡で、彼女はそれを愛用していたそうです。でも、次第に彼女は変わっていったんですよ。」
友人たちの興味が高まり、カオリは続けます。
「鏡を見る時間が長くなり、彼女は次第に鏡の中の自分に夢中になっていったんです。そして、その鏡の中の自分が彼女に対して異常なほど嫉妬心を抱いているように思えたそうです。彼女が笑うと、鏡の中の自分は悲しそうな顔をしているように見えたそうです。そして、そのうちに彼女の様子がおかしくなっていきました。」
友人たちの中にはゾッとした表情を見せる人もいました。
「ある日、彼女は友人に会う約束をしていました。でも、その日は何もかも上手くいかなくて、鏡の中の自分に話しかけると、その反応がいつもと違ったんだとか。友人は心配になり、彼女の家に行ってみることにしたんです。」
カオリは一瞬休憩し、友人たちの緊張感が高まっているのを感じます。
「彼女の家に着くと、ドアは開いたままでした。彼女の部屋に入ると、そこには彼女が亡くなっている姿がありました。彼女の手には鏡が握られていて、鏡の中の自分も嫉妬の表情をしているように見えたそうです。」
友人たちの中には思わず声を押し殺すような反応があります。
「その後、彼女の家から鏡は消え、どこにも見つかりませんでした。でも、町の噂によると、その鏡はまだどこかに存在していて、時折別の人々に現れると言われています。」
カオリの話が終わると、部屋は静まり返ります。友人たちの誰もが不気味な雰囲気を感じている様子でした。
「ふ、ふざけた話でしょ?」と友人の一人が笑いながら言い、緊張が解けていくようでした。しかし、カオリだけはなんとなく嫌な予感が残っていました。
集まった友人たちはお互いに笑いながら、次第に夜が更けていくのでした。その後、カオリは鏡の前で自分自身を見ることができる度に、なぜか不安を覚えるようになったと言います。
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