怖い話集 ホラー

yunna

文字の大きさ
上 下
78 / 142

冷蔵庫

しおりを挟む

ある晩、私はひとりで家にいました。時刻は既に深夜過ぎ、街の喧騒は静まり返っていました。気が付くと、私は腹が減っていたので、冷蔵庫を覗いて食べ物を探しました。

冷蔵庫の扉を開けると、中にはいくつかの食材と冷凍食品が入っていました。しかし、一番奥にある一つの小さな袋に目が留まりました。それは、私が全く覚えがないような古びた紙に包まれた冷凍食品でした。

不思議に思いつつも、私はその袋を手に取り、紙を解いてみると、そこには古びた手紙が現れました。手紙を開くと、中にはぼやけた文字で次のように書かれていました。

「君へ。これを見ているときには、私はもうこの世にいないかもしれない。私の唯一の願いは、私の過去を知ってもらうこと。この冷凍食品には、私の幸せだった頃の記憶が詰まっている。君にはこれを食べて、私の過去を体験してほしい。どうか、私の思いを受け取ってくれ。」

手紙の内容に戸惑いながらも、私はなぜか不思議な気持ちになりました。そして、何故かその冷凍食品を食べることに決めました。

食べる前に、私は周囲を確認してから一口食べました。すると、突然に部屋が明るくなり、私は自分が知らない場所にいるような感覚に襲われました。

そこは私の家ではなく、古びた家具が並ぶ部屋でした。そして、そこには私とは別の人物がいました。彼は幸せそうに微笑んでいて、私の知らない幸せな過去の一場面が目の前に広がりました。

その人物の姿を見つめるうちに、私は彼が過去の私の親であることに気付きました。彼の傍らには幼い私の姿があり、家族みんなが笑顔で幸せに暮らしている様子が映し出されました。

しかし、喜びと同時に、私の心には不安もよぎりました。何故、こんな幸せな過去を知らなかったのか? なぜ、こんな記憶を封印してしまったのか?

次第に、映像は暗転し、再び私の部屋に戻りました。私はその場にただ立ち尽くし、考え込むばかりでした。

冷蔵庫の中にしまっておくべきだった過去とは、果たしてどのようなものだったのか。そして、あの手紙を書いた人物は、一体誰だったのか。

それ以降、私は冷蔵庫を開けることが怖くなりました。そこには自分の知らない過去が詰まっているかもしれないという不安が常に胸をよぎりました。しかし、一度知ってしまった過去の一部は、永遠に私の心に刻まれたままでした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

視える棺2 ── もう一つの扉

中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、"視えてしまった"者たちの記録である。 影がずれる。 自分ではない"もう一人"が存在する。 そして、見つけたはずのない"棺"が、自分の名前を刻んで待っている——。 前作 『視える棺』 では、「この世に留まるべきではない存在」を視てしまった者たちの恐怖が描かれた。 だが、"視える者"は、それだけでは終わらない。 "棺"に閉じ込められるべきだった者たちは、まだ完全に封じられてはいなかった。 彼らは、"もう一つの扉"を探している。 影を踏んだ者、"13階"に足を踏み入れた者、消えた友人の遺書を見つけた者—— すべての怪異は、"どこかへ繋がる"ために存在していた。 そして、最後の話 『視える棺──最後の欠片』 では、ついに"棺"の正体が明かされる。 "視える棺"とは何だったのか? 視えてしまった者の運命とは? この物語を読んだあなたも、すでに"視えている"のかもしれない——。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
よくよく考えると ん? となるようなお話を書いてゆくつもりです 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

怪異語り 〜世にも奇妙で怖い話〜

ズマ@怪異語り
ホラー
五分で読める、1話完結のホラー短編・怪談集! 信じようと信じまいと、誰かがどこかで体験した怪異。

りんこにあったちょっと怖い話☆

更科りんこ
ホラー
【おいしいスイーツ☆ときどきホラー】 ゆるゆる日常系ホラー小説☆彡 田舎の女子高生りんこと、友だちのれいちゃんが経験する、怖いような怖くないような、ちょっと怖いお話です。 あま~い日常の中に潜むピリリと怖い物語。 おいしいお茶とお菓子をいただきながら、のんびりとお楽しみください。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...