怖い話集 ホラー

掃除

ある夜、一人暮らしの若い女性、エミリーは家の掃除をしていた。彼女は少し片付けが苦手で、いつも部屋が散らかっていたが、この日は気合を入れて徹底的に掃除をすることにした。

時計の針が深夜の12時を指す頃、エミリーはほぼ部屋の片付けが終わっていた。あとは押し入れと、一番片付けが大変なキッチンを残すだけだった。しかし、エミリーは疲れてきたため、しばらく休憩しようと思い、ソファに座りました。

すると、突然、奇妙な音が部屋中に響き渡りました。まるで足音のような音が、廊下や階段を上がってくるような気がしましたが、エミリーは一人しか住んでいないはずなので、誰かが家に侵入してきたのではないかと心配しました。

恐怖心を押さえ込みながらも、エミリーはキッチンに向かいました。キッチンの床には綺麗に掃除されていたのに、今は何かの跡がありました。それは、小さな足跡のようなもので、何者かが泥や汚れを付けて歩いたように見えました。

エミリーの心臓は高鳴り、恐怖の感情が次第に高まっていきました。彼女は部屋をくまなく見回しましたが、何も見つけることはありませんでした。しかし、不気味な音はまだ響いていました。

再び足音が響き渡る中、エミリーは押し入れの扉に目をやりました。何かが中に潜んでいるのではないかという予感が彼女を襲いました。勇気を振り絞り、扉を開けると、そこには何もいませんでした。ただの片付けられた押し入れでした。

不安な気持ちを引きずりながらも、エミリーは再びキッチンに戻りました。すると、壁に向かって血のような液体が滴っているのを見つけました。衝撃の光景に彼女は声を押し殺しました。それはただの水漏れではなく、何かが壁の中から漏れ出しているようでした。

恐怖に震えながらも、エミリーは携帯電話で家主に連絡し、状況を説明しました。家主はすぐに来てくれると言い、エミリーはドアの前で待ちました。

その後、家主と一緒に部屋を調べると、何も異常は見つかりませんでした。足跡や血のような液体も跡形もなく消えてしまっていました。家主は「恐らくあなたの想像によるものだろう」と言い、エミリーも自分が疲れていたために幻覚を見たのだと思い込みました。

しかし、エミリーはその後も不気味な出来事が続くことに気づきました。物が勝手に動く、怪奇な音が聞こえるなど、なんだかおかしな現象が頻発しました。彼女はますます不安になり、やがてはその家から引っ越すことを決意しました。

エミリーが引っ越してからは、怪奇現象は一切起こらなくなりました。しかし、彼女はあの恐怖体験を忘れることができず、それからというもの、掃除に対する苦手意識が一層強くなってしまったのでした。