怖い話集 ホラー

トイレ

ある日、深夜のトイレに行くために目を覚ました。家の中は静まり返っていて、暗闇が部屋を包んでいた。急いで寝室を抜け、廊下を進んでトイレに向かった。

トイレのドアを開けると、不気味な静寂が迎えた。明かりをつけようとスイッチを探すが、何故か見つからない。仕方なく、暗闇の中で用を足そうとすると、突然、背後から小さな声が聞こえた。

「トイレの中にいますよ。」

驚きのあまり、身体が固まってしまった。振り返る勇気も持てず、ただただその声を聞いているしかなかった。

「毎晩、ここで待っています。暗闇の中でひっそりと。」

声はだんだんと近づいてきて、私の耳元でささやかれた。冷たい息が私の頬を撫でるように感じた。

「あなたも私たちと一緒になりたくはないですか？私たちの仲間になって、永遠にここで暮らしましょう。」

不気味な言葉に戦慄が走る。このトイレには、何者かが潜んでいるのだ。逃げ出そうと思い立つが、足元で何かがつかまったような感触があった。

恐怖で震える中、ついに我慢の限界が訪れた。悲鳴を上げながら、トイレのドアに向かって全力で駆け出した。しかし、途中でつまずいて転倒してしまった。

気が付くと、目の前には普通の明るいトイレが広がっていた。心臓がバクバクと高鳴る中、安堵のため息をついた。

「あれは一体何だったんだろう...」

後日、私はその出来事を友人に話すと、友人は苦笑しながら教えてくれた。

「あのトイレ、以前にも幽霊が出ると噂されていたんだよ。でも、私は何度も使ったけど何も起きなかったよ。多分、君が特別なんじゃないかな。」

それ以来、私はそのトイレを避けるようになった。ただし、夜中に怖い話をする時には、そのトイレの話は必ず出てくるのだった。