放課後城探部

てっくん

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百九十二の城

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鐘の丸から廊下橋を渡り、天秤櫓の入口の前にいた。

天秤櫓の入り口は間口が広く入りやすい作りになっていて多くの観光客が天秤櫓に足を運んでいた。。

「天秤櫓は修復を幾度か経ているとは言え、もしも長浜城の大手門からの移築と信用するならば秀吉時代に作られたものということになるわ。」

天護先生は感慨深そうにしている。

確かに豊臣秀吉が作ったものなのならばとんでもなく貴重な建物だと言うことになるけど実際は分かっていないらしい。


「本当にそうであれば良いのですが・・・」

「ほんまやなあ」


あゆみ先輩も訪ちゃんも秀吉時代のものであれば良いと思っているようで秀吉時代のものであれば今でも十分以上に素晴らしい天秤櫓がもっと素晴らしい建物になると言うことなのだろう。

「秀吉が作ったものが移築されたんだったら箔が付きますもんね。」

「まあ、そうかもね。」

先生が苦笑いしてそう答えた。

「確か箔が付くかもしれんな。」

訪ちゃんの反応もそれほど良くない。

あれ?答えを間違えたかな・・・

私が困惑していると先輩が


「確かに誰が作ったかという箔は大事ね。だけど彦根城は既に日本でも有数の名城として十分に箔がついているわ。それよりもこの天秤櫓が長浜城からの移築だったとはっきりしたら今は模造天守しかない長浜城の一端が垣間見れるということのほうが重要なのかもね。」

先輩がそう教えてくれる。

確かに彦根城は日本全国に名を馳せる名城中の名城だ、だから誰が作ったかという箔はそれほど重要ではなく、それよりも長浜城というお城が元はどう言うお城かという事が知れるということの方が重要だということなのだろう。

そう考えると先生が苦笑いするのも当然だ。

「まあ、過去のことを知るのは難しいからね。」

先生はそう言ってみんなを先導するように櫓の中に入っていった。

櫓内部には受付があって受付の前には靴袋が置かれている。

私達はポリバケツに貯められた靴袋を取り出して履いていた靴を袋の中に入れて櫓の床板に足をおいた。

床板は少しひんやりとしていて少し心地良い気がする。

櫓内部は沢山の柱と梁が連結されていてすごくしっかりとした作りなのがすぐに理解できた。

入ってすぐに膝くらいの高さのある敷居があってその少し奥に櫓のに階部部分に登るための急な階段が柱のようにそびえ立っていた。

「なんか変な構造やな・・・」

訪ちゃんが不思議そうな顔で一言そう漏らした。

階段や高い敷居で通り道を態と狭めているいるのは二階に素早く兵隊を配備するためなのかそれとも櫓内部一階に侵入する経路を狭めるためなのだろうかよくわからない構造だ。

配備性を高めると同時に侵入経路を狭めるためなのだろうかよくわからないけど配備性といってもこんな急な階段を重い甲冑を着た兵隊がすぐには登ることはできないし、そう考えると最悪敵が侵入してきたことを考えると内部構造も防衛の手段として考えて作られたのかもしれない。

内部に入ると明かりのない櫓内部はもっと暗いのかと思っていたが外から見ていた以上に窓が広く開放されていて外の光がしっかりと取り込まれていた。

「覗いてみて、ここからだと大堀切と鐘の丸が丸見えでしょ?」

先輩の言葉に従って私と訪ちゃんは鐘の丸を格子窓から覗き込むと鐘の丸はすっかり丸見えになっている。

多くの観光客が鐘の丸の石段を登ってコの字に廊下橋を渡ってくるのがよく見えた。

「こう見ると天秤櫓の防御力の高さがよく分かるでしょ?」

「ほんまやな、攻め手が天秤櫓に背を向けて石段を登るから無防備な背中を集中攻撃できるような作りになってるんやな。」

「今はなにもない鐘の丸だけど当然階段には仕切り門が置かれていたわ。天秤櫓に背を向けながら仕切門を攻撃するのは大きな痛手を覚悟しないといけないわ。石段も多聞櫓で守りを固めているから攻め口が決して多くない彦根城の攻略は至難の業なのよね。」

彦根城の天秤櫓の防御力は攻め手の侵入経路を一点に集中させることから計算されて作られている。

天秤櫓の内部から見下ろす大堀切は私達にその一端を感じさせてくれたのだ。
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