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百八十七の城
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チケットを購入してついに待望の登城ロに入る。
登城口の山道は表門山道と言われていて緩やかな石段になっていた。
訪ちゃんは
「意外としんどい思いして登った記憶があるわ。」
と山道の奥を見つめた。
「緩やかなように見えて流石に防御のためのお城よね。石段が高くなっていて、かつ山道を長く取って緩やかに見せながら実は結構疲労するように作っているのよ。」
あゆみ先輩がそう教えてくれた差の山道に私達は少しずつ歩を進める。
表門山道は木々が周辺に生い茂っていて高い位置にある太陽の光が木漏れ日になってまるで森林浴に来ているような気持ちにさせられた。
先生は甘そうなミルクティーを一口飲むと
「彦根城の山道は堀切としても機能しているのよね。」
と教えてくれた。
堀切って言う言葉は初めて聞いた言葉だがお城用語だという事くらいは私程度でも察しはついた。
「堀切っていうのは山城の堀のことやな。平城やと間に空堀とか水堀で区画を囲って守ることができるけど、山城やと山上から川が流れてないと水が引かれへんから山を削って溝を作って曲輪と曲輪の間を区切るんや。」
訪ちゃんの言う通りだとすると表門山道はどうやら山の上の曲輪と曲輪を区切る溝の役割も果たしているということだ。
私達は今その溝の上を歩いているのだ。
「もともと山城の山道は防御施設としてはかなり優秀だから、そこに堀切の機能を持たせてより堅牢にしているのよ。」
天護先生がそう言ってから指で奥の方に見えてきた櫓を指差した。
「あれが天秤櫓よ。」
「天秤櫓?」
「そう、左右の形がそっくりで形が天秤に似ているから天秤櫓。」
石段の中腹から見て天秤ににた形かは遠目には分からないけど名前の由来からしてそうなのだろう。
「左右全く対象というわけではないのだけどね。」
先輩がそう補足を入れてくれる。
「あの天秤櫓が本丸への入り口なの。」
表門をくぐって本丸への道はかなり近い位置にあったんだ。
「ではここが最終防御地点なのですね。」
そう私が聞くと先生が
「厳密に言うとそうじゃないけどね。」
先生がそう言うと先輩が頷いて
「はい、太鼓門櫓がありますから。ですけど実質は最終防御地点ですね。」
と言ってゆっくりと私達の視線に近づく天秤櫓を見つめた。
天秤櫓は太陽で白く輝いてその勇壮さを私達にアピールしているように見える。
私達が石段の最上段に来ると私達は天秤櫓の石垣の真下にいた。
表門は本丸に近い場所にあるけど最も攻め手の過酷な場所なのだ。
表門から本丸目指して駆け上がっても上部には強固な櫓が頭の上にあってそこからは常に鉄砲の攻撃にさらされる恐ろしい場所だ。
更に天秤櫓と表門は直通ではなく天秤櫓に背を向けて石段を登って初めて天秤櫓の正面に立てるのだ。
「さて、ここからじゃわかりにくいけど」
と言って先生は私達の登ってきた石段の奥を指差した。
「私の指先の奥には大手門に向かう石段があって、視線の左手には鐘の丸に入るための石段があるの。表門から大手門は直通になっているのだけれどこのように大きく堀切を切ってあえて石段にして攻め手を必ず天秤櫓の真下に誘導しているのよ。」
「なるほど、大手門と表門を破ってもこの天秤櫓の大堀切で攻め手が一点に集中するからそこで集中攻撃するんやな。」
訪ちゃんが大きく真ん中に切られている広場を見てそう言った。
「そう、しかも攻め手は天秤櫓に向かうためには必ず鐘の丸に入ってからでないといけないから天秤櫓に背を向けて鐘の丸の門を攻撃しなければならないのがポイントよね。」
先輩がそう言って訪ちゃんの言葉に反応する。
「堀切って区画を区切ると同時にあえて通りやすくしてそこに攻め手を集中させて誘導する役割もあるじゃない。彦根城の表門山道と大手山道は山道と言う形にすることで見事に堀切の持つ仕事を全て果たしているのよ。」
先輩にそう言われると天秤櫓が見た目だけにも十分すごい建物なのにもっと凄い権威のある建物に見えてくる。
「彦根城のこの天秤櫓の大堀切は彦根城の生命線でもあり、佐和山口多聞櫓に続く第二の見どころよ。存分に楽しみなさい。」
先生は楽しそうにそう言った。
お城を巡っている時の先生はなんだか授業中のお硬い感じの雰囲気や普段の自由気ままの雰囲気ともまた違って先輩と同じようなお城にのめり込んでいるようなそんな雰囲気を感じさせる。
先生はいろんな雰囲気を使い分けるミステリアスな女性だけど一緒にお城を巡ってまたミステリアス度合いを上げたような気がした。
登城口の山道は表門山道と言われていて緩やかな石段になっていた。
訪ちゃんは
「意外としんどい思いして登った記憶があるわ。」
と山道の奥を見つめた。
「緩やかなように見えて流石に防御のためのお城よね。石段が高くなっていて、かつ山道を長く取って緩やかに見せながら実は結構疲労するように作っているのよ。」
あゆみ先輩がそう教えてくれた差の山道に私達は少しずつ歩を進める。
表門山道は木々が周辺に生い茂っていて高い位置にある太陽の光が木漏れ日になってまるで森林浴に来ているような気持ちにさせられた。
先生は甘そうなミルクティーを一口飲むと
「彦根城の山道は堀切としても機能しているのよね。」
と教えてくれた。
堀切って言う言葉は初めて聞いた言葉だがお城用語だという事くらいは私程度でも察しはついた。
「堀切っていうのは山城の堀のことやな。平城やと間に空堀とか水堀で区画を囲って守ることができるけど、山城やと山上から川が流れてないと水が引かれへんから山を削って溝を作って曲輪と曲輪の間を区切るんや。」
訪ちゃんの言う通りだとすると表門山道はどうやら山の上の曲輪と曲輪を区切る溝の役割も果たしているということだ。
私達は今その溝の上を歩いているのだ。
「もともと山城の山道は防御施設としてはかなり優秀だから、そこに堀切の機能を持たせてより堅牢にしているのよ。」
天護先生がそう言ってから指で奥の方に見えてきた櫓を指差した。
「あれが天秤櫓よ。」
「天秤櫓?」
「そう、左右の形がそっくりで形が天秤に似ているから天秤櫓。」
石段の中腹から見て天秤ににた形かは遠目には分からないけど名前の由来からしてそうなのだろう。
「左右全く対象というわけではないのだけどね。」
先輩がそう補足を入れてくれる。
「あの天秤櫓が本丸への入り口なの。」
表門をくぐって本丸への道はかなり近い位置にあったんだ。
「ではここが最終防御地点なのですね。」
そう私が聞くと先生が
「厳密に言うとそうじゃないけどね。」
先生がそう言うと先輩が頷いて
「はい、太鼓門櫓がありますから。ですけど実質は最終防御地点ですね。」
と言ってゆっくりと私達の視線に近づく天秤櫓を見つめた。
天秤櫓は太陽で白く輝いてその勇壮さを私達にアピールしているように見える。
私達が石段の最上段に来ると私達は天秤櫓の石垣の真下にいた。
表門は本丸に近い場所にあるけど最も攻め手の過酷な場所なのだ。
表門から本丸目指して駆け上がっても上部には強固な櫓が頭の上にあってそこからは常に鉄砲の攻撃にさらされる恐ろしい場所だ。
更に天秤櫓と表門は直通ではなく天秤櫓に背を向けて石段を登って初めて天秤櫓の正面に立てるのだ。
「さて、ここからじゃわかりにくいけど」
と言って先生は私達の登ってきた石段の奥を指差した。
「私の指先の奥には大手門に向かう石段があって、視線の左手には鐘の丸に入るための石段があるの。表門から大手門は直通になっているのだけれどこのように大きく堀切を切ってあえて石段にして攻め手を必ず天秤櫓の真下に誘導しているのよ。」
「なるほど、大手門と表門を破ってもこの天秤櫓の大堀切で攻め手が一点に集中するからそこで集中攻撃するんやな。」
訪ちゃんが大きく真ん中に切られている広場を見てそう言った。
「そう、しかも攻め手は天秤櫓に向かうためには必ず鐘の丸に入ってからでないといけないから天秤櫓に背を向けて鐘の丸の門を攻撃しなければならないのがポイントよね。」
先輩がそう言って訪ちゃんの言葉に反応する。
「堀切って区画を区切ると同時にあえて通りやすくしてそこに攻め手を集中させて誘導する役割もあるじゃない。彦根城の表門山道と大手山道は山道と言う形にすることで見事に堀切の持つ仕事を全て果たしているのよ。」
先輩にそう言われると天秤櫓が見た目だけにも十分すごい建物なのにもっと凄い権威のある建物に見えてくる。
「彦根城のこの天秤櫓の大堀切は彦根城の生命線でもあり、佐和山口多聞櫓に続く第二の見どころよ。存分に楽しみなさい。」
先生は楽しそうにそう言った。
お城を巡っている時の先生はなんだか授業中のお硬い感じの雰囲気や普段の自由気ままの雰囲気ともまた違って先輩と同じようなお城にのめり込んでいるようなそんな雰囲気を感じさせる。
先生はいろんな雰囲気を使い分けるミステリアスな女性だけど一緒にお城を巡ってまたミステリアス度合いを上げたような気がした。
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