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百六十八の城
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あゆみ先輩達と目的地のお城を決めると約束した日の夜、私は夕食を食べると自室の机に置いてあるタブレットの画面とにらめっこをしていた。
見応えがあって面白そうな城・・・
スルスルと指でスクロールしながらgogoruの検索画面を見つめてはタップしてあれでもないこれでもないとぶつぶつと独り言をつぶやく。
目の前のタブレットはお父さんが比較的画面の大きな検索機器もあったほうが良かろうということで中学3年生になった時に新宿の淀の橋電気で購入してくれたものだった。
その時お父さんは受験前の娘へのプレゼントということで結構張り切って5万くらいするTonyの軽くて薄いタブレットを購入してくれたのだが使い勝手が良くて結構気に入っていて自室ではなにか検索する時はタブレットを使用していた。
そう言えば薄いのがメリットだと言うのにお母さんが落として壊したら大変だと言って、私がいない時間を見計らってネズミーの耳が着いたピンク色のそこそこ分厚いケースを被せてしまったため薄いというメリットが薄らいでしまい悲しい気持ちにさせられたのを思い出した・・・
あの頃のお母さんはネズミーグッズにハマっていて、ガチャガチャで手に入れてきたのか食玩なのか、ある日私がいない時に机の上に手のひらサイズのネズミーの人形を置いた。
はじめは可愛いと思ってお母さんにありがとうと伝えたら、その日を境に毎日毎日色んなポーズのネズミーが置かれるようになっていった。
しかもご丁寧に増やす時は私が机の隅に置いたネズミーをきれいに並べるのだ。
そして最後には16体のネズミーに私の机のタブレットを取り囲ませてメモ帳に「大切なタブレットは俺たちが守る!」って書き置きしていた・・・って思い出した!
恐らくネズミーガチャガチャの全てのシリーズが揃ったであろう最後の日に私のタブレットにネズミーの大きな耳が付いたのだ!
思い出しただけでなんだかイライラとして来る。
そう言えばついでに、16体のネズミー達は私がタブレットに耳が付いたイライラを我慢しながら静かにダンボールに締まったのを思い出した。
とかそんなしょうもない事を考えているとだんだんと検索の指が止まってしまう。
そう言えばお城の検索していると関西のお城で検索上位に来るのはほとんど大阪城と姫路城だった。
姫路城は行ったことが無いし写真で見るだけで物凄い日本のお城感が出ていて特別感があることは理解できるのだが、なぜだか写真を見ているだけで行くのは今じゃない、そんな気持ちにさせられた。
恐らく姫路城は日本人なら全くを城に興味がなくても知っているであろうお城だ。
私も名前くらいは知っている。
そう、姫路城は日本人であれば一度は行っておかなければならないお城だ。
それなのに理由はわからないが今は行くべき城じゃないと私の中の何かがそう言っていた。
だけど姫路城が今行くべきじゃないのなら私はどうしたら良いのか・・・
私がそんなふうに悩んでいるとスマホがブーブーと振動して音を立てる。
私は側に置いていたスマホの画面を開くとホーム画面にSNSからのメッセージが通知されていた。
訪ちゃんからだ。
『今日いまからTVでやる昔のドブリ映画みるん?』
私が頭を悩ませていると言うのに訪ちゃんはのんきにドブリの映画を見るというのか・・・
まあ、私が頭を悩ませるのと訪ちゃんがドブリの映画を見るのと何の関係もないのだが今の私にはそんな余裕がないのだ。
私『今色々考え中で見れない・・・😢』
そう簡単に返すとほとんど待たずに訪ちゃんから返事が来る。
訪ちゃんは兎に角返信が早いのだ。
ドブリ見てるのでは・・・?
訪『そうなんや😅』
私『うん』
訪『もしかして昼のこと?』
私『どこに行けば良いのか分からない・・・😱』
訪『困った時の姫路城やで😃』
私『それもいいけど今は違う』
私『今は行くなと私の心の何かが言っているのだ・・・』
訪『なんやよう分からんけど・・・😅』
訪『そんなに真剣に悩まんとドブリ見て頭を空っぽにして考えたらどうや』
訪『"向かいのアポロ"やってるで😊』
訪ちゃんが視聴している『向かいのアポロ』は、およそ30年近く前の映画なのに未だ放送する度に視聴率が稼げるという伝説の映画で、二人の小さな姉妹アイとマイが引越し先の向かいの家に住む幻の人物アポロとアポロのアフロヘアーから生まれた黒い毛玉の真っ黒髪助との交流を優しいタッチで描いた怪奇ハートフルムービーだ。
昔小さな頃に両親と一緒にTVで見たことがあるけど、私にとってはアフロのアポロがなんだかとっても怖くて泣き出した記憶しかない。
今見たら楽しいのだろうか・・・
私は少し考えてから
私『アポロ怖くない?😱』
と触れてはいけないと思いながらも送る。
ドブリの作品にケチを付けるのは人によっては逆鱗に触れることになるので勇気がいるのだ。
だけどこれだけははっきりしておかなければならない・・・
なぜだか私の中でわけのわからない使命感がそう言っていた。
訪『怖いで!😃』
訪ちゃんの返事は素早い、そしてアポロが怖いのは訪ちゃんにとっても当たり前のことだったのだ。
それよりも顔文字が笑顔なのがよくわからないが・・・
訪『でも見た目は怖いけど中身は優しいっていうのがギャップがあってええんやで。😊』
訪ちゃんが言うにはどうやらアポロの良さはギャップ萌えなのだ。
見た目はアフロで色黒でヤンキーっぽいスカジャンを着ているおっさんでも、接してみると見た目に反して朴訥として優しくて天然なところが良いということなのだろうか?
だからドブリ最大のマスコットになることが出来たのだ。
私『中身がマスコット性に溢れているんだね・・・😅』
訪『そやで!😄』
訪『そう言えばヒコ太郎今も元気にしてるかな?』
私『ヒコ太郎?』
訪『そや、ヒコ太郎。』
訪『彦根城のマスコットキャラや。物凄いかわええんやで😍』
訪ちゃんの返事にタブレットで画像検索をかける。
するとそこには愛らしいゆるキャラの画像がたくさん立ち並んでいたのだ。
wikiで検索するとヒコ太郎はゆるキャラ黎明期を支えてきた伝説のゆるキャラだった。
私『見たいです。』
私は何も考えずに自然にそう返信していた。
訪『見に行こう!』
私『はい😊』
私のお城どこに行くか問題はアポロのお陰で一瞬で解決した。
その後、私は"向かいのアポロ"を視聴したけどやっぱりアポロはキモかった。
見応えがあって面白そうな城・・・
スルスルと指でスクロールしながらgogoruの検索画面を見つめてはタップしてあれでもないこれでもないとぶつぶつと独り言をつぶやく。
目の前のタブレットはお父さんが比較的画面の大きな検索機器もあったほうが良かろうということで中学3年生になった時に新宿の淀の橋電気で購入してくれたものだった。
その時お父さんは受験前の娘へのプレゼントということで結構張り切って5万くらいするTonyの軽くて薄いタブレットを購入してくれたのだが使い勝手が良くて結構気に入っていて自室ではなにか検索する時はタブレットを使用していた。
そう言えば薄いのがメリットだと言うのにお母さんが落として壊したら大変だと言って、私がいない時間を見計らってネズミーの耳が着いたピンク色のそこそこ分厚いケースを被せてしまったため薄いというメリットが薄らいでしまい悲しい気持ちにさせられたのを思い出した・・・
あの頃のお母さんはネズミーグッズにハマっていて、ガチャガチャで手に入れてきたのか食玩なのか、ある日私がいない時に机の上に手のひらサイズのネズミーの人形を置いた。
はじめは可愛いと思ってお母さんにありがとうと伝えたら、その日を境に毎日毎日色んなポーズのネズミーが置かれるようになっていった。
しかもご丁寧に増やす時は私が机の隅に置いたネズミーをきれいに並べるのだ。
そして最後には16体のネズミーに私の机のタブレットを取り囲ませてメモ帳に「大切なタブレットは俺たちが守る!」って書き置きしていた・・・って思い出した!
恐らくネズミーガチャガチャの全てのシリーズが揃ったであろう最後の日に私のタブレットにネズミーの大きな耳が付いたのだ!
思い出しただけでなんだかイライラとして来る。
そう言えばついでに、16体のネズミー達は私がタブレットに耳が付いたイライラを我慢しながら静かにダンボールに締まったのを思い出した。
とかそんなしょうもない事を考えているとだんだんと検索の指が止まってしまう。
そう言えばお城の検索していると関西のお城で検索上位に来るのはほとんど大阪城と姫路城だった。
姫路城は行ったことが無いし写真で見るだけで物凄い日本のお城感が出ていて特別感があることは理解できるのだが、なぜだか写真を見ているだけで行くのは今じゃない、そんな気持ちにさせられた。
恐らく姫路城は日本人なら全くを城に興味がなくても知っているであろうお城だ。
私も名前くらいは知っている。
そう、姫路城は日本人であれば一度は行っておかなければならないお城だ。
それなのに理由はわからないが今は行くべき城じゃないと私の中の何かがそう言っていた。
だけど姫路城が今行くべきじゃないのなら私はどうしたら良いのか・・・
私がそんなふうに悩んでいるとスマホがブーブーと振動して音を立てる。
私は側に置いていたスマホの画面を開くとホーム画面にSNSからのメッセージが通知されていた。
訪ちゃんからだ。
『今日いまからTVでやる昔のドブリ映画みるん?』
私が頭を悩ませていると言うのに訪ちゃんはのんきにドブリの映画を見るというのか・・・
まあ、私が頭を悩ませるのと訪ちゃんがドブリの映画を見るのと何の関係もないのだが今の私にはそんな余裕がないのだ。
私『今色々考え中で見れない・・・😢』
そう簡単に返すとほとんど待たずに訪ちゃんから返事が来る。
訪ちゃんは兎に角返信が早いのだ。
ドブリ見てるのでは・・・?
訪『そうなんや😅』
私『うん』
訪『もしかして昼のこと?』
私『どこに行けば良いのか分からない・・・😱』
訪『困った時の姫路城やで😃』
私『それもいいけど今は違う』
私『今は行くなと私の心の何かが言っているのだ・・・』
訪『なんやよう分からんけど・・・😅』
訪『そんなに真剣に悩まんとドブリ見て頭を空っぽにして考えたらどうや』
訪『"向かいのアポロ"やってるで😊』
訪ちゃんが視聴している『向かいのアポロ』は、およそ30年近く前の映画なのに未だ放送する度に視聴率が稼げるという伝説の映画で、二人の小さな姉妹アイとマイが引越し先の向かいの家に住む幻の人物アポロとアポロのアフロヘアーから生まれた黒い毛玉の真っ黒髪助との交流を優しいタッチで描いた怪奇ハートフルムービーだ。
昔小さな頃に両親と一緒にTVで見たことがあるけど、私にとってはアフロのアポロがなんだかとっても怖くて泣き出した記憶しかない。
今見たら楽しいのだろうか・・・
私は少し考えてから
私『アポロ怖くない?😱』
と触れてはいけないと思いながらも送る。
ドブリの作品にケチを付けるのは人によっては逆鱗に触れることになるので勇気がいるのだ。
だけどこれだけははっきりしておかなければならない・・・
なぜだか私の中でわけのわからない使命感がそう言っていた。
訪『怖いで!😃』
訪ちゃんの返事は素早い、そしてアポロが怖いのは訪ちゃんにとっても当たり前のことだったのだ。
それよりも顔文字が笑顔なのがよくわからないが・・・
訪『でも見た目は怖いけど中身は優しいっていうのがギャップがあってええんやで。😊』
訪ちゃんが言うにはどうやらアポロの良さはギャップ萌えなのだ。
見た目はアフロで色黒でヤンキーっぽいスカジャンを着ているおっさんでも、接してみると見た目に反して朴訥として優しくて天然なところが良いということなのだろうか?
だからドブリ最大のマスコットになることが出来たのだ。
私『中身がマスコット性に溢れているんだね・・・😅』
訪『そやで!😄』
訪『そう言えばヒコ太郎今も元気にしてるかな?』
私『ヒコ太郎?』
訪『そや、ヒコ太郎。』
訪『彦根城のマスコットキャラや。物凄いかわええんやで😍』
訪ちゃんの返事にタブレットで画像検索をかける。
するとそこには愛らしいゆるキャラの画像がたくさん立ち並んでいたのだ。
wikiで検索するとヒコ太郎はゆるキャラ黎明期を支えてきた伝説のゆるキャラだった。
私『見たいです。』
私は何も考えずに自然にそう返信していた。
訪『見に行こう!』
私『はい😊』
私のお城どこに行くか問題はアポロのお陰で一瞬で解決した。
その後、私は"向かいのアポロ"を視聴したけどやっぱりアポロはキモかった。
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