放課後城探部

てっくん

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百四十二の城

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満を持して楠門を潜る。

初めての天守だということで私の楠門を潜るための第一歩は力が入っていてなんだか一歩を踏み出した瞬間にズドンという音がしたような気がする。

少なくとも私の心の中ではそう言う音が鳴り響いたような気がした。

「なんか気合が入ってる気がするな?」

私はよほど物凄い顔をしていたのだろうか、訪ちゃんが私の雰囲気を読み取って茶化してくる。

「そやったそやった、うちも初めて入った天守はそんな感じで目をキラキラ輝かせてなあ、なんか力が入って眉間に皺寄せてたわ。」

訪ちゃんは私の眉間をウリウリと指差してそう言った。

私は恥ずかしくなって眉間のシワを咄嗟に隠す。

「恥ずかしいよ・・・」

私が恥ずかしそうにしているのを見て訪ちゃんは更にウリウリと私の手のひらに指を突き立てた。

「ほらほら、天守に足踏み入れて嬉しいんちゃうか?」

訪ちゃんの力が徐々に強くなってきてグイグイと押されるよう感じになって段々と中腰になってしまうがそれにもお構いなしに

「ほらほら、嬉しんやろ?嬉しいっていうてみ?」

と訪ちゃんの圧が段々と強くなってきて私はついにしゃがみ込むような形になってしまった。

「たっ・・・訪ちゃん・・・ちょっと!圧が!圧が!」

「ええがなええがな、照れんでも・・・」

私が遂にお尻が地面に付きそうになった瞬間訪ちゃんの頭からペシリと言う音が聞こえる。

先輩が訪ちゃんの頭を手のひらで叩いたのだ。

「いだ!」

訪ちゃんは大げさに叫んで後頭部を押さえる。

「馬鹿やってるんじゃないわよ。」

先輩は呆れた顔で尋ねちゃんを嗜めて

「行くわよ。」

と私の手を取って立たせた後、石段を登って天守の中庭から三重の大天守を見上げた。

訪ちゃんは若干涙目になりながら

「行こっか・・・」

と私を促す。

私は訪ちゃんと一緒に先輩の後を追った。

楠門の先にある石段を上がると目線から左手には二基の櫓、右手には大きく大天守が聳え、その左手に小天守が聳えていた。

三重三階のそれほど大きくない櫓なのに間近で見ると物凄く大きく感じる。

初めて登楼する天守だけに初心者感覚としても大きく感じた。

そう言えば連立式天守内部は視線に入る白壁は全てが櫓だったはずだ。

連立式天守は天守櫓を含めて4基の櫓を壁で連結してるわけではない。

多聞櫓と言う長屋風の通路で大天守、小天守、二基の櫓と連結しているのだ。

だから天守内部に入って中庭に立つと連立式天守の攻撃的な顔を知ることが出来てより天守の威容が増したような気がした。

そう言った感覚も相まって私の錯覚が三重の天守を大きく見せているのだろうか?

「どう、外で見る天守と中で見る天守印象が変わるでしょ?」

「外から見る天守も良かったですが、やっぱり今から天守に入るんだなって思うとなんだかテンションが上がってきたような気がしますね。」

私は月並な答えを返す。

先輩は私のそんな答えでも嬉しそうだった。

「和歌山城は沢山の顔を持つ天守だけど連立式の天守も内部と外部でガラリと印象が変わるわ。下層からいろんな顔を楽しめて石垣の勉強にもなって、一回の登城で何度も楽しいのが和歌山城の魅力よ。それは天守も同じだわ。」

「そのようですね。」

夏の高い位置のある強い光の太陽が和歌山城の銅瓦がより緑色を濃くして私の目に色鮮やかに映えているような気がした。
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