放課後城探部

てっくん

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出会いと大阪城

二十の城

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私は昨日まで全く歴史やお城に興味がなかった。

なのに今私は歴史博物館れきしはくぶつかんの内部でお城を眺めている。

人はどういう理由で何に興味を持つかは分からない、全てはたずねちゃんや虎口こぐち先輩のおかげだった。

人の影響えいきょうは人に革新かくしんをもたらすんだと考えたら私はこの二人との出会いを本当に大切にしたいと思った。

私がお城を眺めてポーっとしていると訪ちゃんがその様子に気づいて

「さぐみんはたまにポーっと考え事して思考が停止してしまう時があるな。」

と笑った。

「そうかな、まあ昔から時々妄想もうそうの世界に飛び立つとかはよく言われるけど・・・」

「城下さんは考え深い人なのね。感受性かんじゅせいも豊かよ。そうじゃなければ訪が鉄砲を構える真似まねをしたくらいであんなに悩んだりしないもの。」

虎口先輩は私を良い風にとらえてくれているようだった。

『先輩、私はそこまで深く考えて悩んだわけじゃないんですよ・・・』

先輩はほんと私の事を肯定的こうていてきに捉えてくれるが、肯定的に捉えすぎて過剰評価かじょうひょうかされていないかとても心配になる。

「さぐみんがポーっとしてたらうちが起こす役目したるわ。いつでもポケーっとしたらええで。」

訪ちゃんはグッと親指を立てた。

「ポーッとはするけどポケーとならないよ!」

私はなんだか変な否定をしてしまった。

「どっちでも似たようなもんやがな。」

訪ちゃんがそう言うと二人して声を出して笑ってしまった。

虎口先輩はシーッと人差し指を唇に当てて私達をなだめた。

私はこのまま三人でずっとお城を眺めていたい気持ちになってしまっていたが、この大阪城を見渡せる踊り場は結構来館者に人気があるスポットで通る人が必ず立ち止まるからあまり長居もしていられない気がしていた。

虎口先輩は慣れたもので、ある程度私に興味を与えたことを確認すると

「そろそろ次の階に向かいましょうか。」

うながしてくれた。

私は名残惜なごりおしく感じながら窓から離れようとすると

「次のエスカレーターでも見れるからな。」

訪ちゃんはそう教えてくれた。



エスカレーターを降りて次のコーナーに行くと目の前には昔の街のジオラマがおいてあった。

先輩はそれを眺めながら

「このジオラマは昔の堺の街を表現しているらしいわ。」

そう教えてくれた。

「外国人がいますね。」

私は2体の外国人の人形をさしてそう言った。

「中世の堺は環濠都市かんごうとしとして栄えただけでなく有力な港町としても栄えていたの。この堺を基盤きばんとして大阪は商都として栄えていくのよ。この2体の人形は堺をキリスト教で教化しに来た宣教師ね。」

キリスト教の宣教師、日本では中世にはもうキリスト教が布教されていたんだ。

そう言えば日本史の授業で勉強したっけ・・・

私は曖昧あいまいな記憶を呼び出して宣教師の名前を思い出そうとする。

「フ・・・フランシルコさんでしたっけ。」

「汁粉って!」

ブハッと訪ちゃんは私の答えに吹き出してしまった。

「城下さんはやっぱり面白い子ね。でも無理してボケなくても大丈夫よ。私もボケとかツッコミとかは苦手だから。それにここは博物館だから・・・ね。」

虎口先輩はやっぱり変な勘違いをして私を窘める。

私は何故か変な汗を流しながら


『先輩・・・それは違うんですぅ・・・』

と心のなかで訴えていた。

「フランシスコ・ザビエルや。この人は流石に歴史の授業でもテストでも出てくるからさぐみんも知ってるはずやで。」

訪ちゃんは笑いをこらえながら教えてくれた。

『もう私のプライドは粉々だよ・・・』

私はミリ単位のプライドを粉々に破壊されて、きっと目には小さな涙を浮かべていた。

「フランシスコ・ザビエルはポルトガルからの依頼を受けてイエズス会から派遣された宣教師で、ポルトガルからアフリカの喜望峰きぼうほうを抜けて、マレーシアに上陸して宣教をしたあと、東シナ海を航海して鹿児島に上陸したのよ。」

私は世界地図を頭に浮かべながらザビエルさんが旅した航路をなんとなく思い浮かべる。

当時は蒸気機関じょうききかんすら無い時代だから、さすがの私でもそれが想像を絶する長旅だということは想像できた。

「とんでもない旅を繰り返して日本に上陸したんですね。」

私は神妙な顔になっていた。

「そうね、とんでもない長旅だわ、彼がポルトガルのリスボンから日本に上陸した頃にはもう既に8年から9年ほど時が流れていたのよ。この人形たちのように堺に来たのはその1年後の年末だったわ。このジオラマの人形は堺に来たばかりのフランシスコ・ザビエルの一行を表しているみたいね。」

虎口先輩の丁寧な説明に私はザビエル人形の顔が疲れているように見えた。

「長旅お疲れさまでした。」

私は人形にねぎらいの言葉を掛けていた。
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