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待っていろよ、優勝賞品!
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それは、前魔王の豪邸に滞在し始めて数日経ったころのことだった。
「ヨシマサよ、祭のメインイベントにわらわたちも参加するぞ」
「だが断る」
意気揚々と提案してきたセシリアに、俺はカメラのレンズを拭く手を止めないままNOをつきつけた。
ふむ……。
この曇りのないレンズ、美しい。
まるで俺の心のようだ。
「ギトギトに汚れて曇りまくった目をして、何を考えとるのじゃ。それよりも、祭のメインイベントに出るぞ」
「俺は忙しいんだ。そんなものに出ている暇はない」
再びピシャリと拒絶し、次のレンズを拭き始める。
まあ、正直なところ、そろそろ来るとは思っていたんだけどな。
祭のメインイベントって、あれだろ?
ファイアドラゴンとかいう、聞くだけで身の毛もよだつようなバケモノ狩りに行くっていうキチガイイベント。
このトラブルメーカーがそんなイベントを見逃すわけないからな。絶対どっかで仕掛けてくると思っていたさ。
それ故に、俺も返すべき答えを数日前から決めていた。
そう。つまり――なんでそんなものに参加せねばならんのじゃ、と……。
「この競技はチーム戦らしくてのう。三人一組で一匹のファイアドラゴンを狩ることになる。これはもう出るしかあるまいて」
「勝手に話を進めるな。出ないと言っているだろうが」
「ああ、エントリーの手続きなら安心するのじゃ。わらわ、お主、アンデルスの三人ということで、さっき手続きをしてきた。チーム名は『セシリアと愉快な仲間たち』じゃ!」
「人の話を聞けや、ゴルァ! てか、勝手にエントリーしてきてんじゃねえよ。さっさと取り消してきなさい」
「ん? 無理じゃよ。この競技は一度エントリーしたら取り消せんし、逃げられん。エントリーには強力な魔法の契約を使用しているからな」
「なんですとーっ!?」
なんてことしてくれたんだ、このクソガキ。
――って、よく見たらいつの間にか右手の甲に魔法陣みたいなもの浮かんでるし。もしかしてこれが、魔法の契約ってやつか!?
まったくこいつは、トラブル持ち込む以外に能はないのかよ!
あと、どうでもいいがこのやり取り、最初に元の世界へ帰れないと言われた時のことを思い出すな……。
つまりこのクソガキは、あの時から変わらず最悪だってことだな。
「参考までに聞くが、逃げ出すとどうなる?」
「その者にとって一番嫌な呪いがかかるとか言っておったな。まあ、安心せい。お主ならどうせ『一生モテなくなる呪い』とか、その類じゃろう。今と大して変わらんわい」
「ビッグな問題だわ、クソ邪神!」
参加すればDEATH。
参加しなければ一生モテない。
なんだ、この究極の選択は!
過酷すぎるだろう!
「参加すればいいだけの話じゃろうが。第一、お主ならファイアドラゴン相手でも死にはしないじゃろう」
「それはある意味拷問だと何回言えばわかるのだ、鳥頭」
「それにな、わらわたち三人なら優勝も夢ではないぞ。なんたってわらわたちは、『キ○キの世代』と呼ぶにふさわしい、オンリーワンの役割をこなせる三人じゃからな!」
「その自信はどこから湧いてくるんだ。変な電波でも受信してるのか」
きっと最近、動画サイトか何かで某バスケ漫画のアニメでも見たのだろうな。
影響されやすいヤツだ。
それにしても……ほうほう、そうですか。
『キ○キの世代』ですか。
俺にはチンドン屋か何かの一団にしか見えないけどな。
「ちなみに、チームにおける俺の役割は?」
「囮」
「いらんわ、そんな役割」
この間のダンジョンの時とまったく同じじゃないか。
最悪だな、このクソ邪神。
2~3回くたばればいいのに。
つうか、てめえが囮をしろ。
「ちなみにお前は?」
「逃げ惑うお主を間近で笑い飛ば――エールを送る係じゃ」
「ふん縛ってドラゴンの餌にしてやるよ」
確か物置にロープがあったはずだな。
ちょっと借りておこう。
まあ、それは置いといて――。
俺が囮でこいつが見ているだけってことは、前魔王がフィニッシャーってことか。
見た目優男で記憶を失う前はかなりのチキンだったようだが、強いのか、あいつ。
「うんにゃ、はっきり言って素の実力はお主とトントンといったところじゃな。わらわからの魔力供給がなくなった今となっては、ガチの戦力として考えた場合、お主の方がよっぽど強いじゃろう」
「ダメじゃん。じゃあ、あいつは何するんだよ」
「あ~、わらわの荷物持ち?」
「…………」
囮とお荷物とお荷物の荷物持ち。
フッ……。詰んだな。
「安心せい! ほれ、『サルでもわかる! レメゲドン』でも使えば、ファイアドラゴンくらいちょっちょいのちょいじゃ」
「魔法使う前に、おいしくいただかれなければな」
お気楽極楽に笑うセシリアへ、冷静なツッコミを入れておく。
とりあえず食われる時は、まずこいつを差し出すようにしよう。
魔法が使えなくなって逆転の目がなくなるが、少なくともこいつより長く生きていたい。
「文句の多い男じゃな。――しかし、これを聞いたらお主も黙ってはいられないじゃろう」
フフン、と無い胸を張るセシリア。
なんだ?
優勝したら賞品か賞金でも出るとかそんな感じか?
あいにくだが、俺はそれくらいで動くほど安い男では――
「なんとこのファイアドラゴン狩り! 一番大きな獲物を仕留めたチームは、祭の後夜祭でミスコンの優勝者と会食&ダンスを踊る権利がもらえる!」
「さて、効率的にドラゴンを狩る方法を検討するとしようか。セシリアよ、使えそうな魔導書を見繕ってくれ」
レンズ拭きもそこそこに、俺は碇○ンドウのように机に肘を付き、セシリアを見る。
狩り本番まで、残された時間はあとわずかだ。
役立たず二人を抱えたまま勝てる方策を、すぐに立案しなければなるまい。
「……作戦通りとはいえ、若干引くくらいのやる気じゃのう」
「何を言うか。俺はいつだってやる気の塊だ」
神聖な祭りに参加するのだ。
ふざけた態度を取ることは村の人々に対して失礼。
義理と人情、礼節と礼儀をわきまえた漢、それが俺だ。
「合法的に美女と食事をし、あまつさえ腰に手を回せる機会を逃してなるものか!」
そしてあわよくば……ムフフ♪
「相変わらず建前というものを使えないヤツだのう。あと、その顔をどうにかせよ。一発で牢屋にぶちこまれそうな危ない面になっておるぞ」
おっといけない。
逸る気持ちが顔に出てしまったようだ。
それにしても、逮捕されてしまう程のイケメンフェイスだったか。
フッ……。
正に『美しいことは罪』ということだな。
「ああ、うん。もう何でもよいわ。――ともかく、祭の最終日は開けておくのじゃぞ」
「任せておけ。このチート魔王が必ず優勝をもぎ取ってやる」
「どうせ優勝したところで、オチは見えておるがな……(ボソリ)」
呆れ顔のセシリアに、不敵な笑みで頷き返す。
なんか失礼なことを呟いていたような気もするが、まあキチガイ邪神の言うことだ。気にする必要はあるまい。
さーて、それじゃあサクサクっと優勝してくるとしますか。
そして、ミスコン優勝の美女とキャッキャウフフ……。
フフフ……。
オラ、ワクワクが止まらねえ。
待っていろよ、俺のカワイコちゃん!
「ヨシマサよ、祭のメインイベントにわらわたちも参加するぞ」
「だが断る」
意気揚々と提案してきたセシリアに、俺はカメラのレンズを拭く手を止めないままNOをつきつけた。
ふむ……。
この曇りのないレンズ、美しい。
まるで俺の心のようだ。
「ギトギトに汚れて曇りまくった目をして、何を考えとるのじゃ。それよりも、祭のメインイベントに出るぞ」
「俺は忙しいんだ。そんなものに出ている暇はない」
再びピシャリと拒絶し、次のレンズを拭き始める。
まあ、正直なところ、そろそろ来るとは思っていたんだけどな。
祭のメインイベントって、あれだろ?
ファイアドラゴンとかいう、聞くだけで身の毛もよだつようなバケモノ狩りに行くっていうキチガイイベント。
このトラブルメーカーがそんなイベントを見逃すわけないからな。絶対どっかで仕掛けてくると思っていたさ。
それ故に、俺も返すべき答えを数日前から決めていた。
そう。つまり――なんでそんなものに参加せねばならんのじゃ、と……。
「この競技はチーム戦らしくてのう。三人一組で一匹のファイアドラゴンを狩ることになる。これはもう出るしかあるまいて」
「勝手に話を進めるな。出ないと言っているだろうが」
「ああ、エントリーの手続きなら安心するのじゃ。わらわ、お主、アンデルスの三人ということで、さっき手続きをしてきた。チーム名は『セシリアと愉快な仲間たち』じゃ!」
「人の話を聞けや、ゴルァ! てか、勝手にエントリーしてきてんじゃねえよ。さっさと取り消してきなさい」
「ん? 無理じゃよ。この競技は一度エントリーしたら取り消せんし、逃げられん。エントリーには強力な魔法の契約を使用しているからな」
「なんですとーっ!?」
なんてことしてくれたんだ、このクソガキ。
――って、よく見たらいつの間にか右手の甲に魔法陣みたいなもの浮かんでるし。もしかしてこれが、魔法の契約ってやつか!?
まったくこいつは、トラブル持ち込む以外に能はないのかよ!
あと、どうでもいいがこのやり取り、最初に元の世界へ帰れないと言われた時のことを思い出すな……。
つまりこのクソガキは、あの時から変わらず最悪だってことだな。
「参考までに聞くが、逃げ出すとどうなる?」
「その者にとって一番嫌な呪いがかかるとか言っておったな。まあ、安心せい。お主ならどうせ『一生モテなくなる呪い』とか、その類じゃろう。今と大して変わらんわい」
「ビッグな問題だわ、クソ邪神!」
参加すればDEATH。
参加しなければ一生モテない。
なんだ、この究極の選択は!
過酷すぎるだろう!
「参加すればいいだけの話じゃろうが。第一、お主ならファイアドラゴン相手でも死にはしないじゃろう」
「それはある意味拷問だと何回言えばわかるのだ、鳥頭」
「それにな、わらわたち三人なら優勝も夢ではないぞ。なんたってわらわたちは、『キ○キの世代』と呼ぶにふさわしい、オンリーワンの役割をこなせる三人じゃからな!」
「その自信はどこから湧いてくるんだ。変な電波でも受信してるのか」
きっと最近、動画サイトか何かで某バスケ漫画のアニメでも見たのだろうな。
影響されやすいヤツだ。
それにしても……ほうほう、そうですか。
『キ○キの世代』ですか。
俺にはチンドン屋か何かの一団にしか見えないけどな。
「ちなみに、チームにおける俺の役割は?」
「囮」
「いらんわ、そんな役割」
この間のダンジョンの時とまったく同じじゃないか。
最悪だな、このクソ邪神。
2~3回くたばればいいのに。
つうか、てめえが囮をしろ。
「ちなみにお前は?」
「逃げ惑うお主を間近で笑い飛ば――エールを送る係じゃ」
「ふん縛ってドラゴンの餌にしてやるよ」
確か物置にロープがあったはずだな。
ちょっと借りておこう。
まあ、それは置いといて――。
俺が囮でこいつが見ているだけってことは、前魔王がフィニッシャーってことか。
見た目優男で記憶を失う前はかなりのチキンだったようだが、強いのか、あいつ。
「うんにゃ、はっきり言って素の実力はお主とトントンといったところじゃな。わらわからの魔力供給がなくなった今となっては、ガチの戦力として考えた場合、お主の方がよっぽど強いじゃろう」
「ダメじゃん。じゃあ、あいつは何するんだよ」
「あ~、わらわの荷物持ち?」
「…………」
囮とお荷物とお荷物の荷物持ち。
フッ……。詰んだな。
「安心せい! ほれ、『サルでもわかる! レメゲドン』でも使えば、ファイアドラゴンくらいちょっちょいのちょいじゃ」
「魔法使う前に、おいしくいただかれなければな」
お気楽極楽に笑うセシリアへ、冷静なツッコミを入れておく。
とりあえず食われる時は、まずこいつを差し出すようにしよう。
魔法が使えなくなって逆転の目がなくなるが、少なくともこいつより長く生きていたい。
「文句の多い男じゃな。――しかし、これを聞いたらお主も黙ってはいられないじゃろう」
フフン、と無い胸を張るセシリア。
なんだ?
優勝したら賞品か賞金でも出るとかそんな感じか?
あいにくだが、俺はそれくらいで動くほど安い男では――
「なんとこのファイアドラゴン狩り! 一番大きな獲物を仕留めたチームは、祭の後夜祭でミスコンの優勝者と会食&ダンスを踊る権利がもらえる!」
「さて、効率的にドラゴンを狩る方法を検討するとしようか。セシリアよ、使えそうな魔導書を見繕ってくれ」
レンズ拭きもそこそこに、俺は碇○ンドウのように机に肘を付き、セシリアを見る。
狩り本番まで、残された時間はあとわずかだ。
役立たず二人を抱えたまま勝てる方策を、すぐに立案しなければなるまい。
「……作戦通りとはいえ、若干引くくらいのやる気じゃのう」
「何を言うか。俺はいつだってやる気の塊だ」
神聖な祭りに参加するのだ。
ふざけた態度を取ることは村の人々に対して失礼。
義理と人情、礼節と礼儀をわきまえた漢、それが俺だ。
「合法的に美女と食事をし、あまつさえ腰に手を回せる機会を逃してなるものか!」
そしてあわよくば……ムフフ♪
「相変わらず建前というものを使えないヤツだのう。あと、その顔をどうにかせよ。一発で牢屋にぶちこまれそうな危ない面になっておるぞ」
おっといけない。
逸る気持ちが顔に出てしまったようだ。
それにしても、逮捕されてしまう程のイケメンフェイスだったか。
フッ……。
正に『美しいことは罪』ということだな。
「ああ、うん。もう何でもよいわ。――ともかく、祭の最終日は開けておくのじゃぞ」
「任せておけ。このチート魔王が必ず優勝をもぎ取ってやる」
「どうせ優勝したところで、オチは見えておるがな……(ボソリ)」
呆れ顔のセシリアに、不敵な笑みで頷き返す。
なんか失礼なことを呟いていたような気もするが、まあキチガイ邪神の言うことだ。気にする必要はあるまい。
さーて、それじゃあサクサクっと優勝してくるとしますか。
そして、ミスコン優勝の美女とキャッキャウフフ……。
フフフ……。
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