94 / 113
ビバ☆ミスコン!
しおりを挟む
「そうか……。セシリアも、また旅立ってしまうかもしれないのか……」
俺が密かに気合を入れていると、今度は前魔王が迷子になった子供のような顔でしょんぼりする。
くっ!
なぜか知らんが、微妙にこいつをいじめているような気分になってしまうな。
記憶を失って一人右も左もわからず生きる前魔王から、唯一のパートナーを取り上げる。
これってどんな鬼畜外道の所業だよ、って気になるな……。
ううむ。
なんだろうな、このそこはかとない罪悪感は。
――って、あれ。
でも、それを言ったら俺なんて、隣の理不尽なロリ邪神に異世界召喚された挙げ句、元の世界にも帰れなくなってしまったわけで……。
しかも、ここでこのアホ邪神を失うとリアルに路頭に迷うわけで……。
……………………。
うん。
人生の転落っぷりと言うか、ひどさ加減で言ったら、多分俺の方が上だな。
このクソ邪神から受けた被害という意味でも、俺の方が同情に値するだろう。
てか、よく考えたら前魔王って村の人気者っぽいじゃん。右も左も~どころか頼りになるご近所さんたくさんじゃん。
なら、遠慮することもないか。
すまん、前魔王。
そういうわけなので、この世界における俺の命綱でもあるこのMPタンクはもらっていく。
損害賠償やら精神的苦痛に対する慰謝料やら、こいつには耳揃えて魔力で払ってもらわにゃならないんで。
悪いが諦めてくれ。
と、考えをまとめた俺が改めて前魔王の方を見ると……。
「まあ、どうしてもわらわといっしょに暮らしたいと言うなら、考えてやらんこともないからな。精々わらわをここに留めておけるよう、努力することじゃな!」
「わかったよ、セシリア! 僕もこの数カ月で少しは成長したからね。最高のおもてなしをして、君がここに残ってくれるよう頑張るよ!」
「うむ、苦しゅうないぞ。よきに計らえ。ナッハッハ!」
調子に乗ったセシリアが、前魔王にふっかけていた。
このアホ邪神、余計なことを言いおってからに……。
とりあえず、これはやばいぞ。
前魔王ピュアッピュアだから、もうやる気満々じゃないの。
お前ここに留めるために、ホスピタリティ精神の限りを尽くす気満点じゃないの!
下手をすると、この移り気だけど基本チヤホヤされるの大好きなこの邪神が心変わりを起こしてしまう。
せっかくお里帰りしたところで悪いが、滞在なんて言わずにさっさと旅に出てしまうのが得策かもしれん。
そうとなったら、早速準備を……。
「来週からは村を上げての祭もあるし、二人とも楽しみにしているといいよ。メインイベント以外にも面白い催しがいくつかあって、特にミスコンは出場者が美人揃いだから近隣の国や村から人もたくさん――」
「それはいかんなぁ! 早速カメラの準備をせねば!」
そうとなったら、早速準備を始めよう!
確か万桜号にカメラがあったはず。あと、セシリアもビデオカメラを持っていた気がするな。いや、この際撮影器具をありったけ貸してもらおう。一瞬の取り逃しもないよう、万端の体勢で臨まねばならないからな。
さあ、忙しくなってきたぞ!
……………………。
――は? セシリアの心変わり?
そんなの知るか。
今はミスコンの方が大事だ!
いいか、諸君。
男には、いかなる危機を顧みず、全身全霊を持って立ち向かわなければならない時があるんじゃい!? (←覚悟を決めた漢の目)
もはや鼻歌まじりのルンルン気分で、撮影器具の準備をする。
こうして、俺とセシリアのウルス村滞在が決定したのであった。
ああ~、ミスコン楽しみだな~♡
俺が密かに気合を入れていると、今度は前魔王が迷子になった子供のような顔でしょんぼりする。
くっ!
なぜか知らんが、微妙にこいつをいじめているような気分になってしまうな。
記憶を失って一人右も左もわからず生きる前魔王から、唯一のパートナーを取り上げる。
これってどんな鬼畜外道の所業だよ、って気になるな……。
ううむ。
なんだろうな、このそこはかとない罪悪感は。
――って、あれ。
でも、それを言ったら俺なんて、隣の理不尽なロリ邪神に異世界召喚された挙げ句、元の世界にも帰れなくなってしまったわけで……。
しかも、ここでこのアホ邪神を失うとリアルに路頭に迷うわけで……。
……………………。
うん。
人生の転落っぷりと言うか、ひどさ加減で言ったら、多分俺の方が上だな。
このクソ邪神から受けた被害という意味でも、俺の方が同情に値するだろう。
てか、よく考えたら前魔王って村の人気者っぽいじゃん。右も左も~どころか頼りになるご近所さんたくさんじゃん。
なら、遠慮することもないか。
すまん、前魔王。
そういうわけなので、この世界における俺の命綱でもあるこのMPタンクはもらっていく。
損害賠償やら精神的苦痛に対する慰謝料やら、こいつには耳揃えて魔力で払ってもらわにゃならないんで。
悪いが諦めてくれ。
と、考えをまとめた俺が改めて前魔王の方を見ると……。
「まあ、どうしてもわらわといっしょに暮らしたいと言うなら、考えてやらんこともないからな。精々わらわをここに留めておけるよう、努力することじゃな!」
「わかったよ、セシリア! 僕もこの数カ月で少しは成長したからね。最高のおもてなしをして、君がここに残ってくれるよう頑張るよ!」
「うむ、苦しゅうないぞ。よきに計らえ。ナッハッハ!」
調子に乗ったセシリアが、前魔王にふっかけていた。
このアホ邪神、余計なことを言いおってからに……。
とりあえず、これはやばいぞ。
前魔王ピュアッピュアだから、もうやる気満々じゃないの。
お前ここに留めるために、ホスピタリティ精神の限りを尽くす気満点じゃないの!
下手をすると、この移り気だけど基本チヤホヤされるの大好きなこの邪神が心変わりを起こしてしまう。
せっかくお里帰りしたところで悪いが、滞在なんて言わずにさっさと旅に出てしまうのが得策かもしれん。
そうとなったら、早速準備を……。
「来週からは村を上げての祭もあるし、二人とも楽しみにしているといいよ。メインイベント以外にも面白い催しがいくつかあって、特にミスコンは出場者が美人揃いだから近隣の国や村から人もたくさん――」
「それはいかんなぁ! 早速カメラの準備をせねば!」
そうとなったら、早速準備を始めよう!
確か万桜号にカメラがあったはず。あと、セシリアもビデオカメラを持っていた気がするな。いや、この際撮影器具をありったけ貸してもらおう。一瞬の取り逃しもないよう、万端の体勢で臨まねばならないからな。
さあ、忙しくなってきたぞ!
……………………。
――は? セシリアの心変わり?
そんなの知るか。
今はミスコンの方が大事だ!
いいか、諸君。
男には、いかなる危機を顧みず、全身全霊を持って立ち向かわなければならない時があるんじゃい!? (←覚悟を決めた漢の目)
もはや鼻歌まじりのルンルン気分で、撮影器具の準備をする。
こうして、俺とセシリアのウルス村滞在が決定したのであった。
ああ~、ミスコン楽しみだな~♡
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

異世界でのんびり暮らしたい!?
日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?
解放
かひけつ
ファンタジー
ある少年は、抗った。
謎の施設。謎の検査。謎の生活。
頭が狂いそうになりながらも施設から出る方法を模索する。
使えるものを活かした反抗計画とその結末は……。
ある科学者は悩んだ。
時折、無力感や後悔の念が身を焦がす。
利口が故に、自己嫌悪に陥ってしまう。
悩みぬいた末に出した結論は……。
ある貴族は覚悟を決めた。
貴ばれる血族であるが故のプライド、
それ相応とは言い難い重しをつけさせられる。
一家を背負い込む覚悟を、世界を調和させることを……。
あるモノは、嘆いた。
自由にはなれない……。
そう思わせる程、管理されてしまった世界。
ここには情すら……ないのかもしれない……。
諦めかけていた、でも、希望が見えた気がした……。
その希望は現状を打開し、解放してくれるのだろうか?

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~
斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている
酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる