93 / 113
俺のMPタンクは誰にも渡さねえぞ!(byヨシマサ)
しおりを挟む
豪邸の中に招かれた俺たちは、シャンデリアが釣り下がる客間でお茶を出されていた。
……外観も外観だったが、内観はさらにすげぇな。
これでもかってくらいに豪華な造りになっていやがる。
マジで城だ、城。
マリー・アントワネットとかが住んでそうな感じ?
今俺とセシリアが座っているソファーだって、ロイヤルファミリーとかが使っているものと遜色ないくらいに上等な代物だ。
ロイヤルファミリーがどんな家具使っているかなんて知らないけど……。
「お主、この材料費とかどうしたのじゃ?」
「ああ、ここにあるのは大抵、村でいらなくなった家具とかをもらって、自分で改造したんだ。だから、ほとんどタダ同然だよ」
うん。
ある意味、魔法より魔法っぽいことしてんな、こいつ。
てか、使い古しをどう改造したらこんな高級品っぽいものができるんだ。
前魔王、素でチートキャラだわ。今流行りの生産系チート。
「で、セシリア。村に帰ってきたということは、またここに住むってことだよね」
前魔王が、ニッコリと笑ってセシリアを見る。
なんつうか、親が返ってきたことを喜ぶ赤ん坊のような笑顔だな。
屈託がないっつうか、無垢っつうか。
前魔王にとって、記憶がなくなってからずっと世話をしてくれたセシリアは、正に親みたいなものってことか。
童女を親扱いする優男風イケメン……。
なんだろう、どこかいけないにおいがするな。
ただ、前魔王の笑顔を見たセシリアはまたどこか寂しそうな顔をして……、
「あ、いや……。ここでもう一度暮らすかは、その……」
と言って、俺の方を見た。
――ん?
なんで俺の方を見るんだ?
「あ! もしかして、ヨシマサ君のことを心配しているのかな。安心しなよ、セシリア。この通り家も大きくなったからね。ヨシマサ君さえよければ、ここに住んでもらって構わないよ」
賑やかになって楽しくなりそうだね、とまたもや屈託なく笑う前魔王。
いや、住んでもらっても構わないって言われてもな……。
「ああ~、せっかくの申し出は有り難いんだが、俺はやりたいことがあってな。まだ旅を続けるつもりだから、ここに住むことはできない」
「そうなんだ。それは残念だね」
言葉通り、心底残念な顔をする前魔王。
裏表のないヤツだな、ホント。
「――けど、しばらくこの村にいたいのも事実だ。だから……しばらくこの家に滞在させてもらってもいいか?」
「うん! もちろんだよ」
俺の申し出に、前魔王が一転してパァっと顔を輝かせる。
なんかそこまで喜ばれると、こっちもどう反応していいか困っちまうな。
悪い気はしないが、どうにも調子が狂うぜ。
それにしてもこいつ、本当に小さな子供みたいなやつだな。
勇者もそんなとこがあるやつだったけど、こいつはそのさらに上。
記憶を失ったことで、本当に子供の心を持っているように見える。
「……すまんが、わらわもまたここで暮らすかは、もう少し考えさせてくれ」
俺が前魔王を観察していたら、なんか絞り出すような声が横から響いた。
言うまでもなく、セシリアの声だ。
こいつにしては珍しく歯切れが悪い感じだな。
まあ、こいつ飽きっぽいからな。
豪邸暮らしはしたいけど、ぶっちゃけつまらなそうだから旅もしたいってところか?
と言っても、こいつがどうしようと俺には関係ない。
ここに留まりたいって言うなら、それはそれでありだろう。
なんたってここには、記憶を失っているとはいえ旧知のパートナーがいるわけだし……。
――って、いや、ちょっと待てよ。
これって、俺にとって微妙にピンチなんじゃないか?
俺ってば、こいつがいないと魔法が使えないわけでして……。つまり、こいつが豪邸に目が眩んで旅をやめるなんて言い出したら、これから先の身を守る手段と大道芸人という職を一辺に失ってしまうじゃないか!
これはまずい。
俺の安全と明日からのご飯のために、何としてもこいつが旅に出たいと思うように仕向けなくては……。
――と思ったら。
「ほれ、わらわって隠し切れんカリスマ性を持った根っからのアイドル気質じゃし? 一所に留まるのは、世界の損失と言うか、何と言うか? そんなわけで、わらわはヨシマサが村を離れる時まで答えは保留じゃ」
ふんぞり返って妄言を捲し立てるセシリア。
ふぅ……。
よかった、こいつがイタイ感じの勘違いガールで。
保留とか言っているが、この分ならここに留まるってこともなさそうだ。
ひとまず、安心。
ただ、こいつはアホな上に移り気だからな。滞在中に考えが変わらないよう、常に注意しておかねば……。
……外観も外観だったが、内観はさらにすげぇな。
これでもかってくらいに豪華な造りになっていやがる。
マジで城だ、城。
マリー・アントワネットとかが住んでそうな感じ?
今俺とセシリアが座っているソファーだって、ロイヤルファミリーとかが使っているものと遜色ないくらいに上等な代物だ。
ロイヤルファミリーがどんな家具使っているかなんて知らないけど……。
「お主、この材料費とかどうしたのじゃ?」
「ああ、ここにあるのは大抵、村でいらなくなった家具とかをもらって、自分で改造したんだ。だから、ほとんどタダ同然だよ」
うん。
ある意味、魔法より魔法っぽいことしてんな、こいつ。
てか、使い古しをどう改造したらこんな高級品っぽいものができるんだ。
前魔王、素でチートキャラだわ。今流行りの生産系チート。
「で、セシリア。村に帰ってきたということは、またここに住むってことだよね」
前魔王が、ニッコリと笑ってセシリアを見る。
なんつうか、親が返ってきたことを喜ぶ赤ん坊のような笑顔だな。
屈託がないっつうか、無垢っつうか。
前魔王にとって、記憶がなくなってからずっと世話をしてくれたセシリアは、正に親みたいなものってことか。
童女を親扱いする優男風イケメン……。
なんだろう、どこかいけないにおいがするな。
ただ、前魔王の笑顔を見たセシリアはまたどこか寂しそうな顔をして……、
「あ、いや……。ここでもう一度暮らすかは、その……」
と言って、俺の方を見た。
――ん?
なんで俺の方を見るんだ?
「あ! もしかして、ヨシマサ君のことを心配しているのかな。安心しなよ、セシリア。この通り家も大きくなったからね。ヨシマサ君さえよければ、ここに住んでもらって構わないよ」
賑やかになって楽しくなりそうだね、とまたもや屈託なく笑う前魔王。
いや、住んでもらっても構わないって言われてもな……。
「ああ~、せっかくの申し出は有り難いんだが、俺はやりたいことがあってな。まだ旅を続けるつもりだから、ここに住むことはできない」
「そうなんだ。それは残念だね」
言葉通り、心底残念な顔をする前魔王。
裏表のないヤツだな、ホント。
「――けど、しばらくこの村にいたいのも事実だ。だから……しばらくこの家に滞在させてもらってもいいか?」
「うん! もちろんだよ」
俺の申し出に、前魔王が一転してパァっと顔を輝かせる。
なんかそこまで喜ばれると、こっちもどう反応していいか困っちまうな。
悪い気はしないが、どうにも調子が狂うぜ。
それにしてもこいつ、本当に小さな子供みたいなやつだな。
勇者もそんなとこがあるやつだったけど、こいつはそのさらに上。
記憶を失ったことで、本当に子供の心を持っているように見える。
「……すまんが、わらわもまたここで暮らすかは、もう少し考えさせてくれ」
俺が前魔王を観察していたら、なんか絞り出すような声が横から響いた。
言うまでもなく、セシリアの声だ。
こいつにしては珍しく歯切れが悪い感じだな。
まあ、こいつ飽きっぽいからな。
豪邸暮らしはしたいけど、ぶっちゃけつまらなそうだから旅もしたいってところか?
と言っても、こいつがどうしようと俺には関係ない。
ここに留まりたいって言うなら、それはそれでありだろう。
なんたってここには、記憶を失っているとはいえ旧知のパートナーがいるわけだし……。
――って、いや、ちょっと待てよ。
これって、俺にとって微妙にピンチなんじゃないか?
俺ってば、こいつがいないと魔法が使えないわけでして……。つまり、こいつが豪邸に目が眩んで旅をやめるなんて言い出したら、これから先の身を守る手段と大道芸人という職を一辺に失ってしまうじゃないか!
これはまずい。
俺の安全と明日からのご飯のために、何としてもこいつが旅に出たいと思うように仕向けなくては……。
――と思ったら。
「ほれ、わらわって隠し切れんカリスマ性を持った根っからのアイドル気質じゃし? 一所に留まるのは、世界の損失と言うか、何と言うか? そんなわけで、わらわはヨシマサが村を離れる時まで答えは保留じゃ」
ふんぞり返って妄言を捲し立てるセシリア。
ふぅ……。
よかった、こいつがイタイ感じの勘違いガールで。
保留とか言っているが、この分ならここに留まるってこともなさそうだ。
ひとまず、安心。
ただ、こいつはアホな上に移り気だからな。滞在中に考えが変わらないよう、常に注意しておかねば……。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】

竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~
月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。
大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう!
忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。
で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。
酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。
異世界にて、タケノコになっちゃった!
「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」
いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。
でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。
というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。
竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。
めざせ! 快適生活と世界征服?
竹林王に、私はなる!

レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる