63 / 113
とりあえず全力で謝っといた。
しおりを挟む
「そもそも僕たちは、魔王軍と戦う気なんて、これっぽっちもなかったんだよ。魔王軍は知性あるモンスターや魔族を束ねてくれる、貴重な組織だったからね。そんな有用な組織、好き好んで壊そうと思うわけないだろう?」
さも当然と言わんばかりに首を傾げる勇者殿。
いや、まあ、言われてみれば、その通り……なのか?
魔王アンデルスの時代にどんな統治をしていたのか知らんから、何とも言いようがないんだが……。
「あれ? じゃあ、なんで全面戦争なんてしたんだ。結果的にお前ら、魔王軍を壊滅にまで追い込んだんだろう?」
「いや、僕らは戦争するつもりなんて、これっぽっちもなかったんだけど……。アリオス王国国王の名で同盟を持ちかける親書を出して、その答えを聞きに行こうと思ったら……なんか攻撃されちゃって」
「…………。……ほうほう」
「それで仕方ないから、フレアたちにモンスターをなだめてもらっている内に、僕が直接魔王城に行くことになったんだ。そしたら、さらに勘違いされて魔王から攻撃を受けて……。慌てて跳ね返したら、飛び方が悪くて魔王城の方に行ってしまってね。結果、あんなことに……」
『あんなこと』というのは、魔王がビビッて足滑らせたあげく、記憶飛ばしたってやつだな。
なんか勇者、「僕がもうちょっとうまく立ち回れば、あんなことにはならなかったんだけど……」と反省しきりな様子だ。
こいつ、本当にお人よしだな。さすがの俺も感動してきたぜ。
だけどまあ……うん。
安心しろ、勇者。
お前、たぶん全然悪くねえよ。
悪いとしたら……。
「おい、セシリア」
勇者から視線を外し、隣に座るジャリの方を見る。
速攻で目を逸らされた。
「お前から聞いていた話と、ずいぶん違うんだが。親書ってどういうことだ?」
「いや、それはその、なんというかじゃな……間違えて読む前に薪にくべてしまって……」
目を泳がせまくって、言い訳がましく言うセシリア。
うん、完全に嘘だな。
大方、読んだ後で調子に乗って、「勇者など恐るるに足らず!」とか言いつつ、ちょっかい仕掛けに行ったんだろう。
「なぜわかった!」
大きなお目々をパッチリ見開いて、セシリアが超驚いた顔で俺を見る。
わからいでか!
単純バカでお調子者のお前が考えていることなんて、丸わかりだっつうの!
要するに、徹頭徹尾こちら側が悪かったってことじゃん。
勇者たち、完全にとばっちりじゃん。
調子に乗っていろんな人に迷惑かけた挙句、てめえらが勝手に自滅しただけじゃん!
ホント、何やってんのお前ら?
バカなの? 死ぬの?
人に迷惑かけまくっといて、都合よく話盛ってんじゃねえよ、バカちんが!
――と、それはいい。
こうなった以上、このジャリを叱る前に、まずやるべきことがある。
俺は居住まいを正し、勇者の目を真正面から見つめた。
「アルフレッドよ……」
「ん? どうしたんだい、ヨシマサ。急に改まって」
「うちの馬鹿どもが思いっきり迷惑をかけて、本当にすんませんでした!」
ええ。もうガチで謝りましたよ。これまでの人生で最も真剣に謝りました。
俺、一応このクソガキの保護者ですし。
俺が来る前のこととは言え、ガキの不始末は保護者の責任ですし。
机に額こすり付け、心の中は完全に土下座ですよ。
「え? あ、いや、君に謝ってもらう必要はないんだけど……。ほら、僕にも落ち度はあったわけだし……」
困ったように笑って、何事もなかったかのように許してくれる勇者。
お前、本当にいいやつだな!
イケメンでハーレム主なのに許せちまいそうだよ、俺。
脳内『あいつ絶対許さんリスト』のトップから2位に引き下げしておくよ。(外しはしない。そして、入れ替わりでセシリアがトップだな)
――なんて、俺が感動の渦に飲まれていると……。
「そうじゃぞ、ヨシマサ。元はと言えば、勘違いされるようなことをしてきたこいつらが悪い。お主がそのギリギリ見られる面をテーブルに押し付けることはないぞ――ほぎゃ!」
とりあえず無言でジャリの後頭部に手を当てて、机に叩き付けた。
ほれ、セシリア。
リピート、アフター、ミー。(←激おこ)
「本当にすみませんでした」
「すびばせんでじた……」
「よくできたな。偉いぞ、セシリア。いいか? どんな時も謙虚が一番だ。二度と忘れるなよ、トリ頭」
「いえっさー……」
さすがに心のどこかで、1%くらいは自分たちが悪かったと思っていたのだろう。
普段の生意気振りは鳴りを潜め、セシリアは存外素直に謝った。
うん。わかればいいんだ、わかれば。
「――こいつもこう言っているので、どうか許していただきたい」
「あ……ああ。うん。ぼくらも気にしていないから、その……そろそろ放してあげてよ。ほら……セシリアの額が当たってる部分から、机もひびが入り始めているし……」
勇者の許しも出たので、セシリアを解放してやる。
なんか額から血が間欠泉みたいに噴き出しているが、器用な芸をするやつだ。
まあ、こいつのことだからツバでもつけておけばすぐに治るし、気にしないようにしよう。
ともあれ、こうして俺たち魔王軍(と言っても、今や邪神と魔王の二人だけだが……)と勇者パーティーは、遅ればせながら和平を結んだのだった。
さも当然と言わんばかりに首を傾げる勇者殿。
いや、まあ、言われてみれば、その通り……なのか?
魔王アンデルスの時代にどんな統治をしていたのか知らんから、何とも言いようがないんだが……。
「あれ? じゃあ、なんで全面戦争なんてしたんだ。結果的にお前ら、魔王軍を壊滅にまで追い込んだんだろう?」
「いや、僕らは戦争するつもりなんて、これっぽっちもなかったんだけど……。アリオス王国国王の名で同盟を持ちかける親書を出して、その答えを聞きに行こうと思ったら……なんか攻撃されちゃって」
「…………。……ほうほう」
「それで仕方ないから、フレアたちにモンスターをなだめてもらっている内に、僕が直接魔王城に行くことになったんだ。そしたら、さらに勘違いされて魔王から攻撃を受けて……。慌てて跳ね返したら、飛び方が悪くて魔王城の方に行ってしまってね。結果、あんなことに……」
『あんなこと』というのは、魔王がビビッて足滑らせたあげく、記憶飛ばしたってやつだな。
なんか勇者、「僕がもうちょっとうまく立ち回れば、あんなことにはならなかったんだけど……」と反省しきりな様子だ。
こいつ、本当にお人よしだな。さすがの俺も感動してきたぜ。
だけどまあ……うん。
安心しろ、勇者。
お前、たぶん全然悪くねえよ。
悪いとしたら……。
「おい、セシリア」
勇者から視線を外し、隣に座るジャリの方を見る。
速攻で目を逸らされた。
「お前から聞いていた話と、ずいぶん違うんだが。親書ってどういうことだ?」
「いや、それはその、なんというかじゃな……間違えて読む前に薪にくべてしまって……」
目を泳がせまくって、言い訳がましく言うセシリア。
うん、完全に嘘だな。
大方、読んだ後で調子に乗って、「勇者など恐るるに足らず!」とか言いつつ、ちょっかい仕掛けに行ったんだろう。
「なぜわかった!」
大きなお目々をパッチリ見開いて、セシリアが超驚いた顔で俺を見る。
わからいでか!
単純バカでお調子者のお前が考えていることなんて、丸わかりだっつうの!
要するに、徹頭徹尾こちら側が悪かったってことじゃん。
勇者たち、完全にとばっちりじゃん。
調子に乗っていろんな人に迷惑かけた挙句、てめえらが勝手に自滅しただけじゃん!
ホント、何やってんのお前ら?
バカなの? 死ぬの?
人に迷惑かけまくっといて、都合よく話盛ってんじゃねえよ、バカちんが!
――と、それはいい。
こうなった以上、このジャリを叱る前に、まずやるべきことがある。
俺は居住まいを正し、勇者の目を真正面から見つめた。
「アルフレッドよ……」
「ん? どうしたんだい、ヨシマサ。急に改まって」
「うちの馬鹿どもが思いっきり迷惑をかけて、本当にすんませんでした!」
ええ。もうガチで謝りましたよ。これまでの人生で最も真剣に謝りました。
俺、一応このクソガキの保護者ですし。
俺が来る前のこととは言え、ガキの不始末は保護者の責任ですし。
机に額こすり付け、心の中は完全に土下座ですよ。
「え? あ、いや、君に謝ってもらう必要はないんだけど……。ほら、僕にも落ち度はあったわけだし……」
困ったように笑って、何事もなかったかのように許してくれる勇者。
お前、本当にいいやつだな!
イケメンでハーレム主なのに許せちまいそうだよ、俺。
脳内『あいつ絶対許さんリスト』のトップから2位に引き下げしておくよ。(外しはしない。そして、入れ替わりでセシリアがトップだな)
――なんて、俺が感動の渦に飲まれていると……。
「そうじゃぞ、ヨシマサ。元はと言えば、勘違いされるようなことをしてきたこいつらが悪い。お主がそのギリギリ見られる面をテーブルに押し付けることはないぞ――ほぎゃ!」
とりあえず無言でジャリの後頭部に手を当てて、机に叩き付けた。
ほれ、セシリア。
リピート、アフター、ミー。(←激おこ)
「本当にすみませんでした」
「すびばせんでじた……」
「よくできたな。偉いぞ、セシリア。いいか? どんな時も謙虚が一番だ。二度と忘れるなよ、トリ頭」
「いえっさー……」
さすがに心のどこかで、1%くらいは自分たちが悪かったと思っていたのだろう。
普段の生意気振りは鳴りを潜め、セシリアは存外素直に謝った。
うん。わかればいいんだ、わかれば。
「――こいつもこう言っているので、どうか許していただきたい」
「あ……ああ。うん。ぼくらも気にしていないから、その……そろそろ放してあげてよ。ほら……セシリアの額が当たってる部分から、机もひびが入り始めているし……」
勇者の許しも出たので、セシリアを解放してやる。
なんか額から血が間欠泉みたいに噴き出しているが、器用な芸をするやつだ。
まあ、こいつのことだからツバでもつけておけばすぐに治るし、気にしないようにしよう。
ともあれ、こうして俺たち魔王軍(と言っても、今や邪神と魔王の二人だけだが……)と勇者パーティーは、遅ればせながら和平を結んだのだった。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。
トロ猫
ファンタジー
2025.2月下旬コミックス2巻出荷予定
2024.7月下旬5巻刊行
2024.6月下旬コミックス1巻刊行
2024.1月下旬4巻刊行
2023.12.19 コミカライズ連載スタート
2023.9月下旬三巻刊行
2023.3月30日二巻刊行
2022.11月30日一巻刊行
寺崎美里亜は転生するが、5ヶ月で教会の前に捨てられる。
しかも誰も通らないところに。
あー詰んだ
と思っていたら後に宿屋を営む夫婦に拾われ大好きなお菓子や食べ物のために奮闘する話。
コメント欄を解放しました。
誤字脱字のコメントも受け付けておりますが、必要箇所の修正後コメントは非表示とさせていただきます。また、ストーリーや今後の展開に迫る質問等は返信を控えさせていただきます。
書籍の誤字脱字につきましては近況ボードの『書籍の誤字脱字はここに』にてお願いいたします。
出版社との規約に触れる質問等も基本お答えできない内容が多いですので、ノーコメントまたは非表示にさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる