残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

文字の大きさ
上 下
32 / 113

到着! ヴァーナ公国

しおりを挟む
「着いた~」

 目の前に見えてきた石造りの街並みを前に、俺は疲労いっぱいなヘロヘロ声を上げた。
 スコット村を旅立って早二週間。

 どこまで行っても全く同じ風景の道に精神を病みかけ……。
 溜まったストレスでセシリアと喧嘩し、その度に車から降りて決闘し続け(ちなみに俺の7勝6敗12引き分け。つまり俺の勝利)……。
 途中で妙な化け物に一目ぼれされて、徹夜で逃げ続け……。

「ようやくここまで辿り着いたのう」

「まったくだ。辛く苦しい旅だったぜ」

 助手席に座るセシリアとともに、今日までの日々をしみじみと振り返る。
 思えば、よくもまあここまで無事にたどり着けたものだ。
 ……主に、俺の貞操的な意味で。

 けど、そんなのはもはや過去のことだ。

 さようなら、延々と同じ風景を見続ける毎日。
 こんにちは、人の活気とかわいい女の子との出会いに満ちた素晴らしい国。

「いや、今回も出会いはないと思うぞ。もしくは出会うだけで終わりじゃ。いい加減、悟れ」

 だから、心を読むなと何回も……。

「まあいい。今は目の前のパラダイスが大事だ。――さあ、張り切って乗り込むとするか。上手いメシと客の歓声が俺たちを待っているぜ!」

「うむ! レッツゴーじゃ!」

 二人で『オーッ!』と気勢を上げ、勢い込んでアクセルペダルを踏む。
 いざ行かん。
 夢の国(?)へ!

「そこの怪しい乗り物、止まりなさい!」

「「…………」」

 速攻で国境の守備兵に止められました……。
 ちくしょう。
 国境警備対策を考えんの忘れてた……。


 * * *


「ふぃー……。危なかったな」

 無事に国境線を越え、万桜号の運転席で一息つく。
 ヴァン王国の時みたいに三日間の拘留なんてされたら堪ったもんじゃないからな。
 今回は無事に切り抜けられてよかったぜ。

「あー、そーじゃなー。何事もなくて良かったのー」

「なんだよ、まだ怒ってんのか。さっきから悪かったって謝ってんじゃんか」

「ふーんだ。別に怒ってなんかいないもんねー。わらわ、いつも通りだもんねー」

 プイッとそっぽを向く、我らがお姫様。
 その態度、わかりやすくがっつり怒ってんじゃんか。
 だからさっきから悪かったって言ってるのに。
 こいつも根に持つ奴だな。

 ついでに言えば、別に俺も悪いことしたわけじゃねえし。
 どちらかといったら、必要悪?
 正直、機嫌損ねられても困るっつうか……。
 むしろ逆に、俺の機転を褒めてもらいたいぐらいなんだけどな。

 まあ、そんなことを言っても余計にセシリアの機嫌を損ねるだけだ。
 ここは放っておくに限るだろう。

 ああ、ちなみにセシリアが怒っている理由。
 事の次第は、国境警備隊とのやり取りにある。
 具体的に言うと……そう、こんな感じだな。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

【完結】略奪されるような王子なんていりません! こんな国から出ていきます!

かとるり
恋愛
王子であるグレアムは聖女であるマーガレットと婚約関係にあったが、彼が選んだのはマーガレットの妹のミランダだった。 婚約者に裏切られ、家族からも裏切られたマーガレットは国を見限った。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...