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何の変哲もない旅路は暇だ
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「ヨシマサよ~、わらわ、ものすっご~く飽きたのじゃ~」
スコット村を出てから丸五日。
俺とセシリアは、今日も今日とてまったく景色が変わらない道を万桜号で走っていた。
「の~、ヨ~シ~マ~サ~」
「ええい、うるさい! 何度も言わんでも聞こえとるわ!」
今日何度目になるかわからないクレームを垂れるポンコツ邪神を、一喝して黙らせる。
こいつ、本当に飽きっぽいな。
こんな性分で、よくもまあ「いろんなところ行きたい!」とか言えたもんだ。
第一、飽きてんのはてめえだけじゃねえっつうの。
俺だってこの五日間、お前の「飽きた」コール聞きながら、延々景色が変わらない道で車を走らせ続けてんだぞ。
そろそろこっちもフラストレーションの限界だっつうの。
「ブ~! なんじゃい、邪険にしおって。いいもんね~。一人でネットサーフィンでもしてやるわい! あっかんべー!」
そう言って、異次元収納空間からいつものノートパソコンを取り出すセシリア。
どうやらブックマークをつけてある小説を読んでいるみたいだな。
チッ!
若干うらやましいじゃねえか、こんちくしょう。
俺も久しぶりにネット見てぇよ。
つうか、インターネットにどうつないでいるかは置いておくとして、あのパソコン、どうやって充電してんだ。
昨日も一昨日もコードレスでポチポチやっていやがったが、電源切れる気配さえないぞ。
これも邪神パワーってやつなのか。
(……まあいいや。いや、よくはないけど、どうせまともな答えなんてかえって来やしないし)
そんなことよりも今大事なのは、この旅路の方だろう。
一体あと何日、この変わり映えしない風景を見続ければいいんだ。
「なあ、セシリア。ヴァーナ公国ってあとどれくらいかかるんだ?」
「あん? そんなもの、わらわが知るか」
パソコンから顔も上げず、やや不機嫌気味に答える我らがお姫様。
ほうほう、知らないか。
そうか、そうか。
とりあえずそこの窓から放り出してもいいかな、クソガキ。
「てめえ、ヴァーナ公国がどこにあるかもわからないくせに『行きたい』とかほざいてたのか! ざけんなよ、ゴルァ!!」
「知らんとは言っとらんじゃろうが! この道を北へ進めば、いずれ辿り着くのは確かなのじゃからな!」
「道程がどれくらいか知らない段階で『知っている』とは言わん!」
「なんじゃい、細かいことを気にしおって! 小姑か、お主は。ホント、顔だけじゃなく、心までせせこましいやつじゃのう。そんなんじゃから、お主はモテんのじゃ!」
「言ったなーっ! 決して触れてはいけない、俺の心の繊細かつデリケートな部分に踏み込んできやがったな! もう許さねえ。表へ出ろい!」
「ハン! 望むところじゃ。その貧相な鳥頭に、格の違いというものを教えてやるわい!」
互いにストレスフルな状態で、止める者もなし。
俺は道がちょうど十字路となっているところに車を止め、この旅10度目の決闘をするために表へ出た。
――その瞬間。
「隙ありじゃ。ガウーッ!」
決闘開始の合図もなしに、セシリアが犬歯をむき出して飛びかかってきた。
チッ! 卑怯な!
……とは言ったりしない。
だって、そう言うとこいつ、あとでほっぺたに両手を当てながら超かわいらしく喜んじゃうんだもん。
ぶっちゃけ、そんなの憎たらしいことこの上ないからな。
まあそれに、この手は2度目の決闘の際と同じ。
同じ手が二度通じると思うなよ、馬鹿ガキが!
「あ、道の向こうから勇者が……」
「なんじゃと!」
よし! 動きが止まった。
あっさり引っかかりやがって。どっちが鳥頭だ。
ともあれ――セシリア破れたり!
「嘘だよ、バーカ。――ふんが!」
「ぬわーっ!」
出会ったときと同じく、背負い投げを決める。
フフフ。
いつか夜道で悪漢に襲われている女性を助けて、あわよくばお近づきになるために身に着けたこの柔道。
自宅警備員見習いのロリ邪神ごときに遅れは取らんわ。
スコット村を出てから丸五日。
俺とセシリアは、今日も今日とてまったく景色が変わらない道を万桜号で走っていた。
「の~、ヨ~シ~マ~サ~」
「ええい、うるさい! 何度も言わんでも聞こえとるわ!」
今日何度目になるかわからないクレームを垂れるポンコツ邪神を、一喝して黙らせる。
こいつ、本当に飽きっぽいな。
こんな性分で、よくもまあ「いろんなところ行きたい!」とか言えたもんだ。
第一、飽きてんのはてめえだけじゃねえっつうの。
俺だってこの五日間、お前の「飽きた」コール聞きながら、延々景色が変わらない道で車を走らせ続けてんだぞ。
そろそろこっちもフラストレーションの限界だっつうの。
「ブ~! なんじゃい、邪険にしおって。いいもんね~。一人でネットサーフィンでもしてやるわい! あっかんべー!」
そう言って、異次元収納空間からいつものノートパソコンを取り出すセシリア。
どうやらブックマークをつけてある小説を読んでいるみたいだな。
チッ!
若干うらやましいじゃねえか、こんちくしょう。
俺も久しぶりにネット見てぇよ。
つうか、インターネットにどうつないでいるかは置いておくとして、あのパソコン、どうやって充電してんだ。
昨日も一昨日もコードレスでポチポチやっていやがったが、電源切れる気配さえないぞ。
これも邪神パワーってやつなのか。
(……まあいいや。いや、よくはないけど、どうせまともな答えなんてかえって来やしないし)
そんなことよりも今大事なのは、この旅路の方だろう。
一体あと何日、この変わり映えしない風景を見続ければいいんだ。
「なあ、セシリア。ヴァーナ公国ってあとどれくらいかかるんだ?」
「あん? そんなもの、わらわが知るか」
パソコンから顔も上げず、やや不機嫌気味に答える我らがお姫様。
ほうほう、知らないか。
そうか、そうか。
とりあえずそこの窓から放り出してもいいかな、クソガキ。
「てめえ、ヴァーナ公国がどこにあるかもわからないくせに『行きたい』とかほざいてたのか! ざけんなよ、ゴルァ!!」
「知らんとは言っとらんじゃろうが! この道を北へ進めば、いずれ辿り着くのは確かなのじゃからな!」
「道程がどれくらいか知らない段階で『知っている』とは言わん!」
「なんじゃい、細かいことを気にしおって! 小姑か、お主は。ホント、顔だけじゃなく、心までせせこましいやつじゃのう。そんなんじゃから、お主はモテんのじゃ!」
「言ったなーっ! 決して触れてはいけない、俺の心の繊細かつデリケートな部分に踏み込んできやがったな! もう許さねえ。表へ出ろい!」
「ハン! 望むところじゃ。その貧相な鳥頭に、格の違いというものを教えてやるわい!」
互いにストレスフルな状態で、止める者もなし。
俺は道がちょうど十字路となっているところに車を止め、この旅10度目の決闘をするために表へ出た。
――その瞬間。
「隙ありじゃ。ガウーッ!」
決闘開始の合図もなしに、セシリアが犬歯をむき出して飛びかかってきた。
チッ! 卑怯な!
……とは言ったりしない。
だって、そう言うとこいつ、あとでほっぺたに両手を当てながら超かわいらしく喜んじゃうんだもん。
ぶっちゃけ、そんなの憎たらしいことこの上ないからな。
まあそれに、この手は2度目の決闘の際と同じ。
同じ手が二度通じると思うなよ、馬鹿ガキが!
「あ、道の向こうから勇者が……」
「なんじゃと!」
よし! 動きが止まった。
あっさり引っかかりやがって。どっちが鳥頭だ。
ともあれ――セシリア破れたり!
「嘘だよ、バーカ。――ふんが!」
「ぬわーっ!」
出会ったときと同じく、背負い投げを決める。
フフフ。
いつか夜道で悪漢に襲われている女性を助けて、あわよくばお近づきになるために身に着けたこの柔道。
自宅警備員見習いのロリ邪神ごときに遅れは取らんわ。
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