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意外となんとかなる野宿
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「なあ、セシリア。ヴァン王国ってこの川の先なんだよな。どうすんだよ、これ」
「一応ここから上流へ行けば橋はあるぞ」
「んじゃ、その橋を目指すとするか」
「いや、その必要はないわい。この乗り物は今や世界最強の乗り物じゃ。こんな川くらい余裕で渡れる」
「…………。あっそ」
俺の可愛い万桜号は、いつの間にか人知を超えたよくわからんものに変貌していたらしい。
なんだろうな……。
知らん間に汚されちゃった気分だ。
「ともあれ、川渡りは明日にして今日はここらでキャンプをするぞ。ヨシマサ、メシ~」
「あるか、んなもん。詐欺まがいの方法で呼び出された一般人に何を期待している。お前こそ、なんか持ってないのか?」
「お主の方こそ、わらわに何を期待しておるのじゃ。そんなもん持っていたら、とっくに一人でメシにしておるわ」
やれやれ、これだから素人は~。なんて素振りで呆れるロリ邪神。
つうか、食いもん持っててもオレにくれる気0だったな、こいつ。
最悪すぎる。
「まあよい。食うものがないなら、そこの川から魚でも取ってこればよかろう」
「あいにく釣竿なんか持ってねえぞ」
「まったく使えんのう。――ほれ」
…………。
漁網を投げ渡されました。
「何でこんなもん持ってんだよ! つか、こんなん持ち歩くくらいなら、食べ物の一つくらい持ってろや!」
「細かいことを気にする男だのう。いいからさっさと魚を取ってこい」
腹減った~と喚くセシリアにブツブツと文句を垂れつつ、川岸から網を投げる。
網はそれ自体に魔法でもかかっているのか、想像以上に綺麗に広がって川に落下。
引き上げてみると、魚が十匹ほどかかっていた。
「拍子抜けするほど楽だな。何だか、人間としてダメになりそうな楽さ加減だ」
「ごちゃごちゃ言っとらんで、さっさと調理するぞ。わらわはそろそろ限界じゃ」
包丁とまな板、魚を刺すための串、焚き火用の薪を差し出すセシリアちゃん。
だから、何でそんなもんを持っているくせに、肝心の食べ物を持っていないのだ。
……なんて思っていたら、俺の腹もグルルルと鳴り出した。
やべえ。俺もそろそろ限界が近いかもしれん。
「はあ……。んじゃ、魚さばいとくから、お前はその間に火をおこしておいてくれ」
「心得た」
言うが早いか、セシリアは草原から枯れ葉を集め出した。
それが終わると、テキパキと薪を組んで、焚き火の準備を済ませる。
……意外と手慣れているな。てっきり「できるか、ボケーッ!」くらい言われると思ったのだが。
「魔王軍がわらわとアンデルスだけだった頃は、よくこうして火をおこしておったからな。この手のことは、けっこう得意なのじゃ」
火打石をカチカチやりながら、そんなことを言うセシリア。
どうやらただのポンコツニート神ではなかったようだ。
意外と苦労してきたんだな。
少し見直したぞ。
まあ、この分なら火の方は問題なさそうだ。
んじゃ、俺も魚をさばくとするか。
モテたい一心で身に付けた、板前顔負けの華麗な包丁さばきを見せてやるぜ!
……使い道0だったけどな。
フッ……。何だか切なさが込み上げてきたぜ。
あ、目に心の汗が……。
ともあれ、心の汗と戦いながら、次々と魚をさばいていく。
こうして俺の異世界生活一日目の夜は更けていったのだった。
「一応ここから上流へ行けば橋はあるぞ」
「んじゃ、その橋を目指すとするか」
「いや、その必要はないわい。この乗り物は今や世界最強の乗り物じゃ。こんな川くらい余裕で渡れる」
「…………。あっそ」
俺の可愛い万桜号は、いつの間にか人知を超えたよくわからんものに変貌していたらしい。
なんだろうな……。
知らん間に汚されちゃった気分だ。
「ともあれ、川渡りは明日にして今日はここらでキャンプをするぞ。ヨシマサ、メシ~」
「あるか、んなもん。詐欺まがいの方法で呼び出された一般人に何を期待している。お前こそ、なんか持ってないのか?」
「お主の方こそ、わらわに何を期待しておるのじゃ。そんなもん持っていたら、とっくに一人でメシにしておるわ」
やれやれ、これだから素人は~。なんて素振りで呆れるロリ邪神。
つうか、食いもん持っててもオレにくれる気0だったな、こいつ。
最悪すぎる。
「まあよい。食うものがないなら、そこの川から魚でも取ってこればよかろう」
「あいにく釣竿なんか持ってねえぞ」
「まったく使えんのう。――ほれ」
…………。
漁網を投げ渡されました。
「何でこんなもん持ってんだよ! つか、こんなん持ち歩くくらいなら、食べ物の一つくらい持ってろや!」
「細かいことを気にする男だのう。いいからさっさと魚を取ってこい」
腹減った~と喚くセシリアにブツブツと文句を垂れつつ、川岸から網を投げる。
網はそれ自体に魔法でもかかっているのか、想像以上に綺麗に広がって川に落下。
引き上げてみると、魚が十匹ほどかかっていた。
「拍子抜けするほど楽だな。何だか、人間としてダメになりそうな楽さ加減だ」
「ごちゃごちゃ言っとらんで、さっさと調理するぞ。わらわはそろそろ限界じゃ」
包丁とまな板、魚を刺すための串、焚き火用の薪を差し出すセシリアちゃん。
だから、何でそんなもんを持っているくせに、肝心の食べ物を持っていないのだ。
……なんて思っていたら、俺の腹もグルルルと鳴り出した。
やべえ。俺もそろそろ限界が近いかもしれん。
「はあ……。んじゃ、魚さばいとくから、お前はその間に火をおこしておいてくれ」
「心得た」
言うが早いか、セシリアは草原から枯れ葉を集め出した。
それが終わると、テキパキと薪を組んで、焚き火の準備を済ませる。
……意外と手慣れているな。てっきり「できるか、ボケーッ!」くらい言われると思ったのだが。
「魔王軍がわらわとアンデルスだけだった頃は、よくこうして火をおこしておったからな。この手のことは、けっこう得意なのじゃ」
火打石をカチカチやりながら、そんなことを言うセシリア。
どうやらただのポンコツニート神ではなかったようだ。
意外と苦労してきたんだな。
少し見直したぞ。
まあ、この分なら火の方は問題なさそうだ。
んじゃ、俺も魚をさばくとするか。
モテたい一心で身に付けた、板前顔負けの華麗な包丁さばきを見せてやるぜ!
……使い道0だったけどな。
フッ……。何だか切なさが込み上げてきたぜ。
あ、目に心の汗が……。
ともあれ、心の汗と戦いながら、次々と魚をさばいていく。
こうして俺の異世界生活一日目の夜は更けていったのだった。
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