残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

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魔王軍の活動

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「おいおい、冗談だって。仮にも神様がビビり過ぎだろ」

「バカモノ! 言っていい嘘と悪い嘘があるわ。危うくチビるところじゃったぞ」

 目に涙を溜めまくったロリ邪神。
 しかも、どうやら腰が抜けたらしい。立ち上がることもできずに正座姿勢で喚いている。
 ……どんだけ勇者が恐いんだ、こいつ。
 けど、妙にかわいいんで許す!

 なお、手を貸そうとしたら噛みつかれそうになったのでやめた。
 無茶苦茶根に持っていらっしゃる。

「とりあえず、勇者パーティーがバカ強いことはわかった。――で、結局お前は、何がしたくて俺を呼んだんだ? 勇者を倒したいんじゃないんだろ?」

「当然じゃ。あやつの顔など、もう二度と見たくないわい!」

 力説された。
 ホント、こいつは何をしたいんだ。

「まあよい。聞きたいというなら教えてやる。お前を呼んだのは世界征服するためでも、勇者を倒すためでもない。――強いて言えば、勇者にいやがらせするためじゃ」

「…………。……は?」

「いや、つまりな、普通に戦ってもあやつらには勝てんから、別の方法で一矢報いようというわけじゃ。んで、わらわ一人だと何かと不便じゃから、使えそうな手駒――ではなく、新たな魔王を擁立したというわけじゃ」

 わらわ、頭いい!
 とでも言いたげな顔だな、おい。
 つうか、一矢報いるだけでいいのか。しかも、いやがらせって……。
 志し低すぎだろ、このロリ神。
 体もちんまいが、心はさらにちっちぇよ。
 あと、誰が手駒だ、誰が。

「で、具体的には何をしようと?」

「とりあえず何でも屋でもやって、人々の好感度を集めるのじゃ。こう、地域に愛されるキャラというか? 草の根活動というやつじゃな」

「…………」

 それでいいのか、邪神よ。
 一周半くらい回って、もはや単なるいい人だぞ、それ。
 邪神と魔王の名が泣くぞ。

「そうやって地域に根ざした活動を行い、勇者パーティーの人気を少しずつ奪っていく。どうじゃ、すばらしい嫌がらせじゃろ?」

「……うん。もう何でもいいや」

 どうせ、もう帰れないみたいだし。
 勇者と戦えとか言わないなら、もうそれでいいや。

「うむ。お主もやる気なようでわらわもうれしいぞ。さあ、ともに覇道を歩もうぞ!」

 嫌がらせの覇道……。
 随分せこい覇道もあったものだ。 

「で、当面の活動指針じゃが……。ここから馬の足で2~3日進んだところに、ヴァン王国という小さい国がある。とりあえずは、そこに身を寄せるとしよう」

「馬で3日って、歩いて何日だよ! 遠すぎるわ!」

 ちなみに万桜号は絶賛ガス欠中です。
 もう1ミリたりとも動きません。

「ん? お主、何を言っておるのじゃ? この乗り物で行くに決まっておろうが」

「いや、この車、もう動かないし」

「はあ……。お主は本当に馬鹿じゃのう」

 なにか思いっきり呆れ顔で溜息つかれた。
 どうしよう。
 このガキ、すごく殴りたい。

「お主がわらわの力を引き出せば、こんな乗り物くらい、簡単に動かせるじゃろうが。次いで防塵・防火・防水その他もろもろもつけてやる。――だからほれ、ちょっとそこで土下座でもして頼んでみい」

「あ、二時の方角から勇者の声が……」

「ギャーギャー!!」

 調子に乗っているようだったので、懲らしめてみた。
 つうかこいつ、同じ嘘に二度騙されるとか、騙されやす過ぎだろ。
 邪神のくせに詐欺にでも遭いそうなタイプだな。

 ――と、そんなことはどうでもいいや。
 
 こいつの力を借りれば、万桜号も動かせるのか。
 それでは早速……。

「――お願いロリ神様、助けてプリーズ」

 適当にそう言ってみた瞬間、ギャーギャー騒ぐセシリアの体が輝きだす。
 セシリアから噴き出した光は万桜号を包みこみ、すぐに消えた。

「ん? これだけか? これで本当に動くのかな」

 騒ぎっぱなしの邪神をほったらかして、車のエンジンを入れてみる。
 そしたら、さっきまで空だった燃料メーターがMaxを指し示した。
 おお! さすがは神様パワー。

「んじゃ、人のいるところ目指してレッツゴー!」

 助手席の下で頭を抱えて震える邪神を尻目に、俺は見渡す限りの草原に万桜号を走らせ始めた。
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