白紙の本の物語

日野 祐希

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第七章 決戦

援軍

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 ――バキンッ!

 カイに向けてふり下ろされたバラムのオノが、石の床を割りくだく。
 しかし、そこにカイの姿はない。
 バラムが辺りを見回すと、くだけた床の先にアルバスとカイの姿が見えた。バラムのオノが当たる寸前、アルバスがカイを救い出したのだ。

「すまねぇ、アルバス。助かった」

「気にするな。お前が無事で何よりだ」

 アルバスがくわえていたカイの服を放す。
 そのままアルバスは、バラムに聞こえないよう、小声でカイに話しかけた。

「どうする、カイ。ヤツの肌は鉄のようにかたい。お前の短刀と私の牙では、どうにもならないぞ」

「だったら、かたくないところをねらえばいい。ヤツの目をねらうぞ。アルバス、オレを乗せてヤツに近づいてくれ。オレがこの短刀で攻撃する」

「わかった。いくぞ、カイ!」

「おうっ!」

 カイがアルバスの背に飛び乗る。
 同時に、カイを乗せたアルバスが、一気に部屋の中を駆け抜けた。
 一瞬にしてバラムに近づいたアルバス。
 白銀の狼は、バラムのふるうオノが当たる寸前、強く地面を蹴った。

「くらえ!」

 バラムの顔の横を通り抜けるようにアルバスが跳ぶ。カイはその背から身を乗り出し、バラムの目をねらった。
 しかし……。

「フン! そのような見えすいた攻撃、効かぬわ!」

 カイが目をねらっていることなど、お見通しだったのだろう。バラムがオノから手を放し、突っこんでくるカイとアルバスにこぶしをふるう。
 空中では、バラムの攻撃をよける術もない。カイとアルバスは、図らずもバラムのこぶしに自ら飛びこむ形となってしまった。

「うぐっ!」

「ぐわっ!」

 バラムのこぶしを受けたカイとアルバスが、部屋の角へと転がる。
 床に倒れたカイとアルバスの方へ、バラムは再びオノを手にして歩みを進めた。

「グハハハハ。口ほどにもなかったな、人間とその飼い犬よ」

 カイとアルバスを追いつめ、勝利を確信したバラムが笑い声を上げる。
 対するカイ達は、痛む体にムチ打って、どうにか体を起こした。
 しかし、前にはバラム、すぐ後ろは壁だ。どこにも逃げ場がない。
 カイたちの眼前に立ったバラムは、見せつけるようにオノをふり上げた。

「今度こそ終わりだ!」

「そんなこと、させないわ!」

 オノがふり下ろされる直前、大広間に葵の声が響く。
 声につられ、思わず背後をふり返ったバラム。その目に飛び込んできたのは、一本の矢だ。ちょうど頭の角へ直撃する軌道に乗った矢が、バラムにせまっていた。

「ぬぐっ!」

 驚いたバラムは、とっさにその場から飛びのいて矢をかわす。その隙を、総司は見逃さない。

「今だ、アイリス」

「はい、ソウジさん」

 続いて飛んだ総司の号令に合わせて、アイリスがバラムに向けて手をかざす。
 すると、アイリスの手から光の球が飛び出し、バラムの目の前へと飛んでいった。

「カイ、ふせろ!」

「お、おう」

 光の球を見たアルバスがするどい声をあげる。
 わけもわからずカイがその場にふせた瞬間、球がはじけてすさまじい閃光を放った。

「ぎゃああああああああっ!」

 至近距離での目つぶし閃光弾だ。直接的な攻撃力はないが、効果は抜群。光に目を焼かれたバラムは、その場でのたうちまわった。
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