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第七章 決戦
カイとアルバスの戦い
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「グハハハハ! 我に『負けを認めろ』だと? 人間風情が粋がりおって。身のほどを知らぬとは、実におろかで滑稽なことだ」
「何だと!」
カイのとなりで、アルバスが牙をむく。その青き目は、怒りの炎で燃えている。
だが、猛るアルバスを見たバラムは、羽虫をはらうように手をふった。
「ほえるな、魔女の飼い犬。いや、魔女共々負け犬と呼ぶべきか? 娘一人救えず、我の言いなりにしかなれぬ、あわれな犬どもよ」
「貴様……。私だけでなく、メアリまでもおとしめるつもりか!」
見下したように笑うバラムに、今にも跳びかかりそうな勢いでアルバスがほえる。
「それはこちらのセリフだ、犬よ。貴様らは、どこまでも我をコケにしおって。ケセド王国と魔女たちから手を引けだと? ふざけるではないぞ。百年前に受けたこの傷の恨み、我は一日たりとも忘れたことはない! 貴様らを滅ぼさんことには、我の怒りは治まらぬのだ!」
アルバスの怒りに触発されたのか、バラムが恨みに満ちた怒りをまき散らす。
「我の存在に気づかれたというのなら、是非もない。まずは魔女とその娘を消し、我が直接ケセド王国を滅ぼしてくれる。アスランたちのいないケセド王国をつぶすなど、たやすいことだ!」
バラムがゲラゲラと耳ざわりな声で笑う。
対してカイは、感情を押し殺した声で、最後の確認とばかりに聞いた。
「――手を引く気はないんだな?」
「くどいわ。復讐の手始めに、まずは貴様とそこの負け犬を、血祭りにあげてくれる」
バラムがいすから立ち上がり、壁に立てかけていた巨大なオノを手に取る。己の背丈ほどもあるオノを、バラムは片手で軽々とふり回した。
その様を臆することなく見つめながら、カイはアルバスへ、すまなそうに声をかけた。
「ごめんな、アルバス。戦わずに終わらせられればと思ったんだけど、お前にいやな思いをさせちまった」
「気にするな、カイ。お前は自分の信じた道を進んだだけだ。あやまる必要はない」
「ありがとう。じゃあ、気を取り直して……。――行くぞ、アルバス!」
「ああ。これ以上、ヤツの好きにはさせない!」
カイが改めて剣を構え、アルバスもすぐに動けるように、足に力をこめる。
「消えろ、羽虫ども!」
同時に、バラムがカイとアルバスに向かって、オノをふり下ろした。
カイとアルバスは、左右に分かれてオノをよける。
アルバスはそのままバラムの左腕に組みつき、オノの動きを封じた。その隙に、カイは腕のないバラムの右側から切りかかる。
「くらえ!」
飛びかかったカイの一撃が、バラムのわき腹をとらえる。
だが……。
――ガキンッ!
まるで鉄同士がぶつかったような音が響き、カイの剣はいとも簡単にはじかれた。
「なんだ、これ? 防具をつけているわけでもないのに、すごくかたいぞ!」
「グハハハハ! 今のは攻撃のつもりか、人間。虫でもとまったのかと思ったぞ」
目を見張った様子のカイを、バラムが笑い飛ばす。そのままバラムは左腕を強引にふり、組みついていたアルバスを吹き飛ばした。
「がふっ!」
「大丈夫か、アルバス!」
「――おっと、どこへ行くつもりだ」
アルバス駆け寄ろうとするカイの前に、バラムが立ちはだかる。
「犬の心配をしているヒマはないぞ、人間。まずは、貴様からあの世に送ってやろう」
バラムはふりかぶったオノを、カイにたたきつける。
とっさに手に持っていた剣でオノを受けたカイ。しかし、バラムの重い一撃を受け切ることはできなかった。カイの持っていた剣は半ばから折れ、彼自身も衝撃で地面を転がる。
「ちくしょう! なんてバカ力なんだ」
何とか起き上ったカイが、バラムを見上げながら舌打ちする。
地面を転がった時にすりむいたのだろう。カイの額からは、血が流れていた。
「ほう、今のをくらって立ちあがるか。人間の子供にしては、なかなかやるではないか。その根性だけはほめてやろう」
バラムはカイの方に歩いて行きながら、見下しつつも感心したように言う。
その間にカイは、折れた剣を投げ捨て、腰にたずさえていた短刀を抜いた。
「グハハハハ。そんなおもちゃのような短刀でどうするつもりだ」
短刀を構えたカイを見て、バラムがゲラゲラと笑う。
「うるせぇ! オレは絶対に負けない。たとえ武器がなくなったって、お前になんか屈しない!」
「……フン。貴様のその目を見ていると、アスランたちを思い出す。実におもしろくない」
カイの強い意志を宿した目を見て、笑みを消したバラムがいら立ったようにはき捨てる。
「もうよい。遊びはもう終わりだ。――消えろ」
カイのもとにたどり着いたバラムは、再びオノをふりかぶった。
ブォン、という風のうなりと共に、カイの命をうばう一撃が放たれた――。
「何だと!」
カイのとなりで、アルバスが牙をむく。その青き目は、怒りの炎で燃えている。
だが、猛るアルバスを見たバラムは、羽虫をはらうように手をふった。
「ほえるな、魔女の飼い犬。いや、魔女共々負け犬と呼ぶべきか? 娘一人救えず、我の言いなりにしかなれぬ、あわれな犬どもよ」
「貴様……。私だけでなく、メアリまでもおとしめるつもりか!」
見下したように笑うバラムに、今にも跳びかかりそうな勢いでアルバスがほえる。
「それはこちらのセリフだ、犬よ。貴様らは、どこまでも我をコケにしおって。ケセド王国と魔女たちから手を引けだと? ふざけるではないぞ。百年前に受けたこの傷の恨み、我は一日たりとも忘れたことはない! 貴様らを滅ぼさんことには、我の怒りは治まらぬのだ!」
アルバスの怒りに触発されたのか、バラムが恨みに満ちた怒りをまき散らす。
「我の存在に気づかれたというのなら、是非もない。まずは魔女とその娘を消し、我が直接ケセド王国を滅ぼしてくれる。アスランたちのいないケセド王国をつぶすなど、たやすいことだ!」
バラムがゲラゲラと耳ざわりな声で笑う。
対してカイは、感情を押し殺した声で、最後の確認とばかりに聞いた。
「――手を引く気はないんだな?」
「くどいわ。復讐の手始めに、まずは貴様とそこの負け犬を、血祭りにあげてくれる」
バラムがいすから立ち上がり、壁に立てかけていた巨大なオノを手に取る。己の背丈ほどもあるオノを、バラムは片手で軽々とふり回した。
その様を臆することなく見つめながら、カイはアルバスへ、すまなそうに声をかけた。
「ごめんな、アルバス。戦わずに終わらせられればと思ったんだけど、お前にいやな思いをさせちまった」
「気にするな、カイ。お前は自分の信じた道を進んだだけだ。あやまる必要はない」
「ありがとう。じゃあ、気を取り直して……。――行くぞ、アルバス!」
「ああ。これ以上、ヤツの好きにはさせない!」
カイが改めて剣を構え、アルバスもすぐに動けるように、足に力をこめる。
「消えろ、羽虫ども!」
同時に、バラムがカイとアルバスに向かって、オノをふり下ろした。
カイとアルバスは、左右に分かれてオノをよける。
アルバスはそのままバラムの左腕に組みつき、オノの動きを封じた。その隙に、カイは腕のないバラムの右側から切りかかる。
「くらえ!」
飛びかかったカイの一撃が、バラムのわき腹をとらえる。
だが……。
――ガキンッ!
まるで鉄同士がぶつかったような音が響き、カイの剣はいとも簡単にはじかれた。
「なんだ、これ? 防具をつけているわけでもないのに、すごくかたいぞ!」
「グハハハハ! 今のは攻撃のつもりか、人間。虫でもとまったのかと思ったぞ」
目を見張った様子のカイを、バラムが笑い飛ばす。そのままバラムは左腕を強引にふり、組みついていたアルバスを吹き飛ばした。
「がふっ!」
「大丈夫か、アルバス!」
「――おっと、どこへ行くつもりだ」
アルバス駆け寄ろうとするカイの前に、バラムが立ちはだかる。
「犬の心配をしているヒマはないぞ、人間。まずは、貴様からあの世に送ってやろう」
バラムはふりかぶったオノを、カイにたたきつける。
とっさに手に持っていた剣でオノを受けたカイ。しかし、バラムの重い一撃を受け切ることはできなかった。カイの持っていた剣は半ばから折れ、彼自身も衝撃で地面を転がる。
「ちくしょう! なんてバカ力なんだ」
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地面を転がった時にすりむいたのだろう。カイの額からは、血が流れていた。
「ほう、今のをくらって立ちあがるか。人間の子供にしては、なかなかやるではないか。その根性だけはほめてやろう」
バラムはカイの方に歩いて行きながら、見下しつつも感心したように言う。
その間にカイは、折れた剣を投げ捨て、腰にたずさえていた短刀を抜いた。
「グハハハハ。そんなおもちゃのような短刀でどうするつもりだ」
短刀を構えたカイを見て、バラムがゲラゲラと笑う。
「うるせぇ! オレは絶対に負けない。たとえ武器がなくなったって、お前になんか屈しない!」
「……フン。貴様のその目を見ていると、アスランたちを思い出す。実におもしろくない」
カイの強い意志を宿した目を見て、笑みを消したバラムがいら立ったようにはき捨てる。
「もうよい。遊びはもう終わりだ。――消えろ」
カイのもとにたどり着いたバラムは、再びオノをふりかぶった。
ブォン、という風のうなりと共に、カイの命をうばう一撃が放たれた――。
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