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最終話 ~冬~ え? 神様方が地獄分館を取り潰そうとしている? ウフフ……。ならば私が、彼らに身の程というものを教えてあげるとしましょう。

採点が始まりました。

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 勝負開始から、およそ小一時間……。

「――ほうほう。これは面白いことになったのう」

 腕組みして仁王立ちした伊邪那美いざなみ様が、私達の前で愉快そうに何度も頷きました。

 まあ確かに、甚だ不本意ですが面白い状況にはなりましたね。
 なんたって、私達と久延毘古くえびこ氏がほぼ同着で資料をそろえてきたのですから……。

「それもこれも、閻魔様と兼定さんのおかげですね。本当に二人とも、盛り上げ上手でいらっしゃる……。――帰ったらティラさんとダイナさんのエサにしてあげますから、覚悟してくださいね♪」

「ふぉ……ふぉんふぉうにふみまへん(意訳:本当にすみません)」

「ハアハア……。最高のご褒美、ありがとうございます!」

 顔面を二倍の大きさにしたまま土下座する閻魔様と恍惚の表情で床に転がる兼定さんを、冷めた目で一瞥します。

 このゴリラと変態、自信満々で出ていったクセに入る書庫を間違えて、久延毘古氏と同時に大会議室へ駆け込んできたのですよ。
 おかげで余裕の勝利になるはずがギリギリの戦いとなってしまいました。私のプランも全部パーです。せっかく喜び勇んで撮影機材を借りてきたというのに……。
 こいつら、この勝負の行方に地獄分館と私達の命運、そして『屈辱にむせび泣く久延毘古氏の図』というお宝映像が懸っていると、本当にわかっているのでしょうかね。

「同時に回答を揃えたということなら仕方ないのう。この場で両者の回答を見せ合って、一緒に答え合わせをしてしまおう」

「それは構いませんが、どのように正誤の評価をされるつもりですか? お互いの回答に相違があった際、どのように判定するのかお聞かせ願います」

 久延毘古氏が伊邪那美様に真っ当な疑問をぶつけます。
 そういえば、評価方法を聞いていませんでしたね。
 本来なら同時にゴールする可能性は低かったはずですから、何かしらの評価方法を用意しているのだとは思いますが……。
 さてはて、伊邪那美様はどうするおつもりなのでしょう。

「安心せい。実はこの依頼を受け取った時に、参考調査係にも調査を進めておくように頼んでおいたのじゃ。なので、今回は参考調査係による調査結果を基準として評価を行うこととする」

 そう言って、伊邪那美様がどこからともなく紙束を取り出しました。察するに、あれが参考調査係の調査結果なのでしょう。
 レファレンスの専門集団が用意した回答を基準とするならば、厳正な評価ができそうですね。久延毘古氏も納得した表情です。

「うむ! 両者、評価方法に異論はないようじゃな。では、早速答え合わせに行ってみよう。まずは渡航人数の依頼からじゃ」

「……白仙さん、回答をお願いします」

「ほいさ。――伊邪那美様、お納めください」

 私に促された白仙さんが伊邪那美様へレポート用紙を差し出し、次いで久延毘古氏も調査結果を提出します。
 二人から回答を受け取った伊邪那美様は、参考調査係の調査結果と合わせて見比べ始めました。

「ふむふむ……。両者ともにメインとして使用した資料は、参考調査係と同じで『統計で見る天国庁の歴史―明治編―』じゃな」

 豪放磊落な性格をした方だとは思っていましたが、伊邪那美様はひとり言まで筒抜けですね。
 おかげで評価過程がわかって助かりますが……。

「久延毘古はちゃんと裏付けのために、さらに他の資料にも当たっておるの。感心感心」

 と思ったら、私達にとってあまりうれしくない発言が出てきましたよ。
 チッ! まずいですね。これは抜かりました。
 白仙さん達は、本職の図書館員ではないですからね。複数の資料に当たって回答内容の裏付けを取るなんてこと、やっているはずもありません。

 これは由々しき事態ですよ。評価としては、久延毘古氏に後塵を拝する可能性が高いです。
 さてはて、どうしたものか……。

「――とはいえ、双方答えは同じじゃしな……。うむ! 一つ目の依頼は引き分けじゃな!」

 ……………………。ふう……。
 助かりました。伊邪那美様が単純バカ――いえ、細かいことを気にしない性格でよかったです。この分なら、残りの依頼も回答に問題がなければ細かいところは流してもらえるでしょう。

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