上 下
65 / 77
最終話 ~冬~ え? 神様方が地獄分館を取り潰そうとしている? ウフフ……。ならば私が、彼らに身の程というものを教えてあげるとしましょう。

勝負内容発表です。

しおりを挟む
「受けて立ちましょう!」

 伊邪那美いざなみ様の提案に、即決で頷きます。
 まさか合法的に久延毘古氏を血祭りにできるチャンスが来るとは思いませんでした。
 フフフ。この神様、なかなか話のわかる方です。

「あ~、一つ言っておくが、勝負と言っても決闘じゃないぞ。司書としての能力を競うものじゃから、勘違いするなよ」

「なんだ、そうなのですか。……残念です」

 ゴングを待ちきれずに構えた金棒と釘バッドを、すごすごとしまいます。
 てっきりあのいけ好かない澄まし面に、一発カマさせてくれるものと思っていたのですが……。――本当に残念です。

「待ってください、伊邪那美様。なぜ私がこの娘と勝負せねばならないのですか」

「お前も一々うるさい奴じゃのう、久延毘古くえびこ。この件はわらわが預かるということで、お前も合意したじゃろうが!」

「確かに今回の件はあなたに委ねましたが、今更この娘と勝負する意味がどこにあるのですか。この娘が過去に行ってきた所業を見れば、勝負をするまでもなく結論は明らかなはずです」

「じゃが、それらのマイナス点を考慮した上でなお、宏美をこの図書館に置いておく価値があるとなれば話は別じゃろう。今回の勝負はそれを図るためのもの。ならば、初代筆頭司書であり、宏美と最も敵対しているお前は絶好の対戦相手じゃろうが。わかったらすべこべ言わず、さっさと戦え! これ以上ごねるようなら、お前の不戦敗とするぞ」

「……なっ!」

 面食らった様子で目を剥く久延毘古氏。
 私としては、このまま不戦勝でも良かったのですけどね。さすがに、そうは問屋が卸しません。
 最後には彼も渋々といった表情で、「わかりました。今回はお付き合いしましょう」と勝負に同意しました。

 やっぱり久延毘古氏って、伊邪那美様には強く出られないようですね。聞く限り初代館長と初代筆頭司書という間柄もあるようですし、何かしらの弱みでも握られているのかもしれません。
 ……よし。今度伊邪那美様に、その弱みを教えてもらうことにしましょう。今後、何かと使えそうですし。

「よし、話は決まったな。では、勝負の内容を説明しよう。勝負の内容は……レファレンスじゃ!」

 どういう手品か、ドドンという効果音付きで伊邪那美様が勝負内容を発表しました。
 ちなみにレファレンスというのは、利用者の探し物の手伝いです(夏の研修の時にも言いましたかね)。司書としての能力を競うということでしたら、妥当な題目ですね。

 ――ただ、気になることが一つ。

 勝負内容を聞いた瞬間、久延毘古氏が仏頂面から一転して、不敵な表情を浮かべたのですよ。これ、明らかに何かあります。

(一体どういうことでしょう? 何だか嫌な予感がします……)

 と思っていたら、久延毘古氏がほくそ笑んだまま、伊邪那美様の前へ進み出ました。

しおりを挟む

処理中です...