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最終話 ~冬~ え? 神様方が地獄分館を取り潰そうとしている? ウフフ……。ならば私が、彼らに身の程というものを教えてあげるとしましょう。

まさかの連敗です。

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「本人も反省しているようですので、これで勘弁してやってください」

「ご……ごべんなざい」

 金棒が顔面にめり込んだままの閻魔様を引っ張り起こし、後頭部を押さえて床に額を擦り付けさせます。閻魔様の顔面に刺さった金棒がゴリゴリとめり込んでいきますが、私は気にしません。

「……まあ、それは横に置いておくとしよう。さて、最後はこのノートだ」

「ああ、それは私が使っていた署名ノートですね」

「ほう、これは君が……。なるほど、それで大体わかった」

 久延毘古氏が納得顔で頷きます。
 何でしょうか。バカにされている気がしますね。

「わかったとは、一体何が?」

「ノートに書かれた署名の文字が妙に震えていたり、にじんだりしている理由だ。――大方いつも通り、脅すなりして無理矢理書かせたのだろう」

 なっ! 何と失礼なことを……。
 このオヤジ、私のことを何だと思っているのでしょうか。

「そんなことするわけないじゃないですか。勝手な推測でものを言わないでください。冤罪もいいところです」

 ええ、脅してなんかいません。後ろにティラさんとダイナさんを控えさせていただけです。で、時々景気付けに吼えてもらっただけです。
 なのに、脅迫まがいのことをしたように言われるのは心外と言う他ありません。本当に言いがかりもいいところですよ。

「……やはり、私は君を見くびっていたようだな。まさか行動を改めるどころか、さらに押し進めてくるとは思わなかった。これは確かに、決定を見直さなければならないな」

「それは光栄ですね。――ちなみに、どのように見直すおつもりで?」

「今回の件で、君達を野放しにできないことがよくわかった。よって、三月末で閉館及び解雇の予定を、一カ月早めて二月末にしようと思う」

 まさかの一カ月繰り上げでした。
 信じられません。何考えているのでしょうか、このイカレポンチ。

「横暴です。職権乱用です。地獄分館を代表して断固抗議します」

「このような問題行動を再び起こしておいて、よくそのような戯言を言えるな。ある意味、見上げた神経の図太さだ」

 手に持った署名ノートをパンパンと叩きながら、久延毘古氏が私を睨み付けます。
 くっ! まさか逆転の一手として持ってきた署名が、私達の首を絞めにかかってくるとは……。

「こちらとしては、今日付けで君達を解雇し、地獄分館を閉館にしたいところなのだ。それを最後の情けで、今月末まで待つと言っているのだぞ。――むしろ感謝してもらいたいところだな」

「ウフフ、それはありがとうございます。感謝のあまり、この場であなたに御礼参りしたい気分です」

「わぁああああああああああっ! 宏美君、タンマ、タンマ! それはさすがにマズ過ぎる!」

 閻魔様の顔面から金棒を引き抜いて久延毘古氏に詰め寄ろうとしたら、閻魔様が私を羽交い絞めにしてきました。
 チッ! このセクハラ大王、どちらの味方なのでしょう。久延毘古氏より先に、血祭りに上げてやりましょうか。

「きょ、今日のところはこれで失礼いたします。お騒がせしました~」

「ちょっと何を言っているのですか、閻魔様! 私の話はまだ――モガッ!」

 殺る気満々な私の口を塞いだまま、閻魔様は愛想笑いを浮かべて大会議室から飛び出しました。
 くっ! このまま済むと思わないでくださいね。必ず後悔させてやりますから~っ!
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