はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です。

日野 祐希

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第三話 ~秋~ 獄卒方、読書の秋って知っていますか? ――え? 知らない? なら、私がその身に叩き込んで差し上げます。

後日談です。

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 というわけで、後日談です。

 まずは、あの後読書マラソン閻魔杯がどうなったかについてですね。
 あの後、閻魔様達とティラノサウルス達は、コースを三周半したところで体力が尽きて、仲良くぶっ倒れたようです。

「「「みんな、きもちよさそうにねてる~!」」」

 と、ティラノサウルスに乗っていた子鬼さん達が、懇切丁寧に教えてくれました。

 死力の限りを尽くし切った彼らは、閻魔様を筆頭に全身筋肉痛となり、翌日揃って仕事をお休み。おかげで、地獄の機能が一日停止するという事態が起こりました。
 マラソンなんて準備運動とか言っていたくせに、口ほどにもないですね。(兼定さんだけは元気に仕事をしていましたが、彼は規格がだいぶおかしいのでノーカンにしておきましょう)

 なお、ティラノサウルス二頭は日本の地獄で引き取り、今ではティラさん・ダイナさんという名前をつけて、焦熱地獄しょうねつじごく龍旋処りゅうせんじょというところで飼ってもらっています。
 今では彼らも、立派な獄卒です。時々亡者と間違えて獄卒達を食べようとしてしまうそうですけど、そこは御愛嬌ですね。

 で、最後に読書週間の成果についてですが……何と利用者さんが激増しました! 10割増しどころか100割増しです。利用者数、桁が一つ増えました。
 読書週間終了後、職員さん達は代わる代わる地獄分館にやって来て、本を借りていきます。
 いやはや、これぞ図書館のあるべき姿ですね。
 ああ、閑古鳥が鳴いていた日々が、まるで嘘のようです。大変素晴らしい。

「それもこれも、すべて私のアフターケアがあったからこそですね♪」

「アフターケア? 脅し文句の間違いだろ――あふっ!」

 あらあら、大変です。本を読んでいた獄卒さんが急に倒れてしまいました。突然空から砲丸が時速150kmで降ってきて、ピンポイントで後頭部に直撃するなんて……運が悪かったですね。

 とりあえず、彼のことは放っておきましょう。どうせその内復活するでしょうし。
 ええと、私のアフターケアの話でしたね。

 実は読書週間が終わった翌々日に、全館放送で「来年もお楽しみに!」と言ってみたのですけど、これが最後の決め手となったようです。皆さん、血相を変えて地獄分館へ殺到しました。やる気十分なようで、私もうれしいです。

 時折、本を探しに来た職員さん達が、「何とかしないと来年こそ消される!」とか「ちくしょう! 来年は何を連れてくるつもりだ。ゴジラか?」とか呟いていますが、さて、来年は何をしましょうか。
 掛かる期待が大きいだけに、なかなか悩ましいものです。彼らの度肝を抜く素敵な企画を、今から頑張って考えるとしましょうか。

「ふーむ……。度肝を抜く企画、度肝を抜く企画……。――あ、そうだ! 『リアルビブリオバトル! 負けたら世界地獄拷問巡りの刑ですよ♪』なんていいかもしれませんね」

「「「いえ、マジで勘弁してください! 俺達も努力するんで、頼みますからもっと常識的な企画にしてください!」」」

 思いついたナイスアイデアを呟いてみたら、来館していた利用者さん達が、全員その場で土下座を始めました。
 相も変わらず、息ピッタリですね。訓練された兵士の動きです。

 まあ、それは置いておきまして……ふむ、なるほど。
 これはつまり、『もっと熟考の上、さらに洗練された素晴らしいアイデアを出してください!』ということですか。
 社蓄共、なかなかうれしいことを言ってくれますね。そこまで私に期待してくれているわけですか。

 そうまで言われては、安易にこの案で決定とはできませんね。この案はとりあえずキープしておいて、実行委員の皆さんとより卓越した企画を練るとしましょうか。
 さてさて、そうなると来年までにやることがたくさん出てきそうですね。通常の業務のことも考えると結構大変そうですが、張り切って進めていくとしましょう。

 ああ、来年の読書週間が今から楽しみです。きっと今年以上に(私が)楽しくなるのは間違いないですね♪
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