43 / 77
第三話 ~秋~ 獄卒方、読書の秋って知っていますか? ――え? 知らない? なら、私がその身に叩き込んで差し上げます。
小休止です。
しおりを挟む
11月2日。
順調な滑り出しを見せた読書週間は予定調和的に進み、五日目までのスケジュール――つまりはおはなし会の全行程が終了しました。
おそらく初日におはなし会に参加した面々から、うわさが広がったのでしょうね。二日目以降の参加者はすごく従順――いえ、積極的におはなし会に参加してくださいました。
おはなしの前後には、訓練された兵士の動きで拍手喝采。おはなしの最中は、まるで命懸けのロシアンルーレットでもしているかのような緊張感で聞き入っていました。
素直で大人しい社蓄共、最高ですね!
さらに、こちらも別のうわさが広がったのか、子鬼タイプの鬼さん達は二日目以降の方々もバッチコーイ! のウェルカム体勢。軍人じみてきた他の社蓄共とは別の意味で、彼らも積極的におはなしを聞いて下さいました。
彼らは全員、私の心の癒しです。おかげで私も、気分よく読み聞かせを行うことができました。本当に引き抜きを検討し始めた方が良いかもしれませんね。
で、読書週間六日目と七日目である昨日今日は、最終日の準備もあるので小休止です。参加者の皆さんには、配った童話集を読みながら、明日のイベントに備えて英気を養ってもらっています。
参加者の心と体に安らぎの一時を御提供――。
ああ、私って超優しいです。もう天使そのものですね。ここ、地獄ですが。
地獄の鬼達は、私に感謝してひれ伏せば――おっと、いけない。『ひれ伏せ』なんて、花も恥じらう大和撫子が言うべきではないですね。
では言い直して……地獄の鬼共は、私に感謝して跪けばいいのです。
……何だか、あまり変わりませんね。まあいいです。
ともあれ、今日は私、兼定さん、子鬼三兄弟、聖良布夢さん、タカシさん、閻魔様で明日の読書マラソンの準備に勤しんでいます。
と言っても、私と子鬼三兄弟がおはなし会に励んでいる間に、主な準備は兼定さんや元不良コンビが済ませてくれてありますけどね。
今日やることは、イベントで使うコースの最終点検(主にコースの強度など)と、アメリカ天国から輸送されてくるゲストの引き取りです。コースの確認は子鬼三兄弟と元不良二人に任せて、私、兼定さん、閻魔様は天国の港へゲストを受け取りに行きました。
「ああ、あれですね。閻魔様、あそこにあるコンテナ二つが、私達宛てのものです」
「ほう。これはまた、ずいぶんと大きなコンテナだね」
私達が港に着いた時には、すでに目的のコンテナは港に下ろされていました。 どうやら貨物船が予定より早く着いたようです。
二つ並んだ超特大サイズのコンテナを、三人でもの珍し気に見上げます。このサイズ、なかなかに期待が持てそうですね。ウフフ♪
――さて、いつまでもここに突っ立って、コンテナを見上げているわけにはいきません。
私達はさっさと受取り手続きを済ませ、コンテナをレンタルのトレーラー二台に乗せてもらいました。
「それじゃあ閻魔様、兼定さん、トレーラーの運転の方、よろしくお願いしますね」
「ねえ、宏美君。今更聞くのもなんだけど、このコンテナの中身って何なの? 中から『グルルル……』とか、不吉な感じで腹に響く唸り声が聞こえるんだけど……」
「それは秘密です。まあ、今は麻酔で眠っているはずなので中を見てもいいですが……命の保証はしませんよ」
「…………。……人間知らない方がいいこともあるよね。さあ、行こうか」
「あ、私は覗いてきてもいいですか?」
私の笑顔から何がしかの危険を感じ取ったらしい閻魔様が、キリッとした表情で逃げるようにトレーラーの運転席へ乗り込みました。
対して兼定さんは、M心を爆発させてコンテナの中を覗きに行きます。ただ、ゲストがぐっすりお休み中だったため、すぐに残念そうな顔をして戻ってきました。
「では、地獄へ帰りましょうか。出発進行!」
私も兼定さんと一緒にもう一台のトレーラーへ乗り込み、地獄へ出発です。
さあ、これで準備は整いました。
本年度読書週間のメインイベント、さてはてどうなることやら。
明日が実に楽しみです。ウフフ……。
順調な滑り出しを見せた読書週間は予定調和的に進み、五日目までのスケジュール――つまりはおはなし会の全行程が終了しました。
おそらく初日におはなし会に参加した面々から、うわさが広がったのでしょうね。二日目以降の参加者はすごく従順――いえ、積極的におはなし会に参加してくださいました。
おはなしの前後には、訓練された兵士の動きで拍手喝采。おはなしの最中は、まるで命懸けのロシアンルーレットでもしているかのような緊張感で聞き入っていました。
素直で大人しい社蓄共、最高ですね!
さらに、こちらも別のうわさが広がったのか、子鬼タイプの鬼さん達は二日目以降の方々もバッチコーイ! のウェルカム体勢。軍人じみてきた他の社蓄共とは別の意味で、彼らも積極的におはなしを聞いて下さいました。
彼らは全員、私の心の癒しです。おかげで私も、気分よく読み聞かせを行うことができました。本当に引き抜きを検討し始めた方が良いかもしれませんね。
で、読書週間六日目と七日目である昨日今日は、最終日の準備もあるので小休止です。参加者の皆さんには、配った童話集を読みながら、明日のイベントに備えて英気を養ってもらっています。
参加者の心と体に安らぎの一時を御提供――。
ああ、私って超優しいです。もう天使そのものですね。ここ、地獄ですが。
地獄の鬼達は、私に感謝してひれ伏せば――おっと、いけない。『ひれ伏せ』なんて、花も恥じらう大和撫子が言うべきではないですね。
では言い直して……地獄の鬼共は、私に感謝して跪けばいいのです。
……何だか、あまり変わりませんね。まあいいです。
ともあれ、今日は私、兼定さん、子鬼三兄弟、聖良布夢さん、タカシさん、閻魔様で明日の読書マラソンの準備に勤しんでいます。
と言っても、私と子鬼三兄弟がおはなし会に励んでいる間に、主な準備は兼定さんや元不良コンビが済ませてくれてありますけどね。
今日やることは、イベントで使うコースの最終点検(主にコースの強度など)と、アメリカ天国から輸送されてくるゲストの引き取りです。コースの確認は子鬼三兄弟と元不良二人に任せて、私、兼定さん、閻魔様は天国の港へゲストを受け取りに行きました。
「ああ、あれですね。閻魔様、あそこにあるコンテナ二つが、私達宛てのものです」
「ほう。これはまた、ずいぶんと大きなコンテナだね」
私達が港に着いた時には、すでに目的のコンテナは港に下ろされていました。 どうやら貨物船が予定より早く着いたようです。
二つ並んだ超特大サイズのコンテナを、三人でもの珍し気に見上げます。このサイズ、なかなかに期待が持てそうですね。ウフフ♪
――さて、いつまでもここに突っ立って、コンテナを見上げているわけにはいきません。
私達はさっさと受取り手続きを済ませ、コンテナをレンタルのトレーラー二台に乗せてもらいました。
「それじゃあ閻魔様、兼定さん、トレーラーの運転の方、よろしくお願いしますね」
「ねえ、宏美君。今更聞くのもなんだけど、このコンテナの中身って何なの? 中から『グルルル……』とか、不吉な感じで腹に響く唸り声が聞こえるんだけど……」
「それは秘密です。まあ、今は麻酔で眠っているはずなので中を見てもいいですが……命の保証はしませんよ」
「…………。……人間知らない方がいいこともあるよね。さあ、行こうか」
「あ、私は覗いてきてもいいですか?」
私の笑顔から何がしかの危険を感じ取ったらしい閻魔様が、キリッとした表情で逃げるようにトレーラーの運転席へ乗り込みました。
対して兼定さんは、M心を爆発させてコンテナの中を覗きに行きます。ただ、ゲストがぐっすりお休み中だったため、すぐに残念そうな顔をして戻ってきました。
「では、地獄へ帰りましょうか。出発進行!」
私も兼定さんと一緒にもう一台のトレーラーへ乗り込み、地獄へ出発です。
さあ、これで準備は整いました。
本年度読書週間のメインイベント、さてはてどうなることやら。
明日が実に楽しみです。ウフフ……。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選
上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。
一人用の短い恋愛系中心。
【利用規約】
・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。
・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。
・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる