はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です。

日野 祐希

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第三話 ~秋~ 獄卒方、読書の秋って知っていますか? ――え? 知らない? なら、私がその身に叩き込んで差し上げます。

決起集会をします。

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 準備期間はあっという間に過ぎ行き、10月26日。
 遂に、読書週間開始前日となりました。

 各種道具の準備や当日の段取り合わせも、先程無事に終了。今日はこれから実行委員会一同(もちろん聖良布夢さんとタカシさんも含みますよ)で、決起集会という名の飲み会を行います。

 あ、そうそう。一応言っておきますと、私がアメリカの天国で行っていた交渉も無事に妥結しましたよ。
 今回の招聘に当たり、私はアメリカ天国で顔が利く、天国議会図書館きってのアニオタ悪魔・ダンタリオン氏を訪ねました。

 私の顔を見たアニオタ氏は、日本人も惚れ惚れするようなスライディング土下座を決め、VIP待遇で接待をしてくださいました。きっと彼、オカマメイドカフェでホスピタリティ精神が何たるかを叩き込まれたのでしょうね。それはもう、あの手この手で徹底的に……。
 ゲストの件についても、私が持参したお土産を目にした瞬間、超特急で話をつけてくれました。
 お土産効果抜群でしたね。ありがとう、日本の贈答文化。ありがとう、ダンタリオン氏特別写真集『メイドな私を見て♡』(非売品)をくれたメイドカフェの店主さん。

 ともあれ、ハイセンスなお土産とダンタリオン氏のご助力により、念願通りのゲストをもゲットした私は、大手を振って地獄分館に帰ってきたのです。
 なお、ゲスト二頭は読書マラソン当日に合わせて、アメリカ天国から輸送してもらう手筈になっています。
 ああ、楽しみですね。早く実物が見たいです。

 ――と、それは横に置いておきまして、話を戻しましょう。

 決起集会を行うことになった私達は、地獄の繁華街にある居酒屋に集合しました。

「それでは皆さん、今日までの準備、お疲れ様でした。ですが、本当の本番は明日からです。明日からの読書週間、ここにいる全員で成功させましょう。――なお、ここでの飲食代と読書週間後の打ち上げの代金はすべて閻魔様持ちです。皆さん、気兼ねなく好きなだけ飲み食いしてください」

「え? ちょっと待って、宏美君! 儂、聞いてないんだけど!」

「閻魔様、素敵な漢気おとこぎを見せてくださり、どうもありがとうございます」

「さすがです、閻魔様。私も秘書官として鼻が高いです」

「「ありがとうございます! ゴチになります!」」

「「「えんまさま、ありがと~!」」」

「え? みんなまでもうその気なの? 儂に拒否権は?」

 ないです。私(とその他もろもろ)に奢れることを誇りに思って、諦めてください。

「それでは乾杯!」

「「「乾杯!」」」

「「「かんぱ~い!」」」

「儂の人権、カムバーック!」

 何やら往生際悪くほざいている財布を体よく無視し、私達は早速飲み食いに興じ始めました。タダだと思うと、料理がよりおいしく感じますね。

「あ、店員さん、この特上寿司セットとこの店で一番高いお酒をお願いしますね――ビンで」

「あ、ついでに店主の気まぐれ刺身守りを五人前。――聖良布夢、お前も何か頼むか?」

「サンキュー、タカシ。じゃあオレも同じのを三人前、あと焼き鳥セットを二人前」

「「「からあげとぽてと、さんじゅうにんまえ~!」」」

「では私は、黒毛和牛ステーキに宏美さんと同じお酒で。――あ、ビン二本でお願いします」

「ま……まったく遠慮がないね、君達……」

 当然です。準備期間に交流を持ったタカシさんや聖良布夢さんを含め、ここにいる全員が閻魔様の人柄を心得ているのですから。
 この人、強面のくせに典型的なNOと言えない日本人ですからね。
 絞れる相手からはとことん絞る。これが地獄クォリティ。

「なあ聖良布夢、せっかくバイト代も入ることだし、今度パアッと遊びに行かねえか」

「おお、いいな! せっかくだし、ダチも誘って盛大にいこうぜ!」

「おおともよ!」

 タカシさんと聖良布夢さんも、ずいぶんと仲良くなったようです。
 昔はチーム同士で争っていたはずなんですがね。過去は水に流して、今ではチームぐるみのお付き合いをしているそうです。雨降って地固まるというやつなんでしょうか。仲良きことは美しきかな、ですね。
 私としても、体のいいパシリ二人が仲良くしてくれることは利点の方が多いです。大いに彼らを応援するとしましょう。

「お待たせしました! 特上寿司セットになります!」

「ありがとうございます。こちらです」

 そうこうする内に、私が注文した料理もやって来ました。
 居酒屋にしては、なかなかに素晴らしい出来栄えのお寿司です。艶やかに輝くネタは宝石のようで、新鮮そのものです。

「では、いただきます」

 他の皆さん同様、私もお金の心配をすることなく、おいしい料理に舌鼓を打つのでした。
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