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第三話 ~秋~ 獄卒方、読書の秋って知っていますか? ――え? 知らない? なら、私がその身に叩き込んで差し上げます。
準備しましょう。
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その後、閻魔様と二時間にわたって話し合い、『今年は読書週間を試験導入してみる』という形に落ち着きました。
今年はお試しで読書週間を行い、結果如何で来年からは本格導入という形ですね。
期間は通常の半分で、10月27日から11月3日まで。イベントの参加者は地獄裁判所と事務局内に勤めている獄卒から無作為抽出した300人のみで、一般人や地獄各地で働く獄卒は対象外です。
私としては、今年から本格導入でまったく問題なかったのですけどね。
最終的に閻魔様が、「お願いですから、我々に猶予をください!」と床に頭を擦り付け始めたので、仕方なく折れてあげました。時にはうだつの上がらない上司のお願いを聞いてあげるのも、部下の務めですからね。私、部下の鏡です。素敵すぎます。
ともあれ、読書週間の実施まで残り二週間ほどしかありません。
私はとまとさん・ちーずさん・ばじるさんに兼定さんと聖良布夢さん、ついでに拉致――いえ、快く同行してくれたタカシさんを巻き込んで、早速準備を始めました。
「さあさあ皆さん、読書週間まで残り二週間。遊んでいる時間はありませんよ。張り切って準備をしましょう!」
「「「お~!」」」
「任せてくださいッス、姐さん! オレ、超ガンバルッスよ!」
「ハハハ。これは腕が鳴りますね」
「ちくしょう。何でオレまで……」「タカシさん、これな~んだ?」「嘘です! オレもやる気満々です! 頼むからその赤黒く汚れた断頭台をしまってください!」
うんうん♪ 皆さん、やる気があって実によろしい。
さすがは私が見込んだ、優秀な読書週間実行委員達です。
どこぞのゴリラな分館長も、このやる気みなぎる皆さんの姿を見習ってほしいものですね。
「それでは皆さん、おはなし会に使う大道具の準備をよろしくお願いしますね。あれが今回のおはなし会を成功させるための鍵になります。一切の手抜かりなく、確実に仕留められるものを作ってください」
「わかってるッスよ、姐さん。必ず期日までに仕上げてみせるッス! オレの本気、見せてやるっスよ!」
「完成した暁には私自らがテスターとなり、隅から隅まで性能チェックいたしますよ。ハアハア……。お任せ下さい!」
「ハハッ! もう何でもいいや。どんな仕事でもやってやらーっ!」
力こぶを作る聖良布夢さんと爽やかに恍惚の笑みを浮かべる兼定さん。
タカシさんは何だかヤケクソ気味のテンションではありますが、ちゃんと仕事をするのなら問題ありません。この元不良、割と能力高いですから、そこそこいい仕事をしてくれることでしょう。
そして、我らが子鬼三兄弟も、『ばっちこ~い!』と可愛い拳を突き上げながら鬨の声を上げていますね。相変わらず、愛くるしい子達です。素晴らしい。
「ええ、期待していますよ。では、後を頼みます」
彼らにそう言い残し、私は踵を返します。
そして、カウンターの横に置いておいたキャリーケースを手に取りました。
(さて、それでは私も張り切って出発しますか!)
私の仕事は、読書マラソンに参加してもらうスペシャルゲストの招聘です。
そのために私は、これから単身、アメリカの天国へ飛ぶことになります。
今回の読書マラソンに、このゲストさんは絶対必須。何としても、先方との交渉を成功させなければなりません。
私はどんな手を使ってもゲストを供出させるという決意を胸に秘め、地獄分館を後にしました――。
今年はお試しで読書週間を行い、結果如何で来年からは本格導入という形ですね。
期間は通常の半分で、10月27日から11月3日まで。イベントの参加者は地獄裁判所と事務局内に勤めている獄卒から無作為抽出した300人のみで、一般人や地獄各地で働く獄卒は対象外です。
私としては、今年から本格導入でまったく問題なかったのですけどね。
最終的に閻魔様が、「お願いですから、我々に猶予をください!」と床に頭を擦り付け始めたので、仕方なく折れてあげました。時にはうだつの上がらない上司のお願いを聞いてあげるのも、部下の務めですからね。私、部下の鏡です。素敵すぎます。
ともあれ、読書週間の実施まで残り二週間ほどしかありません。
私はとまとさん・ちーずさん・ばじるさんに兼定さんと聖良布夢さん、ついでに拉致――いえ、快く同行してくれたタカシさんを巻き込んで、早速準備を始めました。
「さあさあ皆さん、読書週間まで残り二週間。遊んでいる時間はありませんよ。張り切って準備をしましょう!」
「「「お~!」」」
「任せてくださいッス、姐さん! オレ、超ガンバルッスよ!」
「ハハハ。これは腕が鳴りますね」
「ちくしょう。何でオレまで……」「タカシさん、これな~んだ?」「嘘です! オレもやる気満々です! 頼むからその赤黒く汚れた断頭台をしまってください!」
うんうん♪ 皆さん、やる気があって実によろしい。
さすがは私が見込んだ、優秀な読書週間実行委員達です。
どこぞのゴリラな分館長も、このやる気みなぎる皆さんの姿を見習ってほしいものですね。
「それでは皆さん、おはなし会に使う大道具の準備をよろしくお願いしますね。あれが今回のおはなし会を成功させるための鍵になります。一切の手抜かりなく、確実に仕留められるものを作ってください」
「わかってるッスよ、姐さん。必ず期日までに仕上げてみせるッス! オレの本気、見せてやるっスよ!」
「完成した暁には私自らがテスターとなり、隅から隅まで性能チェックいたしますよ。ハアハア……。お任せ下さい!」
「ハハッ! もう何でもいいや。どんな仕事でもやってやらーっ!」
力こぶを作る聖良布夢さんと爽やかに恍惚の笑みを浮かべる兼定さん。
タカシさんは何だかヤケクソ気味のテンションではありますが、ちゃんと仕事をするのなら問題ありません。この元不良、割と能力高いですから、そこそこいい仕事をしてくれることでしょう。
そして、我らが子鬼三兄弟も、『ばっちこ~い!』と可愛い拳を突き上げながら鬨の声を上げていますね。相変わらず、愛くるしい子達です。素晴らしい。
「ええ、期待していますよ。では、後を頼みます」
彼らにそう言い残し、私は踵を返します。
そして、カウンターの横に置いておいたキャリーケースを手に取りました。
(さて、それでは私も張り切って出発しますか!)
私の仕事は、読書マラソンに参加してもらうスペシャルゲストの招聘です。
そのために私は、これから単身、アメリカの天国へ飛ぶことになります。
今回の読書マラソンに、このゲストさんは絶対必須。何としても、先方との交渉を成功させなければなりません。
私はどんな手を使ってもゲストを供出させるという決意を胸に秘め、地獄分館を後にしました――。
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