はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です。

日野 祐希

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第二話 ~夏~ 地獄にも研修はあるようです。――え? 行き先は、天国?

お仕置きです♪

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「さてはて、残るはあなた達だけですね~。タカシさん、シゲキさん、覚悟はできていますか?」

「うぐっ! ――どうするよ、シゲキ」

「くそ! まさかあのケンジとマサキがこうもあっさりと……」

 私流裁きの雷(改造スタンガン)をチラつかせながら笑いかけたら、タカシさんとシゲキさんがたじろぎ始めました。
 あらあら。二人とも、まるで怯えきったウサギのようですね。ウフフ。二人のあの表情、ゾクゾクしてしまいます♪

 ――って、おっといけない。清楚で可憐な天使であるところの私が、怯えた表情にゾクゾクしているなんて、大変なイメージダウンですよ。

 言い直します。二人のあの表情を見ていたら、心優しい私は良心の呵責かしゃくさいなまれてしまいますね。まあ、お仕置きはやめませんが……。

 それはさておき、展開まで聖良布夢さん一派の時といっしょになってしまいましたね。
 違いと言えば、前の時はリーダー格の聖良布夢さんが真っ先に床を舐めていたことくらいでしょうか。

 ただまあ、過程は今更どうでもいいことですね。
 思いっきり暴れて――いえ、お説教をしてストレスも解消できましたし、そろそろ終わらせることにしましょう。若干、飽きてきましたし。

「安心してください。死ぬほど痛い思いをした後、ついでに地獄裁判所で拷問を受けるだけですから。ほら、怖くない、怖くな~い」

「今の言葉のどこを取っても、安心できる要素が見当たらねえ!」

「気にしない、気にしな~い。どちらにしてもチェックメイトですから、さっさと済ませてしまいましょうね」

「はあ? 一体何を言って……って、なんじゃ、こりゃ!」

 自らの足元を見たタカシさんが、どこぞの刑事ドラマのようなリアクションを取りました。
 どうやら彼、ツッコミだけでなく物まねまでいけるクチのようです。なかなか愉快な芸風をお持ちですね。

「何だよ、これ! 接着剤? いつの間にこんな……」

「くそ! まったく動かねえ! ――おいコラ! てめえ、何しやがった!」

 床とくっついてびくともしない靴に、四苦八苦するシゲキさんとタカシさん。
 仕掛けは大成功ですね。
 ではでは、種明かしと参りましょうか。

「先程あなた方が呆然としていた時に、この子鬼さん達に頼んで仕掛けてもらいました。この子達、気配を消すのも上手なのですよ。全然気がつかなかったでしょう?」

「「「いえ~い!」」」

「やり口と手際がすでに図書館員のそれじゃねぇ! てめえら、一体どこの隠密集団だ!」

 タカシさんがまた何か叫んでいる間に、私と子鬼さん達は仕上げの準備です。
 ええと、砲身OK。あとは弾を込めて……。

「――って、おい待て。それはヤバい。マジでヤバい!」

「大丈夫、大丈夫。キャッチボールですよ、キャッチボール。怖くなーい、怖くない♪」

「てめえのキャッチボールは重過ぎんだよ! 色んな意味で!」

 無視して作業続行。
 ここをこうして……。――よし! 人間電磁砲兼定、完成です。
 今回は説教仕様ということで、人間大砲も雷チックなバリエーションを選んでみました。これも一種の様式美というやつですね。

 どこから取り出したかは、気にするだけ無駄だと思っておいてください。当方には時間も空間もお構いなしなMの王がおりますので。

「ししょー、じゅんびできた~!」

「みっしょん、おーぐりーん!」

「いつでもいける~!」

 準備が完了し、子鬼さん達が私の顔を窺います。
 ふむ。では早速いきましょうか。

「プレゼント・フォー・ユー」

「おおおおっ! ちょっと待って! オレ達が悪かったから、ちょっと待ってぇええええええええええっ!」

 気にせずポチっとな。

「届け、マイハート!」

「「わああああああああああっ!」」

 妙な掛け声と共に発射された兼定さんが、即座に着弾。
 天国本館に文字通り、激震が走りました。
 

 * * *


 後日談――と言いますか、このすぐ後のお話。

 私達は放心状態から脱した石上さんから盛大に叱られた後、道真館長からリアル雷を落とされました。こっそり避雷針を使って、すべて兼貞さんへ流しましたが……。

 威力を計算してぶっ放したので、部屋や家具は無事だったんですけどね。着弾時の煙でスプリンクラーが作動してしまったのは誤算でした。第二閲覧室を水浸しにしてしまっては、さすがの私も言い訳できません。
 私達は罰として第二閲覧室の掃除と始末書作成を言い渡され、プラスで二日間、天国本館のお世話になることとなりました。

 ――え? 罰が軽すぎないかって?

 そこら辺はほら、私も色々と頑張りましたからね。そう、色々と……。
 とりあえず、タカシさん達が「悪いのはオレ達だ! 罰するならオレ達を罰しろ、コンチクショウ!」とヤケクソ気味に訴えたことが決め手となり、この罰に落ち着きました。
 彼らが素直な少年達で、本当に良かったです。フフフ……。

 ともあれ、立派にお勤めを果たした私達は、一足遅れで無事に新人研修の修了証書をもらうことができました。
 終わり良ければすべて良し。
 私達は約一週間ぶりに我が城、地獄分館へ戻ったのでした。
 めでたし、めでたし――。
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