九月の優しさ

ファイヤーワークス 1

「夏祭りいこうぜ！」青谷タシカは、友人の町田トキヤに誘いかけた。

「ノリがウザイ」青谷の言葉は、一蹴される。
「一人でいってこい」

打ち上げ花火みにいこう――
そんなこと男同士で言う年齢じゃないもんな。

青谷の職業は花火師だ。とは言え、まだ見習いで弟子入りしている状況であり、花火師と名乗るには能力もなければ、実績もない。
だけど、今回、友人の町田を祭りに誘ったのは
自分が作った花火を打ち上げるからだ。

町田は少年時代、夏祭りが好きで、花火が好きだった。
それに影響を受けた青谷も、花火の世界に入り込んでいった。
そんな町田に、俺が作った花火をみてほしいと
言いたかったが、サプライズ的なことを考えていたせいで、作戦は失敗する。

二人は、地元の最寄り駅から歩いて、すぐのラーメン屋で麺を啜っている。

テーブルに置いてあるコップを取り、水を飲む。青谷は手で口の端を拭った。「じゃあ、町田、誰かとでもいい」言い終えてから、すぐに答える。
「とにかく、祭りにきてくれ」
「なんでだよ、忙しいし、祭りとかもういいよ」

「ラーメン屋で」青谷はむせてしまい口元をおさえた。「友情を忘れたのかよ、男二人で麺啜ってる場合じゃねえよ」

「男二人で、夏祭りのほうが気持ち悪いんだよ」町田は折れない。

「じゃあ、ベランダ、夜7時以降ベランダにおってほしい」青谷も、折れてたまるかと、先ほど失敗したサプライズ作戦を強行する

「嫌だ」

「分からずや野郎」
笑いあって、そのままラーメンを食べ終えてから、店をあとにした。