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第13話
しおりを挟む「メラニー!!」
父が叫びました。
「えっ?? メラニーのことをご存知で?」
みんなの反応にわけが分からずオロオロしてしまうオッド。
「ご存知も何も……数ヶ月前まで私の娘だった女です」
父の言葉に、今度はオッドが驚愕の表情を見せました。
「どういうことだ? メラニー?」
父が私を問い詰めようとする。
私は押し黙り視線を落とす。本当に夢で見ただけなんだから、それ以上説明のしようがありません。
「なぜお前がうちが盗賊団に襲われることを知っていた?」
私を睨みつける父に向かってオッドが何か言おうとした時。
「部隊長っ!」
オッドの部下の人が幌馬車の方から駆け寄ってきました。
路上に停まった幌馬車の荷台には、さっきから拘束された盗賊団の人達がチェックを受けながら順次乗せられていたのです。顔に見覚えのある人達が。
「これを。盗賊団の幹部が持っていました」
折り畳んだ一枚の紙をオッドに差し出す部下の人。
すぐに開いて一瞥したオッドはつぶやきました。
「間取り図?」
父がオッドの持つ紙を覗き込みます。
「こ、これはっ! うちの屋敷の間取り図だ!」
「やはりそうですか?」
「ええ。ざっと見た感じ、広い屋敷の隅から隅まで記されているようだが」
「なぜ盗賊団がこれを……」
オッドが首を傾げると、父はあきれたように頭を振りました。
「分からんのか? ……決まっておる。こいつが教えたんだ!」
父が指差す先には私。
違う。
夢の中では教えたけど、今そこにあるのは間違いが残ったままの使用人頭さんによる見取り図のはず。
よく見て……。
「まさか。メラニーはあなたの娘さんなのでしょう?」
オッドが強く否定しました。
助けて、オッド!
「元、だ。元娘。あまりにもアバズレなので追い出したのだ。つまり」
「私達のことを逆恨みして盗賊団に近づき、手引きしたのよ!!」
父の言葉を母がつなぐ。
「この女のことだ。体を使って取り入ったのだろう」
もう父は確信しているようです。
「家族だった私達を殺させるつもりだったんだ! 怖い、怖い! 隊長さん、早くこの女を捕まえて!!」
ミアが絶叫しながら私の腕を掴む。
違う、違う、違う。
あれは夢。
夢の中でやったことは罪じゃない!
「あっ!」
考え込んでいたオッドが小さく叫びました。
「どうしたね?」
父が聞く。
「あの盗賊団の首領の顔、どこかで見た覚えがある気がしてモヤモヤしていたのですが……」
「思い出したのかね?」
「メラニーと初めて会った日、メラニーと揉めていた男です」
その意味を探るかのように視線をさ迷わせながらオッドは言いました。
父は自分のあごをゆっくりとさする。思案する時の父の癖です。
「その時の詳細を話してくれませんかな?」
言われてオッドは私と住むようになった経緯を語り出しました。
予知夢に関することも。
「全てがつながったではないか」
オッドの話を聞き終えた父は言いました。
「最初から盗賊団の首領とこの女はグルで、あなたは利用されたんだ」
「えっ??」
「警ら隊部隊長のあなたのもとへ入り込んで連続強盗に関する捜査状況を聞き出し、それを盗賊団に伝えるのがこの女の役目」
「なっ! いや、それは! まさか! メラニーはとてもいい子で……」
「あんたも体でたぶらかされたのだろう」
「違うっ!」
「そこを責めるつもりはありませんよ。悪いのはこの女だ。そもそもあなたはこの女が我が家の娘だったことを本人から聞かされていない。なぜでしょう?」
父は勝ち誇ったように言う。
「まさか……まさか……」
ランプの淡い光の中でもオッドが青ざめているのが分かる。
オッド、お願い、私を信じて……。
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