上 下
88 / 128

マナー講師のマナー、ほとんどマイルール説 4

しおりを挟む
前回のあらすじ!
マカオとお嬢は、マナー講師マナコの目の前で『上司役に部下役が書類を渡す』というシチュエーションを模擬させられた!彼女たちの書類の渡し方は合っていたのか!?

「では答え合わせをしましょう」

ニッコニコの笑顔でマナー講師のマナコが話す。マナーを知らない人間の常識を打ち砕き、マナーマウントを取って愉悦に浸るのはマナコの悪い癖であった。しかし、世間一般に常識とされていることを教えているだけなので、当然知識として正しいのはマナコなのである。マナーを知らずに皆が恥をかかないよう、マナコは教えているだけだ。
マナコはお嬢の書類を手に持ち、押印した箇所を指差した。同時に、ザザの口から「まさか……」という声が漏れた。

「まずは判子の押し方を勉強しましょう。この書類には、左から上長、主任、担当者の押印欄があります」

それぞれの押印欄を指でなぞる。意味不明に艶めかしくしているが、これは彼女の悪い癖であり、同時にマナコに視線を引き付けるテクニックでもある。

「今回お嬢さんは一般社員という設定ですので、担当の欄に押印しています。これは正解です。では、一体何が間違いだったのか」

マナコは一呼吸二呼吸たっぷりと間を置く。ザザ、嫌な予感。マナコは皆の注意を集めたところで、その続きを話す。

「判子は、自分より上位の役職の人がいる場合、文字を30度くらい反時計回りに傾けて押印するのがマナーです!判子で目上の人におじぎをするんですね!」
「おげええええええ!!!!」
「ざ、ザザ先輩!?大丈夫ですか!?」
「逆に時計回りに30度傾けて押印してはいけません!まるで上司にふんぞり返っているように見えますからね!」
「おろろろろろろろろろろ!!!!」
「ザザ先輩!?ザザ先輩!!!」
「添付書類には、すべてふせんを付けましょう!ちゃんとふせんに『添付書類1』『添付書類2』と書いて、上司がすぐに分かるようにする必要があります!」
「ハァーッハァーッハァーッ!!!!」
「た、大変!ザザ先輩が過呼吸に!!」
「書類を準備できたら、クリップやダブルクリップで丁寧に留め、クリアファイルの中に入れます!」
「カッ……カッ……!!ま、まあ、それくらいならいいんじゃない……!?」
「そしてクリアファイルの中、書類の一番上に、『お疲れ様です、大変お忙しい中恐縮ではありますが、下記の書類をご確認の上ご捺印お願い致します』と書いたふせんを貼ります!」
「カハッ!!!!」
「ザザ先輩!血が!!」
「書類は当然手渡しです!」
「」
「また、上司は一般社員より忙しい身です。部下が締切を設定するのは失礼にあたるので、締切の話はしないようにしましょう!」
「そんなわけねえだろダボが!!!!!」
「ひぃぃいい!!!!」

ザザが大声を上げて机に手を叩き付ける。いわゆる台パンというやつだ。

「我慢して聞いてればウソばっかり教えて、一体何がマナー講師だ!!」
「ま、まあ!!なんて無礼なの!!あなたは来客に対する礼儀も知らないの!?」
「あなたが本物のマナー講師なら、最初にお嬢さんとマカオさんの2人がしたやり取りで80点は付けるはずだ!それをどこから聞いてきたかも分からん田舎者ルールでごちゃごちゃごちゃごちゃと……!!」
「失礼な!!これが正しいマナーなんです!貴方こそマナーのいろはも知らないくせに、ちょっと言いがかりが過ぎるんじゃなくて!!」

ギャースギャース。

「ではマナコさん、こうしましょう。幸いにも、ここには大日本帝国の中枢を担う全ギルドのマスターも集まってくれています。彼らは歴戦の管理職経験者ですし、当然マナーもご存知でしょう。どうですか!?彼ら現役の上長に判断してもらうというのは!?」
「承知致しました!ギルドマスターたちが良いと仰るなら、マナー講師マナコ、自身の身の上をかけて勝負しましょう!」
「だそうですよギルマスの皆さん!!お手元にどっちのマナーが正しいか判定する札は渡りましたね!?」
「え?」

マナコ、目をぱちくり。

「青が行政改革ギルドの2人が実行したマナー、赤がマナー講師マナコさんのマナーです!優れている方を選んで下さい!」
「え?え?」
「いきますよ!!!せーの!どん!!!!はい、青、青、青、青……あ、全員青ですね!!!マナコさん今日はお疲れ様でした!!!!」
「はああああああ!!?!?」

マナコは、この日一番大きな声を出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完)まあ!これが噂の婚約破棄ですのね!

オリハルコン陸
ファンタジー
王子が公衆の面前で婚約破棄をしました。しかし、その場に居合わせた他国の皇女に主導権を奪われてしまいました。 さあ、どうなる?

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました

もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

処理中です...