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俺たちの火魔法 ”FIRE” 11
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「まず、何歳でFIREしたいかを考えてみようか。エンさんはどう?さっき何歳でFIREしたいって言ってたっけ?」
「私は40歳でFIREしたいです!」
「ああ、そうだそうだ。
40歳ね!そりゃすごい!エンさんはなんとなく分かってる雰囲気があるけど、本当に40歳でFIREしたいんだね?あ、そんなにヘドバンするほど首振らなくてもいいよ!!エンさんの強い意思は分かった!……おい、分かったって言ってるだろ!その猛烈なヘドバンをやめろ!!!」
「では皆さんに問題です!40歳でFIREするのに必要な金額はいくらになるか考えてみましょう!じゃあジンミンゲンさん。仮に20歳から働いて40歳でのFIREを目指すとして、40歳時点でいくらお金が必要になるかな?」
ドルのように志が高いわけではないが、ジンミンゲンもまた非常に聡明な人物のようだとザザは判断した。事実、与えられた問題に対し自分なりの回答を持つようにしているところは周囲からも高く評価されているし、今の問題についても考えた上で答えを出すことができる。それがジンミンゲンという人物だ。
「そうだな……年金を受給するまでと考えるなら25年、あるいは年金受給開始が70歳になる可能性を考えて……推定30年分の生活費として、平均支出400万×30年の1億2000万バルクか?だが、配当で生活することを考えれば、先の先生の説明の通り1億程度で十分になるだろう」
「それも1つの答えだね。実際には、年金だけで標準的な生活を送れるってわけじゃないから、多くの生活資金があるに越したことはないよ。なんにせよ、ジンミンゲンさんは40歳時点で1億あればFIREできると考えたわけだ」
厚生年金は、年収500万バルクの人が40年加入した場合、月額10万バルク程度もらえる。生涯死ぬまでもらえるというメリットはあるものの、年間受給額で考えると120万程度であり、とてもじゃないが年金だけで生活することはできない。したがって、FIREの際にはそこまで見据えた計画を立てる必要がある。
「じゃあ次にユーロさん。40歳という短期間でFIREを目指すには、準備期間の短さから来る高いハードルがいくつかあるんだ。それらについて思い付くことはあるかな?」
そしてユーロもまた、気取った態度でイケメンにしか興味がなさそうな雰囲気を出しつつも、決して地頭は悪くない。男を騙し、手玉に取り、己の美貌を盾に思う通りに誘導する。そんな技を使うことができる人間の知性が低いわけがないし、当然物事を多面的に考えるのも得意だ。ただ、ちょっとイケメンに目がないだけ。それがユーロという人物である。
「準備期間の短さ……?そうですわね……。あ、例えば”お給料が少ない”というのはどうでしょうか。大日本帝国は年功序列の社会ですし、若いうちはあまりお給料ももらえないのでは?」
「素晴らしい!大正解です!40歳と言うと、ある程度キャリア形成ができてきて、大手に勤めてる優秀な人だと主任から管理職になり始めるくらいの年齢なんだ。つまり、まだまだ安い給料の段階でFIREを目指すことになるわけだね。他にもあるんだけど思い付くかな?」
「ほか……ほか……」
「くっくっく、難しいかな?ざっと考えられることを言うと、まず複利が効く時間が短いというハードルがある。複利ってのは、毎月3万バルク投資して30年経つと、年利4%なら利息で2000万バルクくらいになるって話をしただろ?あれのことだね。複利っていうのは、投資している期間が長ければ長いほど効いてくるんだ。今年4%増えたとして、来年はその”増えた分の4%を合わせた数字”×4%が増えるわけだから、年数をかければかける程雪だるま式にお金が増えていくのはわかるよね?」
「はい、よく分かりますわ」
複利というのは、期間が長くなるにつれて効果が増してくるものだ。例えば毎年1.04倍という数字を掛け算し続けたとして、10年後と100年後ではどっちの数字が大きいか問われたら間違いなく100年後だろう。複利の効果を最大限発揮するには、いかに早く投資を始めるかにかかっていると言ってもいい。
「他に考えられるハードルは、退職金が少ないってことだ。FIREを考える上で、退職時に発生するブースト要素が退職金だよ。20歳から定年まで勤め上げれば、何千万という退職金がもらえるケースがある。これが意外とバカにできなくて、あと1年働けばFIRE!みたいな時でも、退職金を考慮すれば“実はとっくにFIREできてました”なんてことはザラにあるんだ。この退職金がもらえる金額が減るのがハードルになるってわけだね。……とは言え。誰の事例とは言わないけど、昔大手電力会社に勤めていたやつは、5年ちょっと勤めて退職した際に250万程度の退職金をもらっている。だから、一概に勤続年数が少ないからもらえる金額が少ないとは言い切れないけど、長期で勤め上げられた方に比べたら雀の涙……もといハトの爪くらいの金額だろうね」
「そうだとしても、退職金は結構な額がもらえますのね」
「中小企業だとそもそも退職金制度自体がなくて退職金をもらえないところもあるけど、大手ならほぼもらえるぞ。それに、退職金がいくらもらえるかは”退職金規定”に書いてることがほとんどだ。存在すら知らないっていう大人が多いけど、FIREのためには真っ先に目を通してもいいくらいの書類だね」
社会人になって最初に読むべき書類は退職金制度だと言う人間がいるくらい、退職金の規定はチェックすべき項目だ。自分に入ってくるお金が“いつ・どれだけ”貰えるのかを把握することは、自分のFIREタイミングをコントロールする上で極めて重要なのである。
「他にも短期間でのFIREにはハードルがあるんだけど……授業も良い時間だし、ここで一旦5分間の休憩にしよう。先生はトイレ!」
「私は40歳でFIREしたいです!」
「ああ、そうだそうだ。
40歳ね!そりゃすごい!エンさんはなんとなく分かってる雰囲気があるけど、本当に40歳でFIREしたいんだね?あ、そんなにヘドバンするほど首振らなくてもいいよ!!エンさんの強い意思は分かった!……おい、分かったって言ってるだろ!その猛烈なヘドバンをやめろ!!!」
「では皆さんに問題です!40歳でFIREするのに必要な金額はいくらになるか考えてみましょう!じゃあジンミンゲンさん。仮に20歳から働いて40歳でのFIREを目指すとして、40歳時点でいくらお金が必要になるかな?」
ドルのように志が高いわけではないが、ジンミンゲンもまた非常に聡明な人物のようだとザザは判断した。事実、与えられた問題に対し自分なりの回答を持つようにしているところは周囲からも高く評価されているし、今の問題についても考えた上で答えを出すことができる。それがジンミンゲンという人物だ。
「そうだな……年金を受給するまでと考えるなら25年、あるいは年金受給開始が70歳になる可能性を考えて……推定30年分の生活費として、平均支出400万×30年の1億2000万バルクか?だが、配当で生活することを考えれば、先の先生の説明の通り1億程度で十分になるだろう」
「それも1つの答えだね。実際には、年金だけで標準的な生活を送れるってわけじゃないから、多くの生活資金があるに越したことはないよ。なんにせよ、ジンミンゲンさんは40歳時点で1億あればFIREできると考えたわけだ」
厚生年金は、年収500万バルクの人が40年加入した場合、月額10万バルク程度もらえる。生涯死ぬまでもらえるというメリットはあるものの、年間受給額で考えると120万程度であり、とてもじゃないが年金だけで生活することはできない。したがって、FIREの際にはそこまで見据えた計画を立てる必要がある。
「じゃあ次にユーロさん。40歳という短期間でFIREを目指すには、準備期間の短さから来る高いハードルがいくつかあるんだ。それらについて思い付くことはあるかな?」
そしてユーロもまた、気取った態度でイケメンにしか興味がなさそうな雰囲気を出しつつも、決して地頭は悪くない。男を騙し、手玉に取り、己の美貌を盾に思う通りに誘導する。そんな技を使うことができる人間の知性が低いわけがないし、当然物事を多面的に考えるのも得意だ。ただ、ちょっとイケメンに目がないだけ。それがユーロという人物である。
「準備期間の短さ……?そうですわね……。あ、例えば”お給料が少ない”というのはどうでしょうか。大日本帝国は年功序列の社会ですし、若いうちはあまりお給料ももらえないのでは?」
「素晴らしい!大正解です!40歳と言うと、ある程度キャリア形成ができてきて、大手に勤めてる優秀な人だと主任から管理職になり始めるくらいの年齢なんだ。つまり、まだまだ安い給料の段階でFIREを目指すことになるわけだね。他にもあるんだけど思い付くかな?」
「ほか……ほか……」
「くっくっく、難しいかな?ざっと考えられることを言うと、まず複利が効く時間が短いというハードルがある。複利ってのは、毎月3万バルク投資して30年経つと、年利4%なら利息で2000万バルクくらいになるって話をしただろ?あれのことだね。複利っていうのは、投資している期間が長ければ長いほど効いてくるんだ。今年4%増えたとして、来年はその”増えた分の4%を合わせた数字”×4%が増えるわけだから、年数をかければかける程雪だるま式にお金が増えていくのはわかるよね?」
「はい、よく分かりますわ」
複利というのは、期間が長くなるにつれて効果が増してくるものだ。例えば毎年1.04倍という数字を掛け算し続けたとして、10年後と100年後ではどっちの数字が大きいか問われたら間違いなく100年後だろう。複利の効果を最大限発揮するには、いかに早く投資を始めるかにかかっていると言ってもいい。
「他に考えられるハードルは、退職金が少ないってことだ。FIREを考える上で、退職時に発生するブースト要素が退職金だよ。20歳から定年まで勤め上げれば、何千万という退職金がもらえるケースがある。これが意外とバカにできなくて、あと1年働けばFIRE!みたいな時でも、退職金を考慮すれば“実はとっくにFIREできてました”なんてことはザラにあるんだ。この退職金がもらえる金額が減るのがハードルになるってわけだね。……とは言え。誰の事例とは言わないけど、昔大手電力会社に勤めていたやつは、5年ちょっと勤めて退職した際に250万程度の退職金をもらっている。だから、一概に勤続年数が少ないからもらえる金額が少ないとは言い切れないけど、長期で勤め上げられた方に比べたら雀の涙……もといハトの爪くらいの金額だろうね」
「そうだとしても、退職金は結構な額がもらえますのね」
「中小企業だとそもそも退職金制度自体がなくて退職金をもらえないところもあるけど、大手ならほぼもらえるぞ。それに、退職金がいくらもらえるかは”退職金規定”に書いてることがほとんどだ。存在すら知らないっていう大人が多いけど、FIREのためには真っ先に目を通してもいいくらいの書類だね」
社会人になって最初に読むべき書類は退職金制度だと言う人間がいるくらい、退職金の規定はチェックすべき項目だ。自分に入ってくるお金が“いつ・どれだけ”貰えるのかを把握することは、自分のFIREタイミングをコントロールする上で極めて重要なのである。
「他にも短期間でのFIREにはハードルがあるんだけど……授業も良い時間だし、ここで一旦5分間の休憩にしよう。先生はトイレ!」
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