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魔法学校の魔法は飾り 4
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「じゃあエンさん」
「はいっ!!」
ザザに指名され、元気いっぱいという言葉が似合う程ぴょーんと飛び上がって起立した彼女。何が彼女をそこまで金に執着させるのかは分からないが、やる気があるのは良いことだ。
「俺がお金の授業をする理由を教えてくれ」
「はい!先んじてジンミンゲン君が話した”老後2000万バルク問題”の他に2つの理由があります!1つ目は、十分な金銭や資産を取得することで、新たな自由の形である“働かない自由”を得るためです!」
「正解!!!!」
ザザが大声で肯定して言葉を繋ぐ。
「その通り!我々大日本帝国人には様々な自由が保障されていることは皆さんもご存知でしょう!有名なのは精神的自由、すなわち人間の精神活動の自由です。具体的な例を挙げると、何を考えても良い思想の自由、何を信じても良い信教の自由、何を学んでも良い学問の自由などですね。精神的自由の他には、経済的自由と呼ばれるものもあります。大日本帝国憲法では、職業選択の自由や財産権の保障によって、経済活動の自由が保障されています。――ですが!!!!!」
びくぅ!!と生徒たちの背中が跳ねる。びりびりと窓ガラスが揺れる。
「この経済的自由ってやつが実に曲者で、俺たち大日本帝国人に“働く自由”を提供してくれるくせに、“働かない自由”は提供してくれないんだ!!!どういうことか分かるかい!?俺たちはご飯を食べなきゃ死ぬし、水を飲まなきゃ死ぬ!家や服がなきゃ社会的に死ぬし、本やゲームみたいな娯楽がなきゃ精神が死ぬ!だから、俺たちは働いてお金を稼いでいかないといけないんだ!!経済的自由なんて言いつつも、働かないって選択肢は存在してないのさ!!!なんて不自由なんだ!!!!!」
「「「!?」」」
生徒たちの間に雷に打たれたかのような衝撃が走った。そう、我々には働かないという選択肢が存在しない。働かないということは、死ぬということだからだ。
確かにその通りだとドルも思った。自分の父親は厳格な人間であったが、働いて働いて夜も遅くまで働いて、こんな自分を大学――ましてや魔法学校にまで入れてくれた。その魔法学校に入学させるという行為にも、多額のお金が発生したに違いない。子供1人を一人前になるまで生み育てることには、およそ3000万バルク程度かかると聞いたことがある。きっと自分たちは最低限の生活をし、子供のために寝食を削って過ごしたのだろう。それだけではない。日々の生活で子供の衣食住を保障しながら自身の衣類の新調をし、家電を定期的に買い換え、そしてまたその金を稼ぎに社会に出ることを繰り返すのだ。
そしてようやく子が巣立っても、今度は自分が働けなくなる時のために働いて賃金を稼ぐ。
働く。働く。働く。それはまるで労働という名の無間地獄――。
「このままだと、お前たちは一生“労働の奴隷”さ!老いて体が朽ちても働いて、生きるためではなく“死なないために”働くんだ!お前たちに経済的自由なんかこれっぽっちも与えられちゃいない!!だから、今ここでお前たちはお金の勉強をするんだ!!」
「「「!!!!」」」
暗く濁った生徒の目に光が戻る。
「俺がお前たちにお金を稼ぐ方法を教える。俺はそこそこ金を稼いだ身であるし、この方法でまあまあの富を築いた人間を何人も見てきた。再現性はある。お前たちにも出来る」
『俺たちにも……』
『僕がお金持ちに……』
「そうさ!お前たちは、俺の授業を受けて真の経済的自由を手にするんだ!魔法学校はそのための単なる方法に過ぎん!使えるものはなんでも使って、豊かな生活を目指すぞ!!!俺についてこい野郎ども!!!!」
「「「おおおおおおおおお!!!!!」」」
咆哮。それは貧困に喘いできた大日本帝国の下層階級の叫び。一部の上級国民に搾取され続けてきたカースト下位の反逆の狼煙。今、クラスの人間が一致団結した瞬間であった。
「さあ、気持ちが上がってきたところでエンさん!!俺がお金の授業をするもう1つの理由もコイツらに教えてやってくれ!!!!」
「はい!!お任せ下さい先生!!!」
『うおおおおおエンちゃん!!!』
『一体どんな理由なんだあああああい!!!』
「先生がお金の授業をするもう1つの理由、それは――」
「――今より経済的に豊かになることで、お金を満足に持たない連中を見下して悦に浸るためです!!!!!」
「正解!!!!!!」
「やったああああああああ!!!!!」
エンとザザは手を繋いでスキップを始めたが、他の生徒は黙って着席した。
「はいっ!!」
ザザに指名され、元気いっぱいという言葉が似合う程ぴょーんと飛び上がって起立した彼女。何が彼女をそこまで金に執着させるのかは分からないが、やる気があるのは良いことだ。
「俺がお金の授業をする理由を教えてくれ」
「はい!先んじてジンミンゲン君が話した”老後2000万バルク問題”の他に2つの理由があります!1つ目は、十分な金銭や資産を取得することで、新たな自由の形である“働かない自由”を得るためです!」
「正解!!!!」
ザザが大声で肯定して言葉を繋ぐ。
「その通り!我々大日本帝国人には様々な自由が保障されていることは皆さんもご存知でしょう!有名なのは精神的自由、すなわち人間の精神活動の自由です。具体的な例を挙げると、何を考えても良い思想の自由、何を信じても良い信教の自由、何を学んでも良い学問の自由などですね。精神的自由の他には、経済的自由と呼ばれるものもあります。大日本帝国憲法では、職業選択の自由や財産権の保障によって、経済活動の自由が保障されています。――ですが!!!!!」
びくぅ!!と生徒たちの背中が跳ねる。びりびりと窓ガラスが揺れる。
「この経済的自由ってやつが実に曲者で、俺たち大日本帝国人に“働く自由”を提供してくれるくせに、“働かない自由”は提供してくれないんだ!!!どういうことか分かるかい!?俺たちはご飯を食べなきゃ死ぬし、水を飲まなきゃ死ぬ!家や服がなきゃ社会的に死ぬし、本やゲームみたいな娯楽がなきゃ精神が死ぬ!だから、俺たちは働いてお金を稼いでいかないといけないんだ!!経済的自由なんて言いつつも、働かないって選択肢は存在してないのさ!!!なんて不自由なんだ!!!!!」
「「「!?」」」
生徒たちの間に雷に打たれたかのような衝撃が走った。そう、我々には働かないという選択肢が存在しない。働かないということは、死ぬということだからだ。
確かにその通りだとドルも思った。自分の父親は厳格な人間であったが、働いて働いて夜も遅くまで働いて、こんな自分を大学――ましてや魔法学校にまで入れてくれた。その魔法学校に入学させるという行為にも、多額のお金が発生したに違いない。子供1人を一人前になるまで生み育てることには、およそ3000万バルク程度かかると聞いたことがある。きっと自分たちは最低限の生活をし、子供のために寝食を削って過ごしたのだろう。それだけではない。日々の生活で子供の衣食住を保障しながら自身の衣類の新調をし、家電を定期的に買い換え、そしてまたその金を稼ぎに社会に出ることを繰り返すのだ。
そしてようやく子が巣立っても、今度は自分が働けなくなる時のために働いて賃金を稼ぐ。
働く。働く。働く。それはまるで労働という名の無間地獄――。
「このままだと、お前たちは一生“労働の奴隷”さ!老いて体が朽ちても働いて、生きるためではなく“死なないために”働くんだ!お前たちに経済的自由なんかこれっぽっちも与えられちゃいない!!だから、今ここでお前たちはお金の勉強をするんだ!!」
「「「!!!!」」」
暗く濁った生徒の目に光が戻る。
「俺がお前たちにお金を稼ぐ方法を教える。俺はそこそこ金を稼いだ身であるし、この方法でまあまあの富を築いた人間を何人も見てきた。再現性はある。お前たちにも出来る」
『俺たちにも……』
『僕がお金持ちに……』
「そうさ!お前たちは、俺の授業を受けて真の経済的自由を手にするんだ!魔法学校はそのための単なる方法に過ぎん!使えるものはなんでも使って、豊かな生活を目指すぞ!!!俺についてこい野郎ども!!!!」
「「「おおおおおおおおお!!!!!」」」
咆哮。それは貧困に喘いできた大日本帝国の下層階級の叫び。一部の上級国民に搾取され続けてきたカースト下位の反逆の狼煙。今、クラスの人間が一致団結した瞬間であった。
「さあ、気持ちが上がってきたところでエンさん!!俺がお金の授業をするもう1つの理由もコイツらに教えてやってくれ!!!!」
「はい!!お任せ下さい先生!!!」
『うおおおおおエンちゃん!!!』
『一体どんな理由なんだあああああい!!!』
「先生がお金の授業をするもう1つの理由、それは――」
「――今より経済的に豊かになることで、お金を満足に持たない連中を見下して悦に浸るためです!!!!!」
「正解!!!!!!」
「やったああああああああ!!!!!」
エンとザザは手を繋いでスキップを始めたが、他の生徒は黙って着席した。
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